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31話 魔杯の邪気

「マジですか?」


学院長から言われ、呆気に取られる。だが、覚悟はしていた事だった。


「あぁ、勿論だ」


学院長はレーイルダ帝国の皇帝の息子。エタン・レーイルダ。この人は皇帝の息子の五男。21歳と言う年齢で、学院長の座に着いた強者だ。


「日にちに関しては、まだ先だが、先に言っておこうと思ってな。準備に関しては、俺がなんとかする。その日までは準備をしておけ。いいな?」


「わ、わかりました」


謎の威圧を感じたものの、学院長室から出る。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


そしてそれからまた時間は流れ、二ヶ月。今度は夜にエイダン達と共に森に向かった。


「なぁ、アルベール。森に何かあるのか?」


「あぁ、そうだ」


先輩から聞くと、石の壁に近い場所で魔杯が置いてあると言っていた。


・魔杯とは魔道具の一種である。形は聖杯に似ており、その中には魔力が溜まると言われている。それを先輩が持ってこいと言っていたため、戦力を多めにし、挑んだ。


「魔杯…と言うのを知ってるか?魔道具の一種なんだが」


「あー、言い伝えであるやつか。え、もしかして森にそんなのがあるのか!?」


「あぁ、今じゃその魔杯が軽い暴走状態になってる。だから、それを鎮めなきゃ行けないんだ」


「なるほどな。わかった」


森の奥へと進み、魔杯があるとされている場所までいく。そこには禍々しい魔杯が置かれていた。


「あれ……か」


「すごそうだな………」


「で、どうするんだい?」


「もちろん、魔法で鎮める。そのためには、戦力が多い方がいいんだ」


杖を召喚し、エイダン達の方を見る。息を呑み、体制を整え、気を引き締める。


「よし、じゃあ触るぞ」


ゴクリ、と唾を飲んだ。緊張の朝を額に浮かばせ、魔杯に手を伸ばす。もちろん、後ろにいるエイダン達も戦闘の準備をしていた。手を前に出したり、剣を鞘から抜いたり。


魔杯に触れた瞬間、邪気が瞬く間に広まる。


「ぐぅっ!」


邪気が広がると、森は枯れつつあった。


「よし、戦うぞ!」


「「「「あぁ!/うん!」」」」


その邪気から人型に変形され、人間の姿となった。


「こいつが………」


見た目は髪の長い女の人で、目は死んでいた。俺たちがいるのを確認した後、手を前に出し波動を出す。


「うわぁ!?………………ぐっ!」


吹き飛ばされ、木にぶつかってしまい、敵に押されていた。


「ぐっ、波動を出せるのかよ」


「なんなんだよ、こいつは」


「波動って………、近づく事もできないじゃん」


「ぐっ、アルベール、どうするの?」


「とにかく、あの波動をどうにかしない限り………」


考え込むが、いい案は出なかった。そんな時、ライアンが口にする。


「障壁魔法は?」


「あっ!それだ!!」


作戦はこうだ。


エイダン達が囮となり、波動を出すタイミングで、障壁魔法を張り詰める。吸収したところを見て、一気に叩く。


作戦を開始し、エイダン達は魔法を放ち、それに釣られた人型の敵は波動を放つ。


「『障壁魔法』」


杖の先端が光、見えない障壁が張り詰める。人型の敵の放った波動を吸収し、隙ができたため、エイダン達が一気に攻める。クロードとディランは剣で叩き、エイダンとライアンは得意な属性魔法を放った。そして、俺も魔法で風魔法を放つ。


「『風の魔法よ。邪気を切り刻め!!風刃ウインド・ブレード』!!!』」


風の刃が人型の敵を切り刻み、邪気が取り払われる。


「倒せた……みたいだな」


魔杯から邪気が消え、元通りの魔杯となった。それを取った。


「よし、これを渡せば………」


「誰に?」


「え!?いや、なんでも!」


正直、あまり俺が大魔導師アーベルである事を、知らせちゃいけないと、直感でそう感じた。なぜなら、混乱を起こす可能性があると見たから。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


それから、エイダン達と別れ、考古学の教室まで行く。扉をガララっと開け中に入ると、すでに先輩がいた。


「こんな時間までいたんですか?」


「それを言うのなら、アルベールだってそうだろ?」


「まぁ、そうですけど。あ、それより魔杯を手に入れて来ました」


魔杯を先輩に見せつけ、興味深そうな顔つきとなった。


「なるほどな。わかった。ありがとう」


魔杯を受け取り、虫眼鏡でマジマジと見る。


「そういやさ、アルベール」


「なんですか?」


「そろそろ、準備とかしてるの?」


準備……と言うのは、旅に出る準備のことだ。二ヶ月前に学院長から、言われ了承を得たため、旅に出る準備をしなければならなかった。


「まぁ、ぼちぼちです」


「なるほどな。今、世界各地で何が起こってあるのか、見当もつかない。それを鎮めることが出来るのは、今でも『大魔導師』として崇められているアルベールしかいない。いや、アーベルって言った方がいいか?」


「………ううん、アルベールで平気」


魔杯を見ながら、横で話しかけてくる先輩だったが、名残惜しい気分でもあった。だが、世界各地で起こってる魔獣の異常現象。おそらく、学院長が俺の魔法の力と魔力量を、考慮した上でそう判断したと、俺は感じている。


仮に、世界が破滅まで向かうほど、魔獣が増え、死人が出れば元も子もない。誰かがやるしかない状況に、陥ってるのは目に見えていた。


「必ず帰ってくると、信じてるぞ」


「…………はい」


先輩の言葉を胸に、教室から出て、男子寮へと向かう。


(旅に出ること、エイダン達に言わなきゃだな)


行く道中で思い当たり、夜の学院の敷地内を歩く。その日は曇りだった。

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