9話 由緒正しい血筋
夜、20時ぐらい。アルベールは男子寮にて、魔法の基礎勉強をしていた。
「んー………」
「分かるかい?デイヴィスくん」
「え?あ、いや。ちょっとややこしいところがあって」
相部屋であるディランが彼の後ろから、覗き込む。
「あぁー、数式のね。確かにこれは難しいね」
「分かる?」
「いや、僕もこーゆう系統は苦手だね。うーん、これはクロードが得意だったからな」
「流石にこの時間帯で女子寮には無理だよ」
「そうだね。それって明日提出?」
「うん。他の課題は終わったんだけど、これだけはどうしようもなくてね」
「なら、もういっそのことそのまま出せば?」
「嫌だよ。罰下される」
アルベールは庶民のため、特待生席でこの学院に入学できた。成績が落ちたりでもすると、かなりのまずさ。今期、学院ではテストが行われる。実技と、試験。実技では、魔力制御や、魔法の得点で実技は決まる。だが、試験では魔法理学や魔法数学などが、出現され、アルベールはその二つの理系が苦手であった。
(あーあぁ、大魔導師としては魔法理学や魔法数学も無かったのにな)
これが時代の流れと言うのが、深く分かる。
(まぁ、自分で決めたんだもん。やらなきゃだよなぁ)
「そういやさ、アヴェリーノくん」
「ん?どうかしたの?」
「アヴェリーノくんのクラスではどうなの?」
「………と言うと?」
「うーん、なんて言えばいいのかな。アヴェリーノくんのクラスにさ、黄緑色の髪の子と、紫の髪をした子」
「あー、あの二人か。あの二人に手を出せば、それは人生の終わりを指すよね」
「え、何か知ってるの?」
「うん。あの二人をいじめてた人たち、夕方には家に連れ戻されたそうだ」
(夕方ってことは、あの出来事が終わった後ってことか………)
「ほんと滑稽だよね。まさか、ユスフリカ王国の第一王女と、第二王女に手を出すんだもん」
(そりゃあ、王家の娘をいじめたら、そうなるだろうな)
アルベールは頷けた。なぜなら、第一王女、第二王女をいじめると言うことは、ユスフリカ王国を侮辱するのも同義のことであった。
「デイヴィスくんは会ったことあるの?あの二人に」
「今日の昼食を食べに行こうとしたら、たまたま見ちゃってね」
「だからか」
アルベールが昼頃を思い出しながら、そう言うと、ディランは何やら思い当たることを言った。
「え、何が?」
「僕のクラスで話題になってたんだよ。ユスフリカ王国の王女たちと一緒にいる人を。なるほど。つまりは、君は………」
「俺はただ、仲裁に入っただけど?」
「知ってるよ」
まさかの答えに、アルベールは驚きを隠さなかった。
「どう言うこと?」
「君がそんなことをする奴じゃないってことは」
「ふーん………そう」
ドギマギするものの、なぜか嫌な気分じゃなかったとの事。
そして、翌日。アルベールは制服を身に纏い、鞄を背負い、男子寮から出て校舎内の方に歩くと、女子寮の方から、例の王女二人が楽しそうに笑いながら、歩いていた。
(昨日、あの出来事が起きてから、図書館で調べだら、ユスフリカ王国の王家。ユスフリカ家の紋章だったか。あまりに珍しいから、思い出すのに時間がかかったな)
アルベールは二人を見ながら、昨日のことを思い出す。ユスフリカ王国の紋章、及びユスフリカ家の紋章はペガサスの紋章だ。初代国王の娘がペガサスを手名付けた。と言う諸説ありの言い伝えで、ユスフリカ王国及び、ユスフリカ家の紋章はペガサスとなった。
(紋章がペガサス…。他の紋章でもドラゴンとか、ライオンとか、そーゆう類だが、ペガサスのような奴は、初めて見たからな。まさに由緒正しき血筋。と言うわけか)
1万年後の世界で、最も由緒正しい血筋が存在する。
ユスフリカ王国、ユスフリカ家、紋章。天馬。
西側に位置するリルメス王国の、リルメス家、紋章。鷲獅子
レーイルダ魔導帝国、レーイルダ家、紋章。一角獣
この三つが最も由緒正しい血筋。と言われている。
(ともかく、あの二人に手を出してしまったら、人生の終わりだな。それはそうと、王国の王女たちが護衛なしで、中央国であるレーイルダ魔導帝国ヘやってくるか?)
