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13話 言い伝え

六月ユーニウスから早一ヶ月、七月ユーリウスとなった。毎年、帝国は猛暑に襲われていたが、最近は涼みやすくなり、今年は例年よりも過ごしやすい年となった。学院の制服も夏服に変わり、男女共々半袖となった。アルベール達は授業で、帝国の外に出ていた。


「薬草はいろんな種類がある。その効果はピンキリだ。それを見通せるように、自主特訓しておくように!大事な時に肝心なものがなかったら、時間を無駄にしてしまうからな。まず、そこに生えているのは、体の不調を治す治癒草だ。それは頭痛や腹痛、腰痛などを治すことのできる薬草だ。それに似たのが、外傷を治す事のできる、外傷薬だ。それには塗り薬タイプが多い。膝小僧を擦りむいたり、指を切ってしまえば、それを塗る事で、二日から三日だ治る。だが、根本的に切れたしまえば、治すことはできないから、注意しろよ」


薬草学担当のレオ・ベラルディは説明を続ける。低い声で淡々と。


「じゃあまずは、薬草学の本を見ながら、その名前と効果を知るように。では、初め」


レオがパンッと音を立てると、アルベールのクラスメイト達はゾロゾロと動いていった。


「なぁ、エイダン」

「なんだ?」

「この薬草ってなんて言うの?」

「あー、それはな………」


エイダンは薬草学本を開き、アルベールが指さした薬草を調べていた。


大魔導師アーベルの時は、薬草とかってほんとになかったな。貴重品だったし)


アルベールもその薬草を調べる為、本を開きながら、昔を思い出す。


(まぁ、色々と変わったって事でしょ。1万年後より草木が生え、古代の魔法科学者達が色々としていったから、今があるんだろうな)


推測しながら、ひょっとする出来事、と言うのを考えながら、授業を受けていた。風は穏やかな風が吹き、もう七月ユーリウスの季節とは思えないほどの陽気さ。まるで四月アプリーリスに吹く春の陽気のような感じだった。


(………ん?)


穏やかな風が止まったと思ったら、吹き荒れる大きな風が吹き始めた。そして地面には大きな影がアルベール達を覆い被さった。


「なんだ……?」

(………………!?)


上を“飛んでいた”のは、赤い羽を羽ばたかせながら、鱗のようなのが太陽の光に反射され、尻尾が長く、トカゲのような見た目。俗に言うドラゴンだった。


「なっ………!」


アルベールは度肝を抜かれた。どうしてドラゴンがいるのか。と。


「………………!今すぐ帝国内に入れ!!」


レオの悲痛の叫び声で、クラスメイト達は、大急ぎで帝国内に入った。


(なんで、ドラゴンが………)


帝国内にある貴族の紋章として、ドラゴンが描かれいる家柄がいた。なにやら、ドラゴンを使い魔としているとか。


「………!?人が………乗っている………だと?」


ドラゴンの上には、見えづらくとも誰かが乗っているのが、視認できた。だが、ドラゴンはアルベールがいる方向まで急接近。


「………まずっ…!ぐうっ!!」


ドラゴンが地面に急接近し、羽ばたかせる羽から放たれる暴風にアルベールは巻き込まれ、体が宙に浮き吹き飛ばされた。


「ぐっ!!」


帝国の壁に背中から思いっきり打ったため、体から力が抜けるように、落ちていった。


「ぐっ、一体………、誰が………」


体全身に痛みが走り、確認しようにも、アルベールはそのまま目を瞑ってしまう。周りから聞こえてくる声が、徐々に聞こえなくなっていく。つまりは、気を失ってしまったのだった。





彼は、夢を見ている。懐かしき記憶を。


『なぁ、未来ってどうなってるんだろうな』


どこかで誰かと話していた大魔導師アーベルは、この時はまだ十代だった。純粋を持ち合わせて、魔法の力なんてない。そんな頃。


『さぁな。まぁ、でも。もし未来が今よりももっと光り輝いていたら、ものすごくいい事じゃないか?』


『ハハッ、そうだな。確かにそうだ。きっと、もっと進んでいるだろうな。今よりも』


風が吹き、自然に囲まれ、木々に囲まれ、そう呟く。だけど、これが古い記憶であることを、見ている彼は知らない。


『また会おうな。未来でも』


———え?誰だ?


「———い、———おい、———ベル、アルベール!!」

「んぅ……?」


彼のよく知る人物の声で、夢から覚めた。目を開けると、そこは外ではなく、見知った場所だった。白い天井が見え、そこから見知った顔がアルベールを覗き込む。


「あれ、ここは…?」

「医務室だ。大丈夫か?」

(あぁ、あの後気を失ったんだ………)


さっき見ていたのが、現実ではなく夢であったことを、自覚した。学院内にある医務室にあるベットに体を預けていた。さっきのが全部夢であったことを知り、無意識に天井に手を伸ばしていた。


「………どうしたの?」


アルベールを心配そうに、見下ろしていたのは、エイダン、ライアン、クロード、そしてディランの四人だった。

クロードから優しい口調で言われ、アルベールは天井を見たまま、聞いた。


「ねぇ、あの後どうなったの?」


体を起こし、四人に聞くと、全員苦い顔となった。


「あの後な、多分お前も見たと思うが、ドラゴンの上には誰かが乗っていた。そいつは今日休んでいたヘルツァンバイン侯爵の令息だったそうだ」

「………!?ヘルツァンバイン侯爵家の!?」

(確か、ヘルツァンバイン家の紋章は、ドラゴン!つまりは………、いや。確信までとはいかないが………、おそらく)


ヘルツァンバイン侯爵家の紋章はドラゴン

古き時代にドラゴンを倒した事で、加護を受けたヘルツァンバイン家は守り神として、ドラゴンを紋章を描き、今でも続いていく。

言い伝えの一つだ。(それぞれの貴族の家系には、言い伝えが存在している)


「確か、ヘルツァンバイン家に伝えられる言い伝えは………!」

「………!?ドラゴンの………使い魔」

「………!おい、まさか………」

「って事は………」

「その可能性がありそうだね………」


受け入れがたかった。

自分たちのクラスメイトから、そんな奴が出てくることを。その後は、医務室の先生が来て、

「外傷はほぼ無かったわ。日常生活にも支障はきたさないみたいだから。よかったわね。もう帰っても大丈夫よ」

と言っていた為、アルベールはみんなと共に、教室に戻り、放課後になった後は、男子寮に帰る。


(………確か、ヘルツァンバイン侯爵家に言い伝えられているのは、“ドラゴンを操る事のできる”だったはず………。じゃあ、あの時、なんでドラゴンが現れたんだ?別に帝国内はいつも通りだったし、誰も死人が出ていなかった。なら、なんのために、なんでそんな事をやったのか……)


寝る直前、ベットに横たわりあれこれと考える。だが、いい答えは見つからなかった。

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