031 「外伝・戦後日本経済・補足(1)」
(※これ以後は、最終話までほぼ設定資料。また、舞台裏・メタフィクション視点となります。)
●大前提:
・第二次世界大戦の主要戦勝国。
・1930年代、第二次世界大戦中に経済的に大きく成功。
・空襲など戦災での過去に蓄積された資産の喪失がない。
(史実のように全員が貧乏にならない)
・既得権益の勢力が強い。
・格差、貧富の差がもかなり大きいまま。
・戦前の日本と似た状態が、戦後も長らく続く。
・第二次世界大戦後の国民への褒賞で、ある程度の民主化が進む。
・第二次世界大戦後の民主化、政治改革は、史実と比べるとかなり限定的。
・GHQによる公職追放のような、人材の追放と連動した人材の刷新と若返りが起きない。
・共産主義を始めとする左翼勢力、特に極左は徹底的に排除、弾圧され続ける。(特に東西冷戦時代)
・植民地(朝鮮、限定的に満州)を抱えたままなので、経営コストが地味に財政的な負担となる。
・資源、特に食料は満洲、朝鮮から手軽に入手できるので、政府による人口抑制政策はない。
・国家予算、経済成長は、巨大な軍事費が常に足枷となる。
(ただし、欧米先進国の平均程度)
・要するに、史実と比べるとプラスよりマイナスが大きい。
●国民所得(=GDPもしくはGNP):
・前提:
・第二次世界大戦終了頃から世界的には先進国の扱い。
・第二次世界大戦終了時点で、史実の1960年頃と同程度の国民所得(=経済力)がある。
・結果:
・史実のような奇跡の復興、高度経済成長は起きない。
・劇的な経済成長、所得の向上はない。
・1973年頃までは、相応の経済成長を続ける。
・オイルショック後しばらくは、旧態依然とした制度疲弊の限界、人材交代の慢性的停滞、多額の軍事費などの影響で大きく低迷。
・一部分野では機械(設備)の老朽化、旧式化、低効率な状態のままな点からも停滞の原因となる。
・ベビーブーム、人口拡大のみ、史実と同等か多少多い。
・戦後の成長:
・この世界の1970年代の日本経済は、GDP、長年の資本蓄積はともかく成長という面で史実より2〜3割弱くなる。
・停滞期の1970年代、80年代の一人当たりGDPは、先進国中で下位のイタリアと同じ程度。もしくは若干下回る。
・一人当たり所得ではギリギリ先進国。アメリカ以外の他の先進国より大きな人口と軍事力、それに衛星国(満州、韓国)のおかげで大国の地位は何とか維持。
・国内開発、社会資本整備も、資金不足や経済発展の度合いから、史実ほどではない場合が多い。
・史実での1970年代、80年代で行われた派手なインフラ整備の多くは、この時期に工事が行われない。
・また史実と違い都市部は空襲を受けていないので、古い町並みのまま。開発、区画整理が遅れている。
・反面、史実の戦後のバラック、急増建築のようなものがない。
・大都市中心部の、戦後にできた過密な区割り、狭い街路といったものがない。
・平成以後:
・昭和最後の政治改革、冷戦崩壊による軍事費削減などで、経済は大きく上向く。
・次の経済成長、所得向上は1990年代、2000年代。史実に並び、そして超える。
・史実の昭和後半にあった社会資本整備、都市の再開発など、景観の変化が一気に進む。
(史実での中韓など近隣の経済成長が因果している。)
・21世紀に入る頃には、おおよそ史実と似た情景となる。
●産業全般:
・1980年代、90年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、「ハイテク・ジャパン」にはならない(なれない)。
・東西冷戦時代は、軽工業以外でアメリカへの輸出は史実より弱い。
