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49話 悪夢



———ねぇ、アーベル。もしさ、君の友人が死んだら———どうする?


———だれだ。この声———。


———知ってるでしょ?わたしはマーティナ。あなたの友人。


“マーティナ”もちろん、その名前には聞き覚えがある。そして、よく聞くとこの声も、聞き覚えがあった。



———マーティナ?マーティナなの?


俺がマーティナの影に手を伸ばそうとしたところ、空気が一変。重苦しい空気が募り、息がしにくかった。

そしてあたりを見渡すと、そこに血倒れていたのは、俺の友人達であった———。


———なんだよ、これ……どう言うことだよ!!


———あなたが選んだ選択肢…。抗えない運命にあるんだよ?いつしか彼らは、戦場で死ぬ。それが嫌なら、自分で変えるしかないよね………?


“アルベール”


「ハッ!?」


起きた時間帯はまだ早朝。

いや、そんなのはどうでも良い。あの夢はなんなのか……。出てきたあの影はマーティナなのか。

汗だくだった。悪夢……と言う名が相応しいだろう。あの変な夢を見たせいで、体全体には汗が。そして、心臓の音が煩い。

そして厄介なことが、“正夢”になるんでは無いかと不安になる。夢の中は妙にリアルだ。

だが、夢な部分もある。マーティナは既に死んでいる。大昔に。そんな彼女が現実世界に現れるはずがない。



———なら、俺は一体なんなんだ?




俺だって、大昔の人間なんだ。大魔導師アーベル・ジャルディノと言う名前だった。

もし、もしマーティナが俺と同じように、死んで1万年経ったこの世界に、別の誰かとして生きているのだとしたら?それが可能なのか。現実世界に二人の“転生人”が。


———そうだとしたら、なんで会いに来ないんだよ……。マーティナに会えば、何かわかると思うのに……!!


そうムキになっても、状況は変わらない。

今はまだ早朝だ。少し外の空気を吸った方がいいだろう。そう心中で思い、馬車から降りる。


「外の空気は美味しい…。学院じゃ、朝から起きて食堂に向かって、そこから学校だったしな。外に行けることなんて………」


外に無断で行ったことは、何度もあったため、心当たりがあった。

近くにある川で顔を洗い、みんなが起きるまで、俺は少し大きな石の上に座った。


「抗えない運命………俺が選んだ選択………何のことだが意味がわからない」


夢で言っていたあれが、何なのか。アイツが本当にマーティナなのか。考えるだけで、頭はぐるぐると回る。


そんな時、後ろから声をかけられる。その声はよく知っているアイツの声だった。


「おはよう……アルベール」


「おはよう。クロード」


俺の女友達の一人、クロード・アヴェリーノ。アヴェリーノ侯爵家の長女で、去年の最初までは男装して通っていた少女だ。


「早いね………。どうしたの?こんな朝早く」


「アハハッ、早く目が覚めちゃって。そーゆうクロードは?」


「私も同じ感じかな」


「そう」


クロードも同様顔を洗い、持ってきたタオルで拭いていた。それが終わると、俺が座っている石の横に座ってくる。


「朝早く起きると気持ちいいよね」


「まぁ、分からんでもないかな?」


それから俺たちは、多少の談笑を交わる。そんな時、俺はクロードに一つの疑問を投げつけた。


「ねぇ、クロード」


「ん?なに?」


「もし…さ。マーティナ・ヘルグビュイがさ。現代に生きているんだとしたら。どう思う」


「え………?どうしたの?マーティナ・ヘルグビュイは1万年前に存在していた人物。そんな人が変わらず今も生きているはずないじゃん!」


「でもそれが………“転生”だとしたら」


「転生?でも、そんな事例今までなかったはずだし」


考え込む仕草をするクロードを前に、俺は炎の晶石を見ていた。

炎の晶石はマーティナが作った最初の魔石。アーベルに渡した魔石を、デイヴィス家にあった事。やっぱり謎が多い。マーティナは何がやりたいのか。それが意味不明だった。


「あはは、ごめんごめん。ちょっとした冗談」


俺は誤魔化すように、そう嘘をついた。いや、真実を言えるはずがなかったから。変に調べ上げられるのが怖かったから。ただそれだけの理由だ。


嘘なんて———ついてないはずだ。


「なんだ、冗談だったんだね」


クロードの横顔から見える瞳は、少し寂しそうな目をしていた。どこかを見つめるそんな瞳を。


「アルベール、もしさ。何か悩みがあるのなら、話してね。私たち親友じゃん?もちろんリータくん達でもいいからさ」


「え、うん。わかった」


そう悲しみに見つめられた俺は、そう答えるしかなかった。答えたあと、微笑み返し、クロードは馬車の方へと戻る。


「悩み………例えば、何だろうな」


俺も石の上から立ち、馬車に戻るため、方向転換した。その時には、数名が目を覚ましており、そろそろ朝食の準備が始まる。

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