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24話 魔獣からの夜明け

月夜に照らされる帝国の外。炎の火が飛び舞う。五感を研ぎ澄ませ、音をよく聞き、速さをよく聞き、耳に集中させる。魔獣の雄叫び、人々の悲痛な叫び、それら全ても聞こえてくる。剣が交わる音、金属音、そして魔法の発射される音、打撃音、爆発音。




♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

———無数の音が耳の中に入ってくる。俺の耳に。


(嫌な音…。あの時を思い出すだけで、吐き気を感じられる……!)


あれからどれくらい経ったのか、定かじゃなかった。俺の体もボロボロとなり、手足が動かないほど。意識も朦朧とし、今にも死が訪れそうな———………そんな予感。


(体内にある魔力って、後これくらいなんだ)


体内に感じられる魔力はごく僅か。いつ尽きるかも分からないほど、感覚が鈍って来ている。


(誰かの声が聞こえてくる………この声は———………、誰だっけ)


もうすぐで、冬が訪れる。風が肌寒く、長袖である制服を着ていても、寒さが感じられるほど。


(………また、声が聞こえる。一体、誰だよ)


だけど、聞き覚えのある声だ。誰かが、俺を呼んでいる。意識の混沌の中に俺はいる。


(ここは、俺の終着点じゃない)


光を目指して、目覚める。俺のアルベールの住んでる時代に。


「………………」


「あ、起きた」


「おい、大丈夫か?」


顔見知った人物達が、俺を見つめる。


(あー、そうか。あの後〜………えーっと、何があったんだっけ?)


まだ頭がフラフラする中、意識を保つのに必死で、思い出せなかった。


「先生からなにもないって言ってたけど………」


「頭を打ったんだから、しょうがないじゃん」


「まぁ、それもそうか」


(この2人の顔………あ、思い出した。エイダン・リータとライアン・ダールベルクだった)


俺の親友である、エイダン・リータとライアン・ダールベルク。最初はめんどくさい絡みに巻き込まれたが、案外いいやつな2人。


「ねぇ、あの後、どうなった?」


俺自身、戦いの最中を思い出さない為、2人に聞くと淡々と話し始めた。


どうやら、あの時女の子を庇った後、騎士団と共に死闘を繰り広げていたが、強固な体の魔獣、ゴーレムに渾身の一撃を喰らい、障壁魔法を張る暇もなく、呆気なく気を失った。


(マジか……。でも確かにそんな気が………。って言うか、大魔導師としての威厳がない……。だいぶ弱くなったな)


今では『最強の大魔導師』と呼ばれているアーベルだったが、そんなカケラが一つもなかった。


(鍛錬を怠ったせいだな…)


がっくしするも、見知った顔後、4人いないことに気がつく。


「後の4人は?」


「あぁ、今は撤去作業に行ってるよ」


「2人は行かなくていいの?強そうなのに」


「俺たちはお前を運ぶために、わざわざ。ね?」


「あっはい。ありがとうございます」


俺がそうお礼を言うと、満足したのか笑みを浮かべる。そこでライアンが後付けとして何かを言った。


「………!?マジで?」


「大マジ」


ニヤニヤとしながら、医務室から去り、俺は「まぁいいや」と覚悟を決めていた。そもそものこと、俺が悪いんだし。と思って。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


医務室を勢いよく入ってくる3人の姿と、のんびりとやってくる1人の姿が目に入る。


「ん?」


やって来たのは、俺がよく知る顔だった。クロード、イネスさん、リナさん、でディランだった。


「ね?だから言ったろ?」


「でも………!」


「ハァ…………」


それぞれが反応を見せ、特にクロード、イネスさん、リナさんは安心の表情を見せた。


(用心するって言ってたのにな………)


改めて、自分がまだ弱いことに気づく。もっと肉体的に強くならなきゃいけない。即座に反応できるような。


(そんな人物にならなきゃだなぁ。死なない限り、出来そうだし)


1万年前はそんな事できなかった。20歳で死んでしまい、今は15歳。後五年後で同じ年齢になる。今度はそれより長生きするためには、魔法を覚えるだけじゃないと言う事に気づく。強さはもちろん、反応速度、魔力量、肉体的、精神的に強くならなくちゃいけない。そんな大事なことを、俺は忘れていた。


そんな時、リナさんから抱きしめられた。


「………………!リナさん?」


「死んでなくてよかった………」


強く抱きしめ、少し苦しかったが、嫌な気持ちにはならなかった。


「ちょっ、リナ?いきなりはダメでしょ?」


「別にいいじゃん」


「………………」


(クロードからの視線が痛い…。でも、仮に学院に入ってなかったら、こんな青春?味わえていなかったな。まぁ、アーベルが生まれた時代は今よりも全然進んでいなかったけど。知り合いもほとんどいなかったし。居たとしたら〜………、あぁ、あいつか)


「ともかく、無事でよかった」


「うん。私たちが来た時にはもう倒れてたから」


「うんうん」


「そうだね〜。それにしても、アルベール。頭は大丈夫?」


こめかみ辺りにを指で指し、ディランはそう聞いて来たため、俺もその問いに答えた。


「うん。もう平気」


「そっか。それならよかった。もうそろそろで終わると思うから、僕たちはもう戻るね」


「あ、そっか。手伝いしてたんだった」


「じゃあ、また来るね」


「バイバーイ」


「ゆっくり休んでるんだよ」


手を振りながら、医務室から出て行った。俺はなぜか虚しくなる。


(足手まとい………)


足手まとい、と言う言葉がすぐに浮かんだ。でも、みんなは俺を心配そうにして、見舞いに来てくれた。それだけで嬉しかった。昔のことを思い出すのは、もうやめた。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


アルベールは炎の晶石を手のひらに置き、医務室にあるベットから、窓を眺める。


もうすぐで、夜が明ける。



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