・グローバルな貿易を促進する要因のコンテナ輸送システムは戦前からあるが、1970年代までの日米の労働コスト差、為替の差が史実より小さいなども原因となる。
・史実での敗戦による日本社会全体でのリセット、リスタートのような状況にないので、制度疲弊、構造改革の遅れ、何より史実戦後にあった人材の新陳代謝促進が無い、などが大きな要因。
(主人公一人ではどうにもならない。いや、マジで)
・貿易摩擦は、日米間よりも史実より大きな経済力(国力)を持つドイツとの米独間がひどくなる。
(ドイツが最初から統一ドイツ状態の影響。)
・逆に日本は、資源の自前(主に鳳グループ)による供給、近隣(主に満州)からの食料の確保で、アメリカへの経済依存度が史実と比べるとかなり低い。
・日本が経済的に自立しているのもあり、アメリカは日本に対して史実ほど市場を開かない。
・技術全般:
・主人公の未来の概念の持ち込み、一部技術情報の持ち込みにより、一部の技術は史実より先に発展。
・だが、全体としては大きな変化には至らないと想定。(歴史の因果や修正力も影響。)
・史実のような日本の昭和後半の発展がないので、昭和後期から平成初期の技術発展は一部停滞する可能性が高い。
・一例として、90年代の携帯端末の開発、特に小型化の流れが遅れる可能性がある。
・地下資源:
・北樺太、尖閣の海底油田、ガス田を大規模に採掘するが、日本の消費の最大で10%程度。大半の時期は5%を賄う程度。
それでも、ないより遥かにまし。
(尖閣は30億バーレル程度の埋蔵量と想定。)
・満州の石油や石炭は、自国消費で消えて徐々に輸出されなくなる。
・他は史実と変わらず。
・中東の石油、豪州の各種鉱産資源の採掘を手広く行うが、供給こそ安定するが国際価格があるので極端に有利にはならない。
・農業:
・国内農業は史実より資本集約、企業化が進む。
・それでも自給率は史実より少しマシな程度。
・樺太全島を有するが、寒冷な気候なので農業では殆ど役には立たない。
・南洋諸島の砂糖は焼け石に水。
・台湾は人口拡大により食料需給面ではむしろ足かせ。
・満州は、早期に大規模な資本集約型経営の大豆とトウモロコシの畑だらけになる。
・順次、各種麦、米の栽培が広がり、開発の進展、技術向上も重なって食料生産力は順次増加。
・史実では満州での稲作栽培の本格化は1980年代からだが、この世界では日本国内北部での稲作の進展と並行して栽培が進む。
・この地域の農作物を日本(と朝鮮半島、中華民国)が購入。
・日本と極東に対するアメリカの食料コントロールは、史実と比べると大幅に減少。
・なお史実(我々の世界)では、中華人民共和国の食糧生産の約4分の1を旧満州地域が担っている。(3億5000万人分?)
・満州から日本に「大豆」が供給される為、ブラジルでの栽培が遅れるか長らく栽培されない。
・大豆はアメリカでは植物油や飼料として戦前(1919年)から栽培されているが、史実では1973年に輸出規制し、日本の政策(供給地の多様化)でブラジルでの栽培を日本がプッシュした。
・この世界では、アメリカからの輸入もブラジルでの栽培も必要性が薄い。
●政治改革:
●第二次世界大戦後:
・戦争貢献に対する国民への褒賞という形で、一定程度の民主化が進められる。
また同時に、戦時に臨時制定されたものを含めた、各種労働法、物価安定の為の法律を恒久化。
・婦人参政権は、第二次世界大戦後に認められる。
・主な理由は、国民に戦勝の褒賞としてばら撒くお金がないので、その代替手段。
・一方で共産主義、社会主義の傾向が強い政策は、行われないか限定的となる。
・戦争での散財でお金がないので、富裕層、特権階級への税制が大幅に強化される。これで経済面での平等、ジニ係数の改善がかなり進む。
・だが、どちらも史実ほど極端ではない。史実の第一次世界大戦後の英国並か多少緩いくらい。
