46話 手遅れ
ガラクタから食器類に変えたのは、結構大きかった。
あれから来たことある道を戻り、村が見えてきた。神州国に行く道中で見つけた村。今日も人で賑わっているだろう……。そう思ったのも一瞬で崩れ去る。
一軒一軒から煙が立ち、家は崩れ去り、畑も荒らされていた。ひどい匂いも村中に漂い続け、気分が悪くなるほどだった。
「な、なにこれ………」
「ひどい匂いだ………ッ!」
鼻を押さえないといけないほど、ひどい匂いが漂う。俺たちはなにが起こっているのか、頭が追いつかなかった。
その悍ましい光景が広がる村に、無意識のうちに足が進んで行く。
「………………!?」
見てはいけない物を見てしまった。その場から離れるようにして、急いで馬車に乗り込む。
おそらく、魔獣に襲われたのだと、予測がついた。
———忘れよう。
その言葉が頭や心中を埋め尽くす。それぐらい今日のあの出来事は、身震いが経つほど、最悪な光景だった。
俺は学院長の言葉を理解したのかもしれない。学院長が魔獣騒動を鎮めるために、エイダン達を許可したのか…。きっとこうなることを予想していたからだ。
魔獣の大群が襲いかかってくれば、一人では太刀打ちできない。
独りじゃ無力だってこと。それを見せしめられた。
「私たちが言った後になにが起こったんだろう……」
「わからない。わかりたくもない………!」
馬車を動かし、その場から離れたかった。夢にも出てきそうな、そんな光景をいち早くも、忘れるために。
村から遠く離れた場所へと降り着いた。その時にはもう既に夜で、あたりは暗かった。
火を焚き、また一日が終わろうとしていた。空には星が満天でつい見惚れるほど綺麗だった。月が顔を出し、夜風が吹く。
先程の光景を忘れるかのように、談笑するも、破壊力に負け楽しめなかった。そのため、見張りをするライアンは背中を向け、俺たちは馬車へと入り、早めに寝る。
ライアンの背中からはなんとも言えない雰囲気が、漂う。きっとこの旅に起こったことは、決して忘れることはないと思う。なんとなく、そう思ってしまった。
そして時間は流れ、夜中の3時。もうすぐで九月が終わる。俺はライアンと交代をし、見張りをする。
無論、あたりは暗い。俺が寝る前まで顔を出していた月は、雲に隠れ、灯火は———バチバチとなる焚き火の灯りだけだった。
(………手遅れになる前に、魔獣騒動を鎮めなきゃ)
俺は空に向かって心中でそう言った。言葉は埋め尽くされるほど、そればっかりであった。
もうこれ以上———あんな光景を見たくない。“死”は相当痛い。独りで逝くのが怖いほど。それが病気なら、仕方ないだろう。
だが、誰かの手によって———。
それが成し遂げられたら、それは一番の痛みだから。
俺は病死。千本の槍に刺されるほどの激痛。それを思い出すだけで、冷や汗がかいてしまう。友人達だけは死なせたくない…。
もし、このまま魔獣の大群に負けてしまえば…。待ってるのは死だけだ。
だから、そうならないように、必死に自分の命を手放さない。そう易々と…。
———死んでたまるか。




