60話 謎の人物
王宮から約一週間が経った。それまでに魔獣騒動は無かったが、油断は出来ない。炎の晶石を首につけ、肌身離さず持ち、いつ来ても良いように、準備しておく。
(まだ魔獣騒動は無し。いつ来るか分からないほど、怖いものはないな)
そうリルメス国の中心部。王都を歩きながら、そう呟いた。
(………もしかしたら、今夜…。行われるかもしれないな)
なぜか、そう悟ってしまった。いや、勘だ。今日の夜。その日に行われると直感で感じたからだ。
そんな時、王都でたまたまあの二人が居た。
(………あ、あの二人。確か、ブロッド、ヴィンケル……だっけ?)
一週間前に出会った、オルテーリオ魔法学園の生徒ライリー・ブロッドとエヴィ・ヴィンケルの二人だ。後々調べた後、男爵家の息子と娘らしい。
二人は親戚同士で、ブロッド男爵とヴィンケル男爵夫人は血の繋がりのある兄妹。そのため、いとこ同士だ。
「あれ?デイヴィスじゃん」
「あ、何やってるの?二人とも」
「遊びで王都にな。そうだ。デイヴィスも一緒にどうだ?」
「え?良いの?」
そう聞き、ブロッドは快く了承するも、ヴィンケルはあまり俺を快く思ってないみたいだった。
「ごめんな。だけど、悪いやつじゃないんだよ」
と、俺に耳打ちしてきた。俺は何かヒントが掴めるかと思い、俺は二人と行動することに決めた。
もちろん、資料に関してだった。学園長室にあるはずだったその資料が何者かに盗まれてしまったこと。
教師か、生徒か。そんなの分からないが、あの時学園長室にやってきた二人と一緒に行動すれば、何か分かると俺は悟る。
王都で色んな場所へと行き、その間にマーティナ・ヘルグビュイの事に関して、聞いてみる事にした。
「え?マーティナ様のこと?」
「あの、1万年前に存在した人……だったよね」
「その人………だよな?デイヴィス」
「あぁ、何か知らないか?」
そう真剣な声色で言い、二人は足を止める。
「………すまないが、俺たちは知らないんだ。力になれなくてすまないな。デイヴィス」
「いや、大丈夫」
だれも情報を知らないのは、不自然に思える。一週間前に、色々と人に聞いたり、本で調べたりしたが、載ってなかった。マーティナ・ヘルグビュイが成し遂げだ実績の数々を。
帝国の本には書いていた。英雄としての実績を。だが、不自然な事がある。『古代英雄本』では、マーティナ・ヘルグビュイはレーイルダ学院を作った人物………と記されているが、ヒューゴさんは“リルメス王国”と“オルテーリオ魔法学園”の創生者だって言っていた。そこが履き違っている。
(どういう事だ………?)
そんな時、魔力の波動を感じた。嫌な魔力の波動を感じた。
流れを肌身で感じるように、ヒリヒリした感じが伝わってくる。
それには、二人も気づいたようであった。
「なんだ…?これ……」
「………嫌な感じ」
(なんだよ………これ)
まるで脳に語ってくるような、心臓の鼓動が高鳴っていく。それと同様に魔力の鼓動がある。俺はその流れがある場所まで行くと、路地裏に辿り着く。
(ここから………か。一体、だれが)
「おい!デイヴィス!」
「………ブロッド、ヴィンケル」
「ここから………だよな?」
「あぁ、だけど。誰かは分からない」
周りを見渡しても人の影はない。敵影もなし。魔力の波動を感じるのみだけだ。
「あるのは、魔力の波動のみ。だけど、人の影は感じない」
ヴィンケルも俺と同じことを考えているのは、明白だ。そんな時だった。ヴィンケルの頭上から何かでかいものが降ってくる。
「………!!危ない!!」
「え?」
俺は咄嗟にヴィンケルを、でかい何かから守った。
「………ッ、なんであれが」
「おい!大丈夫か!?二人とも!」
「あぁ、なんとかな」
立ち、その石を見た。でかい何かの正体は石だった。なぜ空から石が降ってくるのか、理解はできなかったが、怪我人はいなかったのは、幸いだ。
「ありがとう」
そう手を差し伸べるが、拒否された。
だが、誰かがヴィンケルを殺そう……もしくは、波動に気づいた誰かを殺すためにしたものか。
(とにかく、誰かが俺たちを殺そうとしているのは、確かだな)
そう感じとり、空を見上げる。そんな時、後ろから人の気配を感じた。ここにいるあの二人とは、違う気配を———。




