14話 ヘルツァンバイン家
昨日、あんなことが起きたため、アルベールの心中はモヤモヤで埋め尽くされていた。それは霧のような、そんな感じを。
(なんであんな事をしたのか。なんのために………)
今日はヘルツァンバイン侯爵家の息子は出席していた為、アルベールはその方向を見た。彼は読書をし、淡々と読み進めていた。
(ヘルツァンバイン侯爵…。古き言い伝えでは、竜を操ることができ、使い魔にすることができる家柄。そして、昨日。ドラゴンが空中を飛び回ったものの、国が壊されることなく、そして、死人は誰一人でなかった。なにがしたかったんだ?もしかして、威厳を示す為?どちらにせよ、もし厄介な事に巻き込まれれば………)
頭の整理が出来なかった。なぜなら、理由がわからずじまい。目的がどんな事で、ヘルツァンバインの息子が何をしたいのか。
それが分かれば、苦労はしないだろう。と、アルベールは思っていた。
「なぁ、クロード。ヘルツァンバイン侯爵家の息子君の名前は?」
「知らないの?クローヴィス・ヘルツァンバイン。ヘルツァンバイン家の三男だよ」
「そう。ありがとう」
隣の席であるクロードに名前を聞き、彼の名前を知った時、アルベールの顔つきは変わった。
(おかしいな……。調べた時は、ヘルツァンバイン家は二人の子供が行方不明、もしくは数年前に亡くなってるって………)
何故か記されていた本とは、情報が違っていた。その時点で不可解だと言うことがわかる。
(クロードが嘘つくとは思えないし……。記入ミスか?)
授業が始まったとしても、アルベールはそんなモヤモヤをどうにか取り払おうと思ったが、なかなか取り払えず、授業内容を聞きそびれた。
ーーーーーーー
時間は昼となり、校舎内にある食堂にて食べていると、ディランと同じクラスである東側に位置するユスフリカ王国の第一王女がやってきた。
「こんにちわ。アルベール」
「………!?イネス………さん」
「アヴェリーノ君に聞いたよ。昨日、突然ドラゴンがやってきたんだって?その時に頭を打って、気を失ってたって」
「あー、そうですね。でも、今では大丈夫です」
「そっか。それならよかった」
黄緑色に靡かれるその髪と、透き通るような声、微笑んだ表情はまるで、宝石のように煌びやかだった。
「私も一緒にここで食べていい?」
「あ、どうぞ」
イネスの持ってきたメニューは、ライ麦で作ったとされる黒いパンと、エピのソテーだった。
(やば、美味しそう………)
あまりの美味しそうな匂いに、ついつい彼女が別国の王女であることを忘れていた。
「ふふっ、食べてみる?」
「え!?い、いえ!結構です!」
(あ、危ねぇ。すっかり自分の立場を忘れていた………)
我に帰ったアルベールは黙々と、パンと加工された魚を口に運び、食べていた。
「あ、そういえば、リナさんは?」
「妹のリナは今日は休んでるの」
「………そうなんですか。どこか悪いとか?」
「そうではないみたいなんだけど……。朝から様子がおかしくて」
「様子?」
「うん。ちょっと心配なのよね」
姉であるイネスは双子の妹である、リナを心の底から心配していた。
「あれ、アルベールこんな所にいたのか。………………って、え!?」
後ろからエイダンがやって来た。かと思いきや、度肝を抜かれたかのような、焦った顔を見せる。
「お、おおおおおい、なんでここにユスフリカ王国の王女様がいるんだ?」
「一緒に食べてるんだよ」
「嘘だろ!?」
「あの、アルベール。こちらは?」
「あぁ、俺の友達のエイダン・リータ」
「初めまして。エイダンです」
(なんか、最初と違うよね?)
初めてエイダンに会った時とは、まるっきり違った。
「あぁ、リータ伯爵家の」
「はい。その通りでございます。ユスフリカ第一王女様」
丁寧な口ぶりとなり、手を胸におき挨拶をしている。それは敬愛の姿をしていた。
その後は、エイダンを入れ、三人で食事をしていると、あっという間に昼時間が終わり、午後の授業が始まった。
(………ん?クローヴィスがいない)
午後の授業には、クローヴィスが居なかった。疑問に思った彼は、担任に聞いてみることにした。
「あの、先生。ヘルツァンバインは?」
「あぁ、腹痛がすると言って早退したよ」
「あー、なるほど……」
(ん?)
何故かそのことが、心に引っかかった。ここにいるみんな、思いもしなかった。女子寮で休んでいるリナ・ユスフリカの部屋の状態が。そして、クローヴィス・ヘルツァンバインの行方を。




