43話 絶体絶命
俺は死を覚悟した。だが、死ぬわけには行かない。俺の終着点は。
「ここじゃない!!」
両手に持っている武器を、地面に放り投げ、腰に巻いているホルスターから銃を取り出し、その銃に俺の魔力を注ぎ込む。巨大化とした銃を必死に持ち、銃口を巨大雷狼に向け、引き金を引く。
轟音が瞬く間に広がり、地面にある草が空中を舞う。貫通した巨大雷狼は倒れることもなく、ぬるりと巨体が俺の目の前に立つ。
もちろん、こんな事だけで倒れるはずなんてない。そう考えた俺は、咄嗟に次の行動に移した。銃をホルスターに入れ、黒椿と杖を持ち、その場から離れ、後ろに回り込む。
「ハァ…ハァ……ふぅ……。クロード!ディラン!」
二人の名前を呼び、その声に反応する二人は、俺の方を見た。
「ど、どうした!?」
「クロードとディランは俺と一緒にこいつを。エイダン、ライアン、イネスさんにリナさん。二人は周りにいる魔獣たちを倒すように。二手に分かれて一気に倒す!!」
役割を決め、みんなにそう伝える。空気が一変し、重苦しい空気から、希望の光が差し込んだ。死と隣り合わせであるこの状況。絶望的であったこの状況を奪還できる方法は、たった一つ。
「“生きる事”これだけだ!!」
俺の掛け声と共に、一斉に敵に飛び込んでゆく。俺とアヴェリーノ兄妹は巨大雷狼を倒しに、エイダンたちは周りにいる魔獣たちを。それは激闘だった。
「ハァ!!」
剣を巨大雷狼に切り刻み、魔法を放つ。一撃一撃がかなり重く、体力が削ぎ込まれてしまう。もちろん、魔力も無限ではないため、限りある魔力が徐々に減っていき、流石にまずい状況となってきた。
「くそっ、やっぱ強い…!!」
(もし、このまま旅をしてこのような事が起これば……。下手したら死んでしまう…。だけど、俺は生きる!まだ、やりたい事があるからな………!)
俺は体内にある魔力を有効活用する。ちまちま打っていたら、魔力が底を尽きるのも時間の問題。そしてかつ、威力が大きくなければならない。二つの条件が揃わない限り、長期戦になることは目に見え、負けることも目に見えていた。
「ふぅ…。クロード、ディラン。こんな所で死ぬわけには行かない」
「え?うんそうだね」
「あぁ、当たり前だな」
俺は二人に目配せをし、息を整える。杖を巨大雷狼に出し、体内にある魔力を全注ぎ、上級魔法を唱える準備を行う。
「『我の意思、我の生命、全世界に存在する生命のすべて。数多に存在する幾つもの魔法。聖域を汚すものには罰則を。聖域を汚すものに鉄槌を。
永遠の夜!!』」
杖の先端にある魔石が神々しく光り輝き、あたりを包み込む。巨大雷狼は悲痛な叫びを散らしながら、灰になり風に乗せられ、飛んでゆく。どこまで続くかわからない、彼方の向こうへと。
その光景を見たのか、国に逃げた侍たちは国の外から出て、エイダン達と共に魔獣を倒していた。俺は体内にあった魔力を全部注ぎ込み、体が限界を迎える。倒れ込みそうになったところを、アヴェリーノ兄妹に支え込まれた。
「ハァ…ハァ………勝った」
炎の晶石の光はもうすでに消えており、夜が明けそうだった。数時間の戦いを経て、俺たちは勝利を獲得した。“生きる”と言う勝利を———。
それからすぐさま旅館に戻り、二時間くらい布団の中で眠っていた。魔力は全部元に戻ったわけではなかったが、ある程度の量は元に戻っていた。そのため、体のだるさは感じなかった。
神州国での魔獣騒動は幕を閉じる。そして、また新たな国へと進む。の前に、丈一郎さんの元へと行った。
「おぉ!来たか!」
「丈一郎さん!話を聞くのが遅くなりました!北国あたりの出身なんですよね!?」
「そう急かすな。ちゃんと話すさ。あいつに言われてここに来たんだろ?」
そう淡々と話す丈一郎さんは、ここにくる前のことを話し込む。
「俺は、確かに北国あたりの出身だ。お前さんの付けている炎の晶石……。それを作った国は今もちゃんと残っている。だが、気をつけたほうがいい。俺も、この国に来る前に何度も死にかけた。古代文明で作られたカラクリ。それを解くには、諸説ありだが、命を守らなければならない。それが条件だ。死んでしまえば、そこへ辿り着くことはできない。そこへ行きたいのなら、俺が生まれ育った村へ行くといい。まぁ、行くには順番が決められているがな」
「順番……ですか?」
「あぁ、ここ、神州国の国へと来た道を引き返し、ユスフリカ王国門前まで辿り着く。そこから帝国の方へと行き、それから西の方面に行く。そこに小さな国がある。そこへ着いたら、次は南の国へ行け。南の国に北の国へ行ける道が、存在するからな」
地図に書いてもらい、最終的に南の国に丸が記された。丈一郎が言うには、そこまで辿り着くには、ざっと三ヶ月。相当な距離を歩き、その間として魔獣騒動を鎮める。相当困難ではあるが、帝国側が用意した馬車で行けば、多少の無茶はできる。
刀鍛冶を出て、今度こそこの国を出る準備をした。出る前に後ろから、俺の名前を呼ぶ女の人の声が聞こえてくる。
「アルベール様ー!」
この声に聞き覚えがあり、この国で俺のことを“アルベール様”というのは彼女しかいなかった。
「ゆきさん…。どうかしたんですか?」
「ハァ…ハァ…、こ、これを受け取ってください!お守りです!お父さんから聞きました。北国あたりに行くと。あ、あとこれを。防寒着でございます」
貰ったのは魔石の入り組まれたペンダントと、もこもこした衣服であった。
「えっと、これは……?」
俺はそう尋ねると、ゆきさんは頬を少し赤らめながら答える。
「今までのお礼です!ぜひどうぞ!」
「衣服に関しては……?」
「はい!私は衣服を作るのが得意なんです!ですから、アルベール様の丈を見て」
「見ただけで!?」
驚いた才能?に圧倒され、渡されたものを受け取り、お礼を言う。それを見たゆきさんは何故か顔を赤らめた。
「そういえば、お父さんって……」
「あ、はい!私、刀鍛冶の一人娘なんです!」
「え?ぇええええええ!?」
その場にいたみんなが驚愕した。まさかの丈一郎さんの娘さんであったこと。余計だと思うが、顔が全然違ったため、娘であることが分からなかった。
今度こそ神州国を出て、丈一郎さんが書いてくれた場所に沿って、また国を目指す。




