35話 手がかりゼロ
「ねぇ、アルベール。炎の晶石を作った文明の場所に行きたいんだよね?」
イネスさんにそう言われ、「うん」と頷き倒すが、目的と言っては、それ以外にもある。魔獣騒動を鎮静化させる事。その二つが旅に出かけた目的である。
「まぁ、そもそも炎の晶石がどこで作られたのかが、分かってない。何か、わかるものがあれば良いんだが………」
炎の晶石を手のひらに置き、それを見つめながら、そう答えた。どこでこれが作られたのか、それを解明する他、進展はしない。
「なるほど。分かるものがあれば………あ、そうだ!」
パンっ!と手を叩き何か思い当たることがあるらしい。
「何かあるの!?」
「うん。書店にあってね。私が見たのは二年前だけど、こう書いてあった気がする……」
イネスさんが言ったのは、こうだった。
“北側に位置する国、遥か高い文明が栄えており、そこでは様々な魔道具や色んなものが作られていた”
だった。
北側に位置する国、俺の記憶にはそんなのはなかった。あったとしても、“建っていた”というだけで、今もあるかは定かではない。
「北側に位置する………か」
「うーん、確かそこは……」
「え、知ってるの?」
「うん。地図で上の方にあったんだ。でも、国が書かれていたなんて………」
イネスさんが地図を開き、俺に見せる。指を指すとこには、たしかに国があるだなんて書いてなかった。
「北国だったら、結構寒くない?」
「まぁ、そうだね。そこに仮に国があるんだとしたら、防寒装備をしなきゃだからな」
「うん。そうだね。ともかく、その北国があるかどうかを調べた方がいいんじゃない?」
場所を移した。王国内にいる彩緑の人たちに、話を聞いてみるが、北側に国があるのは、見たことがない。と言っていた。
つまりは、ほとんどの人が知らない未知の領域。と言う訳だった。
そんな手がかりゼロである北国への、行き方。それは大変長い道のりで、その間に色んな国の魔獣騒動を抑えながら進む、というのは些か難しい。という状況だ。
何日かかるか、何週間か、何ヶ月か。はたまた何年か。それぐらい何も分かってない状況である。
そんな時、イネスさん専用の護衛騎士の人がやってきた。
ものすごくダンディーと言う言葉がよく似合う、男性が走ってやってくる。
「どうしたの?」
「先程、王女様に言われた事を調べて参りました」
膝をつき、跪く格好となった。
「それで、どうだったの?」
「これといったものは、情報は特に……」
「そう……。リナの方はどうだったの?」
「はい。リナ様に付いておられる護衛騎士の話によると、進展はなし……との事でした」
どうやら、北側に位置する国を調べてくれているようだった。今のところ、騎士の人たちが探していたとしても、情報はこれぽっちといってなく、その日は過ぎた。
そして、王国に来て一週間が経過する。それまで、色んな人に協力をしてもらいながらも、情報は不自然と言うほど、なかった。誰も見ていない。商人でさえ、旅人でさえ。それが不思議でたまらなかった。
「何もないってどう言う事だ……?」
もちろん、混乱してしまうほどおかしい。何故こんなに情報が何もないのか。それだけでも一日は過ぎてしまう。
そんなある日、炎の晶石がまた光を放つ。正直嫌な予感しかしなかった。胸騒ぎがする。思いがけない事が起こるとは、おそらくこう言う事だ。
そう。最初の国での魔獣騒動が行われる。




