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4、

 

 

「さらにさらに!」


 え、まだあるの?

 帰ろうとする私にそれを止めるモンディウス。それを尻目に、まだローディアは話を続ける。


「いつまでも学園を辞めようとしない私に業を煮やしたのか、先日……ついに!」

「ついに!?」


 涙どこ行った。

 パッと乾いた顔を上げ、右手を胸に左手を天に伸ばすローディア。それに合いの手を入れるはモンディウス。


 いいコンビですね。


「ついに、階段から突き落とすという暴挙に出られました!」

「おおお、なんということだああ!!!!」


 言い終えた二人は、その場でゼーゼー荒くなった息によって肩を揺らしながら、私を見た。


 そして二人揃って、ビッと私に指をつきつけてきたのだ。何それ流行らしたいの?


「以上だ、公爵令嬢リアナ=ローリング!このような悪逆非道な行い、神も王家も許さぬ!よってお前は今日より公爵令嬢ではない、ただのリアナとして生きていけ!これは命令だ!!」

「──だから?」

「へ?」

「だから、なんなの?」


 自分でもこんな冷たい声が出せるとは思わなかった。そんな冷え切った声で、目で。私は二人を見て、そして会場中に視線をグルリと巡らした。


「──皆さま。私はこれからただのリアナとして生きていきます。王太子妃、更には後の王妃の予定だった公爵令嬢リアナ=ローリングはもう何処にもおりません、宜しく~」


 そう言って、私は軽く会釈をして。


 その場を後にしたのだった。


「待てリアナ!潔く去るのは褒めてやる!だが出ていく前にローディアに謝れ!」

「────は?」


 扉に向かって動いていた足を、私は一度止める。振り返った先にはなぜか蒼白の顔のモンディウス。

 だがひるみつつも、彼は声を絞り出す。


「だ、だから、ローディアに……」

「何を?」

「え?」

「何を謝れと?」


 冷たい、冷たい声で言えば。


 モンディウスはそれ以上何も言えなくなったようで、その場で立ち尽くす。


 けれどローディアはひるまなかった。


「酷いですわ、リアナ様!あんなに私の事を虐めたのに!」

「だから?」


 虐めたから、何?


 そう問えばローディアも一瞬言葉に詰まる。が、彼女はモンディウスのように怯むことはなかった。


「謝って下さい!貴女も元は公爵令嬢。それくらいしてから去るのが礼儀というものでしょう!?」

「礼儀って……」

「私は本当に恐くて悲しかったんです!」


 その言葉に、完全に私の心は冷えた。


 だから、今日一番の氷の声と目で、ローディアに言うのだった。





「だから?」






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