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59話 オルテーリオ魔法学園

オルテーリオ魔法学園についた。時計塔がついており、時間になると鐘が鳴る仕掛けに見えた。広場には噴水があり、その周りに草や花が咲いていた。

馬車から降り、学園を眺める。おそらく、まだ授業時間だろうから、生徒の姿は見えない。


「ここがオルテーリオ魔法学園だ。デイヴィス」


「ここが………」


俺は惹きつけられるように、学園の門に入ろうとしたところ、警報音が鳴った。


「………………!?なんだ」


「おそらく、不法侵入者扱いにされたんだろう。だけど、安心しな?俺がついている。少し待っていろ」


ヒューゴさんは門の中に入り、警報音を聞いて駆けつけた警備員の人と、話し合い、何とか入ることを許してもらえた。

安堵した俺は、マーティナ・ヘルグビュイの何かがあるはずだ。像か絵か。そのどっちかが残ってるはずだ。

そう考えついた俺は、特別にヒューゴさんと共に中に入ることを許された。

そのため、オルテーリオ魔法学園の廊下を歩き彷徨う。


(何処かにあるはずだ。マーティナの情報が……!)


リルメス王国を作り、オルテーリオ魔法学園の創生者。マーティナ・ヘルグビュイが。

その為、ヒューゴさんと一緒に真っ先に学園長室に向かう事にした。


扉をノックし、中から学園長であろう男の声が聞こえた。先にヒューゴさんが中に入り、俺は後から続く。珍しい客のため、学園長は驚きの表情を見せたが、パイプタバコを吸い始める。


「ふぅ〜……。何のようでしょうか?ヒューゴ様」


「この少年が、マーティナ・ヘルグビュイ様のことを調べたいそうだ。何か資料はあるか?」


ヒューゴさんが学園長にそう申し上げ、俺の方を見た。

余所者である俺にそう易々と資料を渡すとは思えないが、ここにはリルメス王国の第一王子、ヒューゴ・リルメスさんがいる。

何とか、資料を確認できそうだと思ったが、


「すみません。実は、それが何者かに盗まれてしまい………」


(………………!?盗まれた!?マーティナ・ヘルグビュイの資料を?一体、誰が……)


「そうか。誰が盗んだかは、確認できなかったのか?」


「はい。申し訳ありません」


そう深く頭を下げた学園長を見て、どうしようかと考えたが、魔力探知で探さないか?という思考に至る。


「あの!魔力探知で、誰が盗んだか分かりませんか?」


「そうか!どうだ?何か痕跡でもあったか?」


「微かに魔力濃度はありましたが、正確に誰が……というのは分かりません」


そう学園長に言われ、どうすることも出来なかった。


(………くそ、マーティナ・ヘルグビュイの情報があれば、何か分かりそうな気がしたのに………!)


頭を押さえ、もう打つ手がないのか……と考えるだけだった。

そんな時、学園長室の扉が叩かれる。それに気づいた俺たちは、誰か人が来たのかと考え、学園長は時計を見た。俺たちも時計を見ると、ヒューゴさんが俺に耳打ちしてきた。


「授業の終わりだ。だけど、おかしいな。鐘が鳴らないなんて」


この学園では授業が終わりと共に、外にある時計塔の鐘が鳴る仕掛けのようだが、今日は鳴らなかったそうだ。


「どうぞ」


学園長がそう言い、中から入ってきたのは、女生徒と男子生徒であった。


「失礼します、学園長」


「ちょ、おい!」


「何?」


「ヒューゴ様がいらっしゃるぞ」


「………!?し、失礼しました。お話しされていたのですね」


黒髪の少女と、茶髪の少年は、自分たちの国の王子がいることに戸惑いを隠せず、後にしようかと考え、学園長室から出ようとしたところ、ヒューゴさんがそれを止める。


「いや、こちらこそすまない。デイヴィス。そろそろ戻ろう」


「はい」


目を見開いた二人は、そのまま俺たちの方を見ていた。それが気になった俺は、ヒューゴさんに“もう少し探してみる”と言い、学園に残り、ヒューゴさんは先に馬車で王宮の方に帰って行った。

俺は、もう一度学園長室がある場所まで行き、さっきの二人に話しかける。


「ねぇ、君たち」


「ん?だれ?」


「ヒューゴ様と一緒にいた……」


「あぁ、ちょっと聞きたいことがあってな?」


俺の発言に疑問を浮かべながら、二人は互いの顔を見た。学園の中を歩き回りながら、話し込む。


「え、じゃあ帝国の方から来たの?」


「あぁ、それでこっちの国に来たんだ。アストラさ……じゃなくて、王女様が連れ去られてな」


「あぁ、国中パニックになってたな。だからか。ヒューゴ様と親しそうにしてたのは」


歩きながら喋り、まだお互いの名前を知らなかったことに気づき、俺から先に自己紹介をした。


「自己紹介まだだったな。俺はアルベール・デイヴィス。よろしく」


「あぁ、よろしく。デイヴィス。俺は、ライリー・ブロッド。で、こっちが」


「エヴィ・ヴィンケル。よろしく」


ブロッドの方は親しみやすそうだったが、ヴィンケルは少し壁がある感じがした。が、“クール”という言葉が似合いそうなほど、ミステリアスな感じがする。


「悪く思わないでくれ。エヴィに関しては少し人見知りなんだ」


「あ、なるほど。ん?二人ってすごい親しそうだったけど………」


「あぁ、俺たちは幼馴染なんだ。ブロッド家とヴィンケル家は親戚同士で、小さい頃から一緒に遊んでたんだ」


それほど距離が近いのは確かだった。親戚同士で、幼い頃からの友達。だけど、ブロッドに関しては、別の感情が混じっているように、俺は見えた。


(あー、もしかして)


一つの言葉が頭に思い浮かんだ。俺にはそういう経験はないが、見ているだけで、多少は羨ましく思う。

“春が来てるんだなぁ〜”

と。でも、微笑ましく思えた。だから俺はブロッドの肩を叩き、


「頑張れな」


その言葉の意味がわからず、目が点になるが、後々理解し、俺に問い詰めてきた。


「いつから!?」


「顔見たら何となくかなぁって」


「くぅっ!初対面のはずなのに……。もしかしてエスパーか!?」


「そんな訳ないよ。だけど、羨ましいねぇ」


「ぐっ、だけど。諦めてはいるんだよ」


「え?」


ブロッドの悲しげな表情と、その声色でさっきまでの感情が全て流された。だが、これ以上は捜索なんてしない。そうした方が、良かったと感じたからだ。




その日、マーティナ・ヘルグビュイの情報は掴めなかった。諦めた俺は、そのまま学園を出て、王宮に戻る。夕日が顔を出し、結構時間を食っていた。

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