王女ともなろう二人が、護衛なしで帝国に来るのが何よりの、疑問であった。
(まぁ、考えても仕方ないか)
なんて思いながら、王女達二人を追い越すかのように、早歩きで行くと、声をかけられる。
「ねぇ、デイヴィスくん」
「え、えっと………、なんでしょうか?ユスフリカ王国、第一王女」
「知ってたの?」
「まぁ、胸元にある紋章を見ましたから」
「あぁー、この天馬の紋章を。昨日は助けてくれてありがとう」
「デイヴィスくんのおかげだよ」
「いえ………。えっと、そんな王女様達が、庶民である俺に何の用ですか?」
「お礼したくて」
第一王女が、鞄をゴソゴソし、中から何かを取り出す。
「はい、これ。我が家の紋章入りの魔力石の腕輪」
「え!?」
唐突すぎて、狼狽する。
「これをつけてると、厄災から身を守ってくれるよ」
「いやいやいや!そんな王家の大事なものを!ただの庶民である俺に!?」
(そんな大事なものを庶民に……って。俺大丈夫?命狙われない?………!そういや、何かの本で見たぞ。確か、東の国、ユスフリカ王国に伝わる言い伝え………。何だっけ………)
「やっぱりダメ?なら、別のものにするよ。何がいい?」
「え?うーん」
腕を組み、数分悩みまくり、答えを見つけ出す。
「名前………。名前を教えてください」
「「名前?」」
シンクロするように、二人は首を傾げた。
「はい。クラスは違えど、また会うかな〜。と思いまして」
「分かった。それでいいのなら、容易い御用だよ。私は、イネス。イネス・ユスフリカ。でこっちが………」
「私は、リナ・ユスフリカ。よろしく」
「はい。よろしくお願いします。俺はアルベール・デイヴィス」
「そんな畏まらなくていいよ。ここは王国じゃないんだし」
「いやいや、庶民の出身である俺が、他国の王女様方と容易く喋るなど、恐れ多いです」
(いくら、俺が元大魔導師であろうと、王家は王家。それには変わりない。そして、今じゃ庶民なんだ。立場はわきまえないと)
今じゃ、大魔導師ですら無くなった彼は、庶民の息子として生まれ変わり、1万年後の世界に生まれ変わった。そのため、色んなことが変わりつつ、ある中、貴族や、庶民の間の境界線には、常に慎みを入れなければならない。と、アルベールは考えていた。
(ましてや、国王の娘。ユスフリカ王国の宝と呼ばれているんだ。そんな人たちとこうやって話せるだけで、貴重な時間)
ユスフリカ王国では、生まれてきた子供の髪の色に合わせ、宝石を贈る。と言う風習的なものがあった。そのため、王国ではユスフリカ王国の子供は“宝石のように輝く”と言う意味で、“国の宝”と呼ばれている。
その為、イネス・ユスフリカの髪色は、黄緑色。そして、イネスが首につけているネックレスの石は、グリニッシュブルーと言う宝石だ。。そして、リナ・ユスフリカが腕につけているブレスレットは、ヴァイオレットサファイア。
(そして、目の色にも関係してある…!)
ユスフリカ王家には、なんの因果か左右の瞳が違う。噂では“呪い”と言われているが、定かではないのは確かだ。
第一王女であるイネスは、右が緑、左が黄色だ。
第二王女であるリナは、右が赤、左が青だ。
そして、イネスの瞳の色を合わせたら、黄緑色。
リナの瞳を合わせたら、紫色となる。
(二人の髪の色は、一色の色が混ざった色。なら、それで色が分かれ、瞳の色が左右違う……のか?)
ただの噂だ。だが、ユスフリカ家は確かに瞳の色が違うらしい。
(まぁ、俺には関係ないよな。ユスフリカ王国には、行ったことないし。大魔導師(アーベルの生きてた時代では、ユスフリカ王国という王国は、存在していなかったし)
その後は、アルベールは二人と一緒に歩き、人の注目を浴びた。




