表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/99

6話 男の子?男の娘?


最近、違和感を感じる。それは隣にいる奴のことに関して。レーイルダ魔術学院の授業にて、アルベールは一つの疑問を抱いていた。


(そういや、隣の席のやつクロード・アヴェリーノ………。俺の相部屋のディラン・アヴェリーノの双子の“弟”と言っていたが、確かアヴェリーノ侯爵家の子供達は、確かに双子だ…。だけど、確か双子の下の方は“妹”なのに、クロードは“弟”と自身のことをそう言った。もうおかしい。どーゆう事だ?)


アヴェリーノ侯爵家の子供達には双子がいる。アルベールが引っかかっているのは、そこじゃなかった。アヴェリーノ侯爵家の長男はディラン・アヴェリーノ。そして、“長女”もといディランの双子の“妹”が居たはずなのだが、アルベールの隣の席、クロードも同じアヴェリーノ侯爵家の子供。そして、彼自身は自分のことを双子の弟、と偽った事。それがどうも疑問に感じたのであった。


(………………確かめてみる価値はありそうだな)


アルベールは顎に手を当て、考え込み、クロードの方をマジマジと見つめた。


(やっぱ、まつ毛長いし。いやでも、ただ単にそう言う男子、って可能性もある)


授業中にも関わらず、関係ないことを考えていた。仮に、男子でまつ毛が長いんだとしたら、それで終わり。俺の考えている事が当たれば、何かある。そう考えた。


(本人に聞いてみるか)


授業終わり後、アルベールはクロードに真っ先に話しかけ、疑問に思っていることを聞いた。


「ねぇ、アヴェリーノくん」

「ん?どうしたの?デイヴィスくん」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど………、良い?」

「え……?うん」


クロードを呼び出すことに成功し、校舎内にある食堂に呼びつけた。


「で、話ってどうしたの?」


クロードの持ってきたメニューは、お肉のステーキとかだった。


「意外と食べるんだね」

「あはは、まぁね」

(むむむ、気になる)


真剣な表情で、アルベールはクロードを見つめる。


「ん?どうかしたの?」

「いや、さ。ちょっと気になって………」


アルベールはそう言い、目を逸らす。クロードはアルベールのとった行動がわからず、首を傾げた。


(………………聞いてみるか?いや、でもそれで恥ずかしい思いとかしたら………)


アルベールは聞くべきものなのか、それとも聞いちゃいけないものなのか、分からずにいた。しどろもどろになるも、結局は。


(まぁ、言いたくなったら、直接本人から言うでしょ)


そう思い、自分の中では保留にした。そしてアルベールとクロードは食事を残さず食べ終わり、教室に戻ろうとすると、クロードから話しかけられる。


「あ、もしかしてさ。デイヴィスくん。ディランの双子の“弟”って信じられない?」

「…………!?」


内心ドキッとした。なぜ分かったのか?と。


(え…?なんで分かったの?)

「あ、やっぱり。あー、まぁ、言っちゃって良いのかな。うーん、でもここで言うのは……。あ、そうだ!ちょっときて!」


クロードに腕を引っ張られ、人気のない場所へと連れて行かれる。抵抗する暇もなく、校舎内にある空き教室に連れて行かれ、鍵を閉められる。


「え……?なんのつもり………?」


突然の出来事により、混乱と多少の恐怖を感じた。


「ねぇ、デイヴィスくん。君になら言って良いのか…。うん。そうだよ。君が思ってた通り。僕は———………………“女の子”だよ」

(やっぱり!)


クロード・アヴェリーノはディラン・アヴェリーノの双子の“弟”ではなく、双子の“妹”であった。アルベールは特に驚く気配もなく、冷静に話を進めた。


「やっぱり気付いてた?」

「いや、アヴェリーノ侯爵家の子供達で、双子がいるのは分かってた。だけど、双子の“弟”だなんて、聞いた事なかったからさ」

「そうなの?でもすごいな。君の情報網は」

「そう?」


今クロードを異性としてみると、本当に整った顔立ちをしているのがわかる。アルベールはクロードが実は男ではなく、女であることは確実とまでは行かずとも、そうなのではないか。と言う予想はつけられた。


