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63話 追慕の人物

エヴィの婚約者———ディアーク・ラングトンは人質として、自分の婚約者であるエヴィを捉える。

助けるため、魔法で離そうと思うも、エヴィに当たってしまう可能性も大だ。


(このままだったら、エヴィにも当たる……。

もう、お前はこの世に居ないんだろ。ライリー……)


エヴィのいとこで、俺の友達。ライリー・ブロッド。彼は、エヴィを守るため、自分を犠牲とした正義者だ。大切な人を守るために———自分を殺した。

早くしないと、エイダン達までもやられる。アイツらがそう簡単に死ぬとは思えない。だけど、数に押されればあいつらとて、苦戦するはず。


「どうする?余所者の君は」


「はっ、俺はあんたを許さないから。これからも、この先も」


「あっそうか。ふっ、お前に許されようとも思ってねぇよ!」


「だから俺は、あんたを牢獄にぶち入れる!!」


「やれるもんならやってみろや!!」


あいつの隙をついた瞬間に、風魔法の詠唱を唱える。


「『我、彼の者を吹き飛ばせ。それは、我の聖域を汚し、数多の生命いのちを汚す者。その者に鉄槌を。風神罰ウインド・ゴッド・パニッシュメント』!!」


怒りの思いが炸裂し、それが俺の魔力に乗って放たれる風魔法。それはほんの一瞬を突き、隙を見せたあいつは致命傷だろう。なぜなら、


「ぐはっ!!」


吹き飛ばされ、国の壁に頭をぶつけてしまう。気を失ったこいつは、伸びたまま気絶している。


(これで良いんだよな。ライリー………)


「エヴィ、君はリアムさんの方に行って。こいつの近くじゃ危険だ。また何かするかわからない」


「うん………ッ」


やや涙声で答える彼女の顔は、平気なものじゃない。そりゃあそうだ。一番の親友であり、いとこで、兄弟のような関係だったライリーを失ったんだ。


(………………残された人の気持ちって、こんな感じなのかな)


俺はエヴィを連れて、リアムさんのところへ行く。説明をすると、唇を噛み締め、了承を得てくれた。

正直、守りながら戦うのは、正直言って大変だ。だけど、リアムさんなら…。リアムさんなら、やれると俺はそう感じた。


「悪い、遅くなった」


「いや、構わないさ。あの時、お前が言ってなかったら、今頃二人はどうなっていたか」


「あぁ、でも、本当に悪かった。ここからは敵の戦力を削る」


力になれなかったが、ここからは戦える。黒妖犬ヘルハウンドは死んだ。ディアーク・ラングトンも伸びている。だから、邪魔するものはいない。

武器を持つ魔獣達。知性があるように見える行動。見るからに厄介そうだが、なるべく体力を削られないように、戦う。それが、俺が学院長から託された宿命さだめであると、信じているから。


刀、銃を召喚し、刀で周りにいる雑魚を倒す。でかいものも、小さいものも。

強固な体で覆われている魔獣に関しては、刀じゃ歯が立たない。だから、ある程度雑魚な奴を倒し、強者の魔獣は、魔法で削る。


「はぁ!ふっ!!」


「次はこっちだよ!!」


刀で切り刻まれる魔獣は、追いついてこれず、そのまま倒れていく。ある程度の雑魚を倒し、あとは強固な体を持つ魔獣達だけが残った。


「ハァ…ハァ…ハァ…ッ、あと………もう少し…!!」


「あぁ……、あと少しで倒せる……」


月が雲に隠れ、夜は更けていく。


「ハァ…ハァ…。『我の聖剣、轟を見せつけ、邪なものを浄化したまえ。我の怒り、悲しみ、それら全ての負の感情を、汝に捧げる!!神の聖剣ゴッズ・ホリー・ソード』!!」


全魔力を注ぎ入れ、空に魔法陣を浮かばせる。その神々しく光るその魔法陣は、俺の体内にある魔力を注ぎ入れた、最大限の攻撃。

もう体力も魔力も全然残ってない、俺たちにとっては、それは希望の光でもある。このままちまちま魔法を放ってたら、魔力切れで倒れてしまうのは、目に見えていた。


———そして俺は。


俺は、ライリーに安らかに眠ってて欲しかったから。だから、こうしたんだと思う。俺の自己満。


俺の“正義”だ。


正義は見方によって、意味合いが違ってくる時がある。それは善ともなり、悪ともなりうる。

だから、これは俺にとっての自己満だ。そうでありたいと願う。


こうして、長い夜は幕を閉じた。被害は拡大。犠牲者は多かった。死者も多く、その者たちの葬儀が行われ、俺たちは、ライリーの葬儀に出た。


ブロッド家の敷地内に、ライリーの遺体を埋め、墓を建てる。エヴィは声が掠れるまで、泣き叫ぶ。それに縋るように、だけどブロット男爵に止められた。


(これで………よかったのか。ライリー)


居るはずもないライリーに、俺は心中そう思う。そして、一つの淡い思いが現れてきた。それは———。


(———もっと、仲良くなりたかったな)


だけど、そんな願いは叶うはずもない。死者を蘇生させる魔法なんて、実在しない。

実在すれば、偉人達が生き返れるなんて、出来るんだ。生き返らせたい人は、この世にたくさん居るだろう。

家族、恋人、友人、大切な人。


だけど、限りある命だからこそ、人はきっと必死なんだ。


(………俺が思うのもなんだけどさ……)


俺は、エヴィの肩に手を置いた。


「エヴィ、ライリーの想い、無駄にしないでね。俺が言うのもなんだけどさ」


ただ、そう言うしかなかった。そこまで仲が良いわけではなかった。だけど、これからも仲良くなれそうな予感がしたのに。


「………分かってる。ライリーの想いを受け止めて、私生きるよ。ライリーの………分まで」


そう寂しく微笑む。ライリーの墓を見ながら、エヴィは花を添えた。


その花は紫色の花。何やら、ライリーが好きだった花らしい。その花は“紫苑”。



花言葉は———“あなたを忘れない”だ。


俺も忘れないよ。これから先も。ずっと。

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