11話 巨大魔獣
アルベールが、学院を抜け出し、魔獣の大群と戦っている同時刻、別の場所で魔獣の報告がされたいるところでは、
「ぐわぁ!」
「ぐぅっ!」
「狼狽えるな!我々、騎士一同は国のために戦う!そう誓ったはずだ!!」
第一騎士団、団長であるアンドレア・ケルンシュトクは部下である騎士兵達に大声で叫び、やる気を無くさなかった。
「ぐぅっ!」
騎士団達が戦っているのは、目の前にあるキマイラ、第二騎士団の方では、ミノタウロス、第三騎士団ではケルベロスが出現していた。
「くそっ、なんて強さだ!」
キマイラは口から火を吐き、あたりを焼き尽くす。
「あづぁ!」
高温で焼ける火の壁は、空に向かって大きくなっていた。
(くそっ!一体、何がどうなってんだ!?)
アンドレアはただ、成せるがままだった。
「団長!」
「どうした!?」
「帝国の外側で火の雨が!」
「何!?」
アンドレアは部下が言っていた、帝国側の方を見た。
「………何もないぞ」
「東側です!」
そう言われた通り、東側を見ると、確かに火の雨が降っていた。
「な、なんだあれは………」
東側で何が起きているのか、ここにいる騎士団達はただ見ているだけだった。
同時刻。第二騎士団の方では、牛頭人身であるミノタウロスと戦っていた。
「くそっ!あの斧が邪魔だ!」
ミノタウロスの武器である、斧。その大きさはデカく、騎士団にとっては致命的だ。
「どうしますか!?やはり、弓兵を派遣すべきでは!?」
「弓兵は第三騎士団に向かわせた!今更は無理だ!」
(それに、弓兵を連れてきたとしても、あの斧で塞がれる……。それなら、今のままの体制の方がいい………。だけど、もしこのまま戦いが伸びれば、全滅となりうる可能性がある。一体、どうすれば………!)
第二騎士団、団長であるオリバー・デュクロクは焦燥感に駆られていた。
「オリバー団長!東側に何か!」
「何?………………!あれは………」
オリバーも、東側に降っている火の雨に気付いた。
「なんなんだよ、あれは………!」
状況が状況だ。冷静になれないのも、無理はない。
「………!もしかして!」
オリバーは一つの可能性に気づいた。
(もしかしたら………、いや。もしかしなくても、あれは人が出した魔法だ!)
東側に起きているあの火の雨。誰かが出した魔法だと、オリバーは判断した。
「よし、ならば。我々も目の前にある魔獣を倒すぞ!」
「は、はい!」
オリバーの意気込みで、騎士団達は活気にあふれていた。
同時刻。第三騎士団では、地獄の番犬であるケルベロスと戦っていた。
「ぐわぁ!」
「くっ、大丈夫か!?」
ケルベロスの噛みつき攻撃で、戦闘不能になる騎士も少なからず居た。
「くそっ、一体どうしたらいいんだ!」
こちらも冷静な判断が出来ないほど、敵に追い込まれていた。
(くそっ、引くわけにはいかないのに………!)
第一騎士団、第二騎士団より、第三騎士団に所属している騎士達は、戦闘不能になっている人たちが、結構な数で増えていく。
「こんな時にあいつがいれば………!」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ!ともかく、俺たちでこいつを倒さなければならない!!」
第三騎士団、団長である、ジュール・ヴェルガーニは、“諦める”と言う言葉を頭の脳裏に浮かぶことはないほど、諦めが悪い人物だ。
「団長!東側が………!」
「何?東側がどうした?」
部下の人にそう言われ、ジュールもその方向を見た。遠くの方に火の雨が降っていることを。
「な、なんだあれは!?」
東側で何が起きているのか、予測もつくことができない。
そして、そこから数十分が経った時、アルベール達の後ろから、エイダン達がやってきた。
「おい!無事か!?」
「エイダン、ライアンも」
「クロードもなんでここに?」
「二人が心配だったから。それよりも、先生達が言ってたよ。帝国内に魔獣が発生し、そこに騎士団が行ったってこと。目撃情報では、その魔獣は……」
「第一騎士団が戦っているのは、キマイラ。第二騎士団が戦っているのは、ミノタウロス。そして、第三騎士団が戦っているのは、ケルベロスらしい」
「その三つのうち、ミノタウロス、ケルベロスがなぜ、地獄からやって来たのかが、定かじゃないらしい」
「なるほど。ともかく、行った方がいいのか?」
「あぁ、だいぶ苦戦しているらしいからな」
アルベールの問いに、エイダンが答えると、苦虫を噛み締めたような、顔つきになった。
(三箇所に魔獣が出現している。ここにいるのは、俺合わせて5人。1、2、2じゃないと無理そうだ………)
おそらく、怪我人が多くいる。そのため、治癒魔法をかけないとまずい。アルベールはそう考えた。だが、ここにいるのは、彼以外、治癒魔法を使うことはできない。
「なぁ、治癒魔法をかけれるやつって、いる?」
ダメ元で聞くも、全員首を横に振った。
(ダメか……)
「そうだ………。治癒魔法をかけれなくとも、治癒薬がある!」
「………!それ本当か!?」
ライアンの一言で、アルベールは勝算の余地を考えた。
「どんなタイプのだ!?」
「え?これだよ」
革袋から取り出したのは、色が赤色の瓶に入ったものだった。
「いつのまに………こんなのを?」
「ほら、昨日調合したじゃん。それに、俺こう言うの得意なんだよ」
「あ、そうか!ライアンは調合、薬を作るのが得意なんだ!これを使えば………」
「だけど、それをもし怪我してる人が多かったら」
「あ、そうか………」
「………………考えてる時間はなさそうだ。とにかく、得策ではないが、出来る限り、倒れている人にその治癒薬を飲ませ、戦力を増やす!そして、早く倒し終わり、急いで病院に連れていく。それしかない」
「………………っ」
アルベールの作戦は、得策じゃないことを、彼自身知っている。なぜなら、下手したら死ぬ可能性も出てくるからだ。それを考慮した上で、みんなに伝える。みんなも渋々な顔となった。
「もちろん、下手したら死人が出る。それか………」
「広範囲魔法………」
ディランが口を挟んだ。彼らの視線はディランに向けられる。
「どう言うことだ?」
「なぁ、アルベール。お前の広範囲魔法で、回復する事はできないか?」
「範囲がどれくらいか分からない」
「………………クロード!その敵が出現している位置はどこだ?!」
「え、えっと、ここが今現在の目的地。第一騎士団がいる方向は、帝国側の右。第二騎士団が帝国沿いの壁際。第三騎士団が、ここから近い………ここ!」
「なるほど。つまり、ちょうど………」
三角形となっていた。
「これなら、俺の魔法が届くかもしれない……」
「ここから行けそうか?」
「行けるか行けないかじゃない。やるか、やらないかだ」
早速準備を整え、行く場所も決めた。エイダンとライアンが第一騎士団、クロードとディランが第二騎士団、そして、アルベールはここから近い、第三騎士団の方へ。四人があったのを確認し、アルベールは右手に持っていた杖を空に掲げ、治癒魔法の詠唱を唱えた。空いっぱいに、ピカリ輝く何かが、落ちていき、倒れている人たちに、光が包む。
「よし、俺も急がないと!」
急いで、第三騎士団の方へ、走って行った。




