56話 疑いの目
リルメス王国の門前が見えた。馬車を門前まで運んで行き、停止させる。アストリさんが降りると、リルメス王国の王子たちが一斉に駆け寄る。
アストリさんが「お兄さま方」と呼んでいたため、それで分かった。
俺たちも一件落着……と思っていたのだが、騎士団たちが俺たち(イネスさん、リナさんを除いて)のメンバーを囲んだ。もちろん、俺たちは“何事だ?”と心中一致する。
「貴様ら、何者だ?」
象牙色の髪の毛に、緑色の瞳で短髪の好青年がそう告げる。低い声を発し、俺たちに警戒の眼差しで睨みつけている。もちろん、その人だけじゃない。他の人たちもそうだった。
(あれ、もしかして———ピンチ?)
騎士たちから剣を向けられ、まずい状況となる。アストリさんは、声を上げようにも王子の中の一人に連れて行かれ、俺たちは助けを求めようにも、虚しく散った。
「あの、その人たち違うんです………!」
「そうです!」
「二人はどうぞこちらに」
話を聞かず、そのまま二人は連れて行かれていく。唯一の助けも連れて行かれ、俺たち全員なぜか絶望に満ちる。
(もしかしてさ……。勘違いでピンチに陥った……?)
俺たちはアストリさんを誘拐した犯人にされている。もちろん、そんな事はしていない。だが、リルメス王国の人たちからしたら、冷静ではいられないだろう。
そして、俺たちはそのまま騎士団に連れて行かれた。
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「本当のことを話せ。貴様らは何の目的で我が国の王女を拐った?」
「拐ってないです」
「本当のことを話せと言ったはずだ」
王宮内に連れてこまれ、そのまま尋問の時間となった。俺たち全員、正座をさせられ、ロープで体を巻きつけられ、逃げられないようにされている。
「本当にやってません」
エイダンたちも真剣な眼差しで、疑いを晴らそうと必死に言っていた。
「なぁ、本当にこいつらじゃないかもだぞ?」
その中の一人で、髪をひと束に結んでいる男性がそう告げた。それを聞いていた隣の黒髪の男はうーん、と唸っていた。
「かもじゃなくて、絶対に違います!」
そう声を張り上げ、無実だと言い張った。王子たちの顔色は徐々に疑いの目は無くなり、その中で大人な雰囲気を漂わせる、王子が俺たちに問いかける。
「本当にやっていないんだな?」
「はい」
俺は言い張る。真剣な物言いで答え、真剣な眼差しで見つめる。それを見たその人は間を置き、口角を上げた。
「分かった。信じよう。君たちが本当にやっていないということ」
納得いかない答えだったが、結果的には信じてもらえたため、あまり気にしなかった。
無事、俺たちの疑いは晴れた。応接間で待っていた王女たちは心配な目で見るも、すぐさま微笑んだ。アストリさんからは仕打ちのことを謝られたが、正直どうでも良かった。
命だけは助かった———と思えば。




