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47話 青龍

また一日が始まり、予定日としては八日後に到着する。馬車の中は重苦しい空気に包まれていた。無理もない。人が死んでいるところを見てしまったのだから。


(………人はいつか死ぬ…。だけど、死んでしまう時は悲しみと祝福に包まれる。それは、自分の命が尽きるまで必死に生きていたから。だけど、あんな無残な死に方は、そんな気持ちにもなれない。不思議だ)


外を眺めながら、昨日の出来事を本のように思い出す。本当に最悪な光景で、胸糞が悪かった。だけど、もし———。


———もしも、俺が今回の旅に出ていなかったら?きっと昨日の光景が広がってるかもしれない。それは終末を迎えるような、そんな光景が。


———痛い…。ものすごく痛い…。


心臓あたりがピリピリとする。心臓あたりの部分を服の上から、ギュッと強く握りしめた。幾分かマシとなり、外の空気を吸う。

自然な匂いが広がり、みんなの空気もだいぶ良くなった気がした。


だけど、会話は一切しなかった———。






♦︎






走らせて数時間が経つ。時間が経つと言うのは、早い時もあれば遅い時もある。

その原理がどう言う物なのか。そんなの知らない。だけど、不思議に感じた。

途中にあった川に行き、顔を洗う。川は瑞々しい水色で、綺麗さを物語っていた。他のみんなも気分転換として川に来て、顔を洗う。それだけでも、心中は綺麗に流された。

さっきまで残っていた嫌な感じが、綺麗さっぱりになくなり、気分も軽くなる。気分が軽くなれば、足取りも軽くなり、良い事尽くめだ。


「冷たくて気もちぃ〜!」


(そろそろ、幻獣の方に関しても勉強しなきゃだな)


授業の時以来幻獣を召喚する。俺の使い魔。カーパンクルのフォルディ。


「久しぶり、ごめんな?あんま召喚できなくて」


俺がそう言うと、フォルディは可愛らしい声で鳴いた。


♦︎


木陰へ移動し、召喚の儀式を行う。ダガーナイフを用意し、自分の指先を少し傷つけ、滴れてくる血で魔法陣を描き、召喚の儀式に必要な詠唱を唱える。


「『我の元へ来たれし幻獣』」


赤く光る魔法陣から今度は、大きな幻獣が呼び出された。緑の色をした大きな、


「ド、ドラゴン……?」


召喚したのは俺自身であるが、腰を抜かすほど、大きな巨体が目の前に現れる。しかし、一つ違ったのは羽がなかったこと。

目の前に現れた幻獣はドラゴンに似たような、形をしていたが、羽はなかった。


———なんだろう?


その一言だけが俺の心中を埋め尽くす。肩に乗っていたフォルディもビクビクしながら、そのドラゴンを見ていた。

川で遊んでいたエイダンたちも、こちらはやって来て驚いた表情を見せる。その中でディランが言った。


「そ、それって、“青龍”じゃないか!?」


「青龍?」


その名前に聞き覚えがあった。青龍というのは東洋に伝わる四神の一人。俺たちが行っていた神州国は東洋。あの建造物は西洋である帝国には存在しない。無論、その他の食べ物もそうだった。


「な、なんで東洋の四神がここに!?」


エイダンが声を荒げ、そう言った。この場にいる全員驚きの声に満ちていた。召喚した本人である俺だって、驚きを見せた。


「お前が召喚したのか!?」


「え!?うん…。そうだけど」


「マジか!?すげぇな……。だけど、召喚獣を召喚する時には、条件が存在する…。もちろん、東洋に存在する霊獣や四神を召喚するには、三つの条件がある…」


霊獣に関しては、魔力の有無で召喚を可能としているが、召喚されるのはごく稀だ。有名な魔法使いでも召喚するのは、困難な技。霊獣は相手を選ぶ。


そして四神は魔力の有無はもちろんの事。あと二つは“方位と季節”だ。


四神は朱雀、白虎、青龍、玄武。これらが類いする。







           北・冬

           玄 武


       西・秋    東・春

       白 虎    青 龍

 

           南・夏

           朱 雀







と言うふうに方角、季節に分かれている。おそらく、ディランの言っているのは、この事だろう。今の季節は秋。そして秋の四神といえば白虎だ。だが、なぜか青龍が出てきてしまった。


「えーっと、まぁいっか」


青龍に名前をつけよう。“セイ”にしよう。青龍のセイから取った。


「よろしく、セイ」


そう言うとセイは嬉しそうに鳴いた。俺も嬉しくなり、微笑む。久々の癒しなため、とても心が跳ねた。そして戦力確保にもなる。


ユスフリカ王国につくまで、あと七日。

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