「今、僕の秘密を知ってるのは君だけなんだ」

「………………でも、なんでそれを俺に教えたの?」


一つの疑問はある。なぜ彼———いや、彼女がアルベールにそんな大事なことを教えたのか。彼女とはあまり親しくなかった為、それが不思議でたまらなかった。


「それはね、君なら………、アルベールになら教えられると思ったから」

「え……?それってどう言う………?」


そう思ったことを教えてくれた。アヴェリーノ侯爵家は生まれてくる子が女の子だと差別をしていたらしい。


「僕の家はね、女の子が産まれちゃいけないんだ。だから、いつも父様から平手打ちや暴力は日常茶飯事だった。それを庇ってくれたのは、いつもディランだけ。だけど、ある日。こんな事を言われたんだ」


淡々と話し続けるクロードの過去話を、黙々と聞いていた。




『お前は我が侯爵家の恥だ。それが嫌だと言うのなら、女として生きるのを諦める事だな』


そう幼少期に言われ、子供ながらに悟った。“女の子として生きちゃいけない”のかと。


「僕は、女の子で生きる事を諦めた」


そう実の父親から言われたことが何よりのショックで、まるで自分が生まれてきたことを、拒絶されたみたいだった。と、クロードは感じたらしい。


「だから、その日から一人称を僕に変え、男装するようになった」


髪をバッサリと切り、10歳になった時には晒を巻き、女である事を隠し続けた。そして、剣技の腕を磨き、12歳で騎士団所属。そこでたまたま流れていた噂を聞いてしまったらしい。


「そんな時にね、同期からこう言われたんだ」


『あいつ女のくせになんで男装してんだ?』


「………って。そう言われた時、僕が一番知りたいって思った。僕は———、ううん。私は!私は、女の子で生まれてきた………。なのに、騎士団の人たちもディラン以外の家族も全員、私を女だと認めてくれない………。ただ、諦めるしかなかった。女で生きる事。やれる事を。だから、入学した時だって、性別を偽って、女であることを隠し続けた。それで良いって思った。だって、誰も私が女子だって知らないから。だけど、今日初めてアルベールに見破られた。だめだよね………。君とはただのクラスメイトなのに………」


あんなに綺麗な顔が、ぐちゃぐちゃになる程、涙を流していた。全身の気力がなくなったのかと思うほどだった。膝を床につけ、クロードは胸に隠していた思いを打ち明ける。


「………………。ねぇ、クロードは……さ」


その様子を見て、クロードの肩に手を置いた。


「………?」

「クロードはさ。俺とはただのクラスメイトなの?」

「え?」


目を見開くも、続けた。アルベール自身もう既に友達と思っていたから。


「俺はもう、クロードとは友達と思ってたんだけど」

「え、君は私のこと………拒絶したりしないの?」

「しないよ。だってクロードは俺の友達だもん。友達であるのに、意味なんてないだろ?それに、女である事を諦めるほど、無理しなくて良いんじゃないかな。だって、男装はクロードが自ら進んでやったんじゃないんでしょ?」

「うん………。私だって、女の子の洋服とか、着てみたいし、スカートとか履いてみたい」

「尚更、無理しなくて良いんじゃない?」


アルベールはクロードと同じ目線に向き合った。


「良いの?私は私で………」

「当たり前じゃん。それを決めるのは、その本人次第。他人に左右される事なんてないよ。だって、自分の人生って、自分で切り開くものでしょ?まぁ、多少寄り道したって良い。それが最終的に、自分が幸せって感じる未来になってるのなら。だってそうじゃん?人生一度っきりなんだからさ!」

(まぁ、俺が“人生一度っきりなんだからさ!”って言っても全然響かない)


彼自身は二度も人生を歩んでいるものの、きっとクロードは違う。だから、今の人生を楽しんでほしい。そうアルベールは伝えたかった。


「———る」

「ん?」


クロードは俯き、なんて言ってるか聞き取れなかった為、アルベールはもう一度聞き返す。


「なんて?」

「私、男装やめる!そして、もう僕なんて使わない!ねぇ、アルベール。私と、友達になってくれない?改めて」


クロードは手を差し伸べた。それをみたアルベールは微笑み頷き、その手を掴む。


「もちろん!」


その日を改め、二人は正式に友達となり、クロードは男装をやめ、制服も女生徒が着る制服となった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どうもはじめまして。 まだ途中ですが、作品拝見させていただきました。 とても面白かったです。 時間ができましたら、また拝見しにお邪魔させていただきます。 (≧▽≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