24話 魔獣からの夜明け
月夜に照らされる帝国の外。炎の火が飛び舞う。五感を研ぎ澄ませ、音をよく聞き、速さをよく聞き、耳に集中させる。魔獣の雄叫び、人々の悲痛な叫び、それら全ても聞こえてくる。剣が交わる音、金属音、そして魔法の発射される音、打撃音、爆発音。
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———無数の音が耳の中に入ってくる。俺の耳に。
(嫌な音…。あの時を思い出すだけで、吐き気を感じられる……!)
あれからどれくらい経ったのか、定かじゃなかった。俺の体もボロボロとなり、手足が動かないほど。意識も朦朧とし、今にも死が訪れそうな———………そんな予感。
(体内にある魔力って、後これくらいなんだ)
体内に感じられる魔力はごく僅か。いつ尽きるかも分からないほど、感覚が鈍って来ている。
(誰かの声が聞こえてくる………この声は———………、誰だっけ)
もうすぐで、冬が訪れる。風が肌寒く、長袖である制服を着ていても、寒さが感じられるほど。
(………また、声が聞こえる。一体、誰だよ)
だけど、聞き覚えのある声だ。誰かが、俺を呼んでいる。意識の混沌の中に俺はいる。
(ここは、俺の終着点じゃない)
光を目指して、目覚める。俺のアルベールの住んでる時代に。
「………………」
「あ、起きた」
「おい、大丈夫か?」
顔見知った人物達が、俺を見つめる。
(あー、そうか。あの後〜………えーっと、何があったんだっけ?)
まだ頭がフラフラする中、意識を保つのに必死で、思い出せなかった。
「先生からなにもないって言ってたけど………」
「頭を打ったんだから、しょうがないじゃん」
「まぁ、それもそうか」
(この2人の顔………あ、思い出した。エイダン・リータとライアン・ダールベルクだった)
俺の親友である、エイダン・リータとライアン・ダールベルク。最初はめんどくさい絡みに巻き込まれたが、案外いいやつな2人。
「ねぇ、あの後、どうなった?」
俺自身、戦いの最中を思い出さない為、2人に聞くと淡々と話し始めた。
どうやら、あの時女の子を庇った後、騎士団と共に死闘を繰り広げていたが、強固な体の魔獣、ゴーレムに渾身の一撃を喰らい、障壁魔法を張る暇もなく、呆気なく気を失った。
(マジか……。でも確かにそんな気が………。って言うか、大魔導師としての威厳がない……。だいぶ弱くなったな)
今では『最強の大魔導師』と呼ばれているアーベルだったが、そんなカケラが一つもなかった。
(鍛錬を怠ったせいだな…)
がっくしするも、見知った顔後、4人いないことに気がつく。
「後の4人は?」
「あぁ、今は撤去作業に行ってるよ」
「2人は行かなくていいの?強そうなのに」
「俺たちはお前を運ぶために、わざわざ。ね?」
「あっはい。ありがとうございます」
俺がそうお礼を言うと、満足したのか笑みを浮かべる。そこでライアンが後付けとして何かを言った。
「………!?マジで?」
「大マジ」
ニヤニヤとしながら、医務室から去り、俺は「まぁいいや」と覚悟を決めていた。そもそものこと、俺が悪いんだし。と思って。
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医務室を勢いよく入ってくる3人の姿と、のんびりとやってくる1人の姿が目に入る。
「ん?」
やって来たのは、俺がよく知る顔だった。クロード、イネスさん、リナさん、でディランだった。
「ね?だから言ったろ?」
「でも………!」
「ハァ…………」
それぞれが反応を見せ、特にクロード、イネスさん、リナさんは安心の表情を見せた。
(用心するって言ってたのにな………)
改めて、自分がまだ弱いことに気づく。もっと肉体的に強くならなきゃいけない。即座に反応できるような。
(そんな人物にならなきゃだなぁ。死なない限り、出来そうだし)
1万年前はそんな事できなかった。20歳で死んでしまい、今は15歳。後五年後で同じ年齢になる。今度はそれより長生きするためには、魔法を覚えるだけじゃないと言う事に気づく。強さはもちろん、反応速度、魔力量、肉体的、精神的に強くならなくちゃいけない。そんな大事なことを、俺は忘れていた。
そんな時、リナさんから抱きしめられた。
「………………!リナさん?」
「死んでなくてよかった………」
強く抱きしめ、少し苦しかったが、嫌な気持ちにはならなかった。
「ちょっ、リナ?いきなりはダメでしょ?」
「別にいいじゃん」
「………………」
(クロードからの視線が痛い…。でも、仮に学院に入ってなかったら、こんな青春?味わえていなかったな。まぁ、アーベルが生まれた時代は今よりも全然進んでいなかったけど。知り合いもほとんどいなかったし。居たとしたら〜………、あぁ、あいつか)
「ともかく、無事でよかった」
「うん。私たちが来た時にはもう倒れてたから」
「うんうん」
「そうだね〜。それにしても、アルベール。頭は大丈夫?」
こめかみ辺りにを指で指し、ディランはそう聞いて来たため、俺もその問いに答えた。
「うん。もう平気」
「そっか。それならよかった。もうそろそろで終わると思うから、僕たちはもう戻るね」
「あ、そっか。手伝いしてたんだった」
「じゃあ、また来るね」
「バイバーイ」
「ゆっくり休んでるんだよ」
手を振りながら、医務室から出て行った。俺はなぜか虚しくなる。
(足手まとい………)
足手まとい、と言う言葉がすぐに浮かんだ。でも、みんなは俺を心配そうにして、見舞いに来てくれた。それだけで嬉しかった。昔のことを思い出すのは、もうやめた。
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アルベールは炎の晶石を手のひらに置き、医務室にあるベットから、窓を眺める。
もうすぐで、夜が明ける。




