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18話 伯爵

剣を振り下ろそうとする伯爵の姿が———。


「………………!?みんな後ろ!!」


咄嗟に気づいたアルベールが悲痛な叫びをあげ、後ろを一斉に振り向く。


「おりゃあぁぁぁぁ!!」

「ぐぅわぁ!!」


銀色に光る剣を鞘から、颯爽と取り出しクロードが伯爵の剣を防いだ。


「ぐっ……!」

(重い……!)


伯爵の振り下ろす剣を塞いだクロードは、ジリジリと後ろに足を下げていく。それほど、伯爵の力は強い。体の中心から、剣を握る手にその力みが走る。


「父さん………!」


クローヴィスは必死に父親に手を伸ばしていた。今までこき使って、監禁した父親に。


「お前、また来ていたのか」

「………ッ」


鋭い目つきがアルベールを睨み、額に冷や汗を流すも、引くことはなかった。


「あんたの息子を助けに来たんだよ」

「なに?」

「え?」


伯爵は間抜けな顔をし、クローヴィスも同じ顔をしていた。この時だけ、親子だなと感じてしまう節もあった。


「あんたは息子を犯罪者にしようとしていた。 

リナさんを誘拐し、部屋に閉じ込めるのは、誘拐罪、監禁罪になる。 

あんたは息子にそうしようとしてんだよ」

「それだけじゃない。お前はクローヴィスに多大な負担をかけていた」

「そのせいで、クローヴィスはどんなに酷い目にあったのか。それを一度でも考えた事があるか?」


アルベール、エイダン、ライアンが順番で言っている最中に、ディランはクローヴィスの手を取った。


「それを言うのなら、お前らだって不法侵入だ。それは良いのか?」

「そうだね。俺たちも不法侵入だ。だが、ここがもう既に空き家で、使用者がおらず、私有地じゃなく、仮にそれが関係なしでも、ちゃんとした理由が明確にあれば、罪にはならない」

「なに?」

「俺たちは、クローヴィスを助けるためにここに来たって言った!あんたから解放するために!!」

「お前らになぜそんな事を言われなければならない!!」

「あんたは無意識なのか、知らないけど息子を傷つけてんだよ!!あんたの最初の子供が死んでしまった時から!!」

「………………ッ!?」


伯爵は虚ろな目で自身の息子を見ていた。その後に、伯爵は悲痛の叫び声で、頭を押さえた。実の娘が死んでしまった時から、自分を見失い、その恨みなどを実の息子に叩きつけていたと言う、現実を。


「そんなの嘘だ………、嘘だ!!」

「嘘じゃない。クローヴィスの姉が、ユスフリカ王国に行く途中の道で何者かに殺された。殺したやつをあんたは憎み、恨み、殺してしまいたいほどだった。そこからあんたは子供に対する接し方を忘れた。そして、今年。学院に入学した時、ユスフリカ王国の王女たちが入学したことを、知ったあんたはクローヴィスにどちらかを攫うように命令した。手紙で。ドラゴンを操れるように、ユスフリカ王国を焼き払うために。違うか?」

「………………!くそっ………」


そんな伯爵を見ながら、アルベールは問いかける。あの時、誰がドラゴンの上に乗り、操っていたのかの事実を。


「最初に空高くにドラゴンが羽ばたいている時、誰か乗ってんだよ。誰だと思う?」

「知るか。そんな事………」

「あんたの息子である、クローヴィスだ」

「……………….!?なに?!そんなわけない!!ヘルツァンバイン家では代々ドラゴンを操ることの出来るのは、女だけと決まっている!!」

「あぁ、そうだ。それがなんの因果かクローヴィスが扱えた。おそらくは、クローヴィスの姉から貰ったあの魔石だろ。魔石は自身の魔力を石に溜め込み、応用の力として扱う事ができる。だからきっと、自分の弟がいつか、大きくなった時一緒にドラゴンに乗ろうと、してたんじゃないか?だから、自分の魔力を、ドラゴンを操ることの出来る魔力を込めながら、丹精を込めて作った」

「だから、あの時、ドラゴンを飛ばせることのできたんだ」

「意識なかったの?」

「あぁ、なんか、夢見心地で。夢でも見てるのかと思ってた」

「おそらく、お姉さんが手助けをしてくれたんじゃない?」

「姉が………」


クローヴィスの首に付けてある、ネックレスについてある黄色く光る魔石を手に乗せた。魔石はアルベールが言った通り、応用として使える部分がある。そのため、まだ0歳であったクローヴィスに自身の姉が丹精を込めて、クローヴィスにプレゼントするために。


それを知ったクローヴィスは口を弾んだ。魔石を見ながら、今までされていた仕打ちの数々を。


「俺、父さんの命令に従わないとって思ってた。だってそうしないと、嫌われると思ったから。母さんが家を出て行ってしまった時、父さんだけには嫌われたくない。嫌われないようにしないと。って、常に思ってた。だけど、今回のことだけは、どうしてもやりたく無かった。でも………」

「そうしないと、殺される。と思ったから?」

「…………!あぁ、そう思った。だから怖くて……。やるしか無かった」


淡々と、涙声になりながら、クローヴィスは胸に密かに抱く思いを言い放った。枯れそうになるまで、ずっと。それを見た伯爵は、やって来たことに罪悪感を覚え、父親としての心を取り戻し、手に握っていた剣が、ずり落ち、クローヴィスに近づいた。


思いっきり抱きしめた。強く。強く…!久々に父親の暖かさを感じたクローヴィスは、父親の胸の中で子供の様に、泣き叫ぶ。声が枯れるまでずっと。その光景を見ていたアルベール達は、じっと見つめていた。イネスやリナは許す事ができないほど、しでかした2人の光景を、ただ微笑みながら、見ていた。



その後は、クローヴィスを寮に返すために、ディランがおんぶをし、伯爵と別れを告げる。伯爵はおそらく、牢に入れられるだろう。もしくは、死刑になる可能性だってある。だけど、クローヴィスに見せた表情は、穏やかで、我が子に見せる笑顔だった。



それは過去という名の、悪魔が浄化された様な、そんな笑み。泣き疲れたクローヴィスはディランの背中で気持ちよさそうに、寝ていた。きっと、今まで大変な思いをしたことは、ここにいる全員感じたはずだ。



早い時間帯から行ったはずなのに、もう昼だった。太陽が帝国内を照らし、もうすぐで夏休みだ。

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