21話 銀髪少女
時刻は夕方の時間帯となった。
「……………」
アルベールは教室内の、自分の席に座り窓をずっと眺めていた。
「なんだかなぁ。最近おかしいな」
頬杖をつく。窓の外を見ながら、彼はボンヤリしていた。
「あれ、アルベール。まだいたの?」
「………………クロード」
扉の方にはクロードが立ち尽くしていた。
「どしたの?ボッーとして」
「いやぁー、なんかね。………なんでもないよ」
椅子から立ち上がり、鞄を片手に持ち、教室から出て行った。
(何なんだろうなぁ。最近、あの夢を見る様になってから、クロードに既視感を覚える)
そう呟きながら、夕日が照らされる道を歩いていた。男子寮に入り、自室に行く。自室に置いてある本棚から、一冊の本を取り出し、机に座りその本を見ていた。
「………………この本って」
この間帝都にある書店で買ったその本に書かれていた題名は、『古代英雄本』と。
「古代の英雄をまとめた………本?」
ページをめくり、そこには昔に活躍した英雄達の名前と功績が書かれていた。
(………………!!)
読み進めていくと、一つの名前に気づいた。
「………あ、あぁ………」
『マーティナ・ヘルグビュイ』彼は、その名前に見覚えがあった。
『待てよ!マーティナ!早いって!』
「………………!?」
名前を見た時、胸をギュッと握りしめた。強く、強く。硬く握る。
「………………ま、マーティナ」
(知っている。俺は、この名前を………。だけど、一体、どこでだ?)
見覚えがあるはずなのに、思い出せなかった。一度冷静さを取り戻し、そのマーティナ・ヘルグビュイが成し遂げた功績を見ていた。
“アーベル・ジャルディノと一緒にレーイルダ魔導帝国、及びレーイルダ魔術学院を創生した人物”
と書かれていた。それを見た時、紙をぎゅっと握り、手汗が出るほど強く握っていた。
「俺と………一緒に帝国と学院を創生した人物……。もしかして、夢に出てきた………あいつか?」
咄嗟に夢に出てきた、髪の短い“銀髪”の“女の子”を思い出してしまった。
「………………もし、夢に出てきたあいつが、ここに書かれている奴と、同一人物なら、他にも記されている何かが残っているはずだ。どこかに、必ず」
彼は好奇心旺盛だ。気になることは、片っ端から片付ける。これが、仮に“長い旅”になるのなら、それは承知の上。
「どこにあるのか……。うーん………」
腕を組み、眉間に皺を寄せながら、唸っていた。
「おや、もう帰ってきてたのかい?」
「あ、ディラン。お帰り」
「ただいま。なにしてたの?読書?」
「ねぇ、マーティナ・ヘルグビュイって人物、知ってる?」
「マーティナ・ヘルグビュイ……?伝説上の人物として描かれているな」
「どこの!?」
「確か〜………、どこだっけ?でも、その人物を知っているのは、世界中で有名だぞ。だから、世界各地で言い伝えが残っている。レーイルダ魔導帝国では、帝国であるレーイルダと学院を作った。アーベル・ジャルディノという人物と共に」
「じゃあ、他の国では?」
「他の国では、そのアーベル・ジャルディノが亡くなってから、各地で困っている人々を助けた。って言う言い伝えがあるが………」
ディランの説明で、アルベールは亡くなった後でも、そのマーティナ・ヘルグビュイが生きていることは確認された。
「それと、そのマーティナ・ヘルグビュイが生前の時では、初めて作ったのされるのが、魔石の入ったネックレスを作ったとされているが……」
(魔石の入ったネックレス?)
「それって、どんな色?」
「え?確か、赤色。今じゃ取れなくなった幻の宝石。炎の晶石って言うやつ。近い色としては〜………金緑石って言うのに似てるな」
アレキサンドライトと言うのは、太陽ににあたると緑色、夜になると赤く光ると言われる不思議な石だ。
「赤色……。魔石のネックレス……」
「ん?どうかしたのか?」
(………………もしかして!)
実家から出てくる時、お守りとして持ってきた魔石ネックレス。彼の棚から取り出すと、ディランは酷く慌てていた。
「それ!それだよ!」
(これが、“炎の晶石”)
炎の晶石は業火に燃え盛る様な、情熱な赤をしていた。
(これが、マーティナ・ヘルグビュイが作ったとされる。でも、何でそれを俺が……?)
そんな時、アルベールの脳裏に一つの記憶が流れる。
『これ、アーベルに渡す。絶対大事にしてね』
『でも、これマーティナのでしょ?俺に預けて平気なの?』
『うん。アーベルだから良いんだよ』
(………………!?これは、俺の記憶……?あれがマーティナ。でも、声がどこかで聞いた覚えが………)
「ねぇ、ディラン」
「ん?どうしたの?」
「この事は、俺とディランの二人だけの秘密にして。他言無用で頼んだよ」
炎の晶石を首につけ、ディランを見つめる。
「ねぇ、この“炎の晶石”って………。どう?」
「は?」
「ともかく、マーティナ・ヘルグビュイに関する本を片っ端から調べる。手伝って」
「え?今から!?」
「明日でも良い。とにかく、気になるんだ」
「まぁ、良いよ。友の言う事ならばなね」
ディランは嫌々言いながらも、アルベールを手伝う。
「なにすれば良い?」
「明日は休みだ。図書館や帝都にある書店を隈なく探して。手分けしてやろう!」
「分かった」
本を読むのに夢中で、周りを気づいていなかった。外は、もう真っ暗で月がよく見える。星空が満点に広がっており、どこまでも続いていく、星々達。
(そういや、大魔導師としても、この星空満点の空は変わってないんだな)
昔の余韻に浸りながらも、庶民として、生き抜く。この世界を。




