20話 夢
男子寮、アルベール・ディランの部屋にて。外は暗く、時間は夜中の2時を指していた。
「ふわぁあ……だいぶ夜更かししちゃったな」
背伸びをし、自身のベットに向かって行ったアルベールは、そのまま倒れ込む様にふかふかなベットに飛び込んだ。
『急げ!!アーベル!!』
『待てよ!ーーーーー!早いって!』
空には、星が満点だった。そんな日、地面は地獄の様な絵面だった。そこを走っているのは、二つの影。お互いに手を取り合い、走っていき、魔法を放つ。追われている“なにか”はビクともせず、距離を詰められ、ついには壁際に追い込まれた。
その“なにか”は口から禍々しい何かを吐き出す。アーベルは後ろにいる人物を守るかのように、前に出て、手を大きく広げた。
『ぐっ!!』
禍々しいなにかはアーベルを包み込み、そのまま眠りに落ちた。
『アーベル!アーベル!』
そのまま意識を取り戻さず、大魔導師、アーベルは息途絶えた。
「………なんだあれ」
朝食を食べ、顔を洗い、歯を磨き、レーイルダ魔術学院の制服を身に纏い、革製の鞄を背負い、学院まで歩いて行った。
(しっかしあの夢なんだったんだ?あんな光景あったっけ?)
不明瞭な夢だった。そもそも、夢なのか分からなかった。彼、アルベールには前世の記憶。大魔導師の生まれ変わりだ。覚えている所、覚えていない所があるが、多少のことは覚えている。今朝見た夢が大魔導師にあった出来事なのか、覚えてすらいなかった。
(ま、いっか)
「おはよう!アルベール」
「ん?あぁ、おはよう。クロード」
銀髪の髪が靡かれ、元気よく彼の元へ走ってきたのは、クロード・アヴェリーノ。
(なんでだろう?クロードって見覚えがあるんだよなぁ)
クロードの顔を見つめながら、既視感を覚えるアルベール。
「ん?どうかしたの?」
「え?あ、いやなんでもない」
クロードから視線を逸らし、そのまま二人で学院まで歩き、校舎内に入っていく。
時間は流れ、昼食を食べる時間帯になった。
「ハァ〜、腹減った〜!」
学院内にある食堂で、食事を運び、それを頬張る。
「君か」
前から、騎士団長達3人が近づいてきた。
「あ、どうかしたんですか?」
「一緒にいいかい?」
「はい。どうぞ」
アルベールの前に、アンドレア、オリバー、ジュールが並んで座り、肉料理を食べていた。
「おぉー、美味しそうですね」
「食べてみるかい?」
「え、いやそれは平気です」
「そうか」
アンドレアは赤ワインで煮込んだと思われる、牛肉をナイフで切り、上品な食べ方をしていた。
オリバーはチキンソテーを食べており、湯気が立ちいい匂いなのが、彼の鼻までやってくる。
ジュールは雪の様に白い白パンと、アンドレアと同じ赤ワインで煮込んだ牛肉を食べていた。
「昨日、よくついてこられたな」
「え?」
「昨日の走り込み。やった事ないやつからしたら、結構きついと思うんだが、どうだった?」
昨日の剣技の授業を言っており、アルベールは苦笑しながら、
「あはは、結構、キツかったですか」
頭をかきながら、そう答えた。
「そうかそうか。だけど、疲れるって言うのは、いい事なんだぞ?精進あるのみ。ってな」
ウィンクをアルベールは更に苦笑を浮かべた。
「君、名前はなんて言うんだ?」
食べ終わると、アンドレア、オリバーが去って行った後、ジュールに話しかけられた。
「アルベール・デイヴィスです」
「アルベール。なるほど。この間は助かった。お礼を言いそびれたと思ってな」
「あー、あの時ですか。いえ、大したことはしてないですから」
「謙虚なんだな。謙虚な心構えはいいこと。だけど、あまり謙虚すぎるのも行かないからな」
「ハァ………?」
そう言い残し、ジュールも去って行った。
(謙虚な心構え………ね。俺にはそんな心構えなんてないよ。あったらもっと良かったんだろうけどね)
アルベールも早く食べ、食堂から去る。
暗い顔をしながら。それはまるで過去を思い詰めているかの様だった。