(累進課税が最大9割、相続税が最大5割とかはない。)
・また貴族院がそのままなど、旧態依然としつつあった状態はそのまま残される。
・主権者も天皇のまま。
・大日本帝国憲法、教育勅語も内容に大きな変化はない。
・国民の意識面(補足):
・なお第二次世界大戦は、日本にとって史実のような厳しい戦争ではないので、戦争中の天皇の神格化などは起きていない。あってもごく僅かに止まる。
・天皇及び皇族は、敬うものであって崇めるものではない。
・軍国主義的側面もほぼ見られない。見られても戦争中限定。
・戦争は遠くで兵隊がするもの、で終わる。
●社会保障:
・戦争遂行の為、戦時法として、国民の生活の維持・安定という面から整備が進む。
・戦後はその多くを、国民への褒賞という形で恒久化する。
・ただし、日本全体で史実でのGHQ(の左派)による強制的な改造がいないので、共産主義、社会主義的政策には一定の距離がある。
・日本国内の左派の急進的な者は、永遠に塀の向こう側暮らし。左派の思想が国民の間に広がる事もない。政治的にも強く規制される。
(日教組のような組織も、社会主義的ではなく保守的なものになる。)
・この影響もあり、社会主義的な政策は史実ほど充実しない。
・社会保障のうち、年金制度は史実程度に構築される。
・各種労働法は、史実より少し弱い程度で作られる。
・国民皆保険制度は1950年代に導入。しかし史実ほど徹底、充実せず。
・1980年代に人口拡大の鈍化が始まる。
・少子高齢化は四半世紀ほど後ろ倒し。2020年時点でも人口は微増中。
・補足・戦後の健康被害・薬害
・戦後の「四大工業病」は発生していない。
・それでも大気汚染とそれに連動する喘息は起きているだろう。
・水質汚染も同様。
・それ以外も人災(特に薬害事件)はある程度先回りで防ぐ。
・この世界では問題は発生しない事になる。
(下記が主な薬害だが、主人公が覚えている範囲で警鐘を鳴らす程度かもしれない)
・アスベスト(石綿)
(欧米だと戦前にアメリカ、ドイツが使用禁止を命じている)
・サリドマイド事件(1960年代)
・薬害エイズ(1980年代)
・薬害肝炎(1980年代)
・子宮頸癌ワクチン(HPVワクチン)(2013年)
●昭和の最後の改革:
・オイルショック(1973)による大規模な不景気を契機に、政治、行政の大規模な構造改革、組織の若返りを実施しようとする。
・史実の田中角栄内閣に当たる内閣が主導(「日本改造」?)。
しかし既得権益の抵抗が強く失敗。内閣は疑獄で総辞職。
ただし、その後の政治改革の道標となる。
・第二次オイルショック(1979)で、再び改革の機運が高まる。
・大規模な行財政改革は、状況が本当にどん詰まりになった1980年代前半の内閣(中曽根内閣?)で実施。
・大規模な憲法改正、政治、行政改革、省庁再編、貴族院の解散と参議院の設置など、ようやく史実の状態に近くなる。
・天皇の主権は大幅に制限され、事実上の在民主権になる。
・しかし大日本帝国憲法自体は根本的には変わらず。
・憲法、教育勅語は、時代に応じて読みやすく変化する可能性がある。
●外交戦略(冷戦時代):
・北東アジア地域での地域覇権国家の維持、運営が基本。
・主な仮想敵はソビエト連邦ロシア。
・日本は早期に核開発し、十分な核軍備と通常戦力を背景にほぼ独自の安全保障体制を確立。
・北東アジアの盟主を自認。
・自前の利権のペルシャ湾岸油田、世界各地の鉱山利権を保持。
・満州が食料供給地域であり続ける。
・アメリカとは同盟国、友好国だが、一定の距離がある。
・大陸中央(中華民国)がアメリカの勢力圏なのが、日本は気に入らない。
・満州の問題もあるので、中華民国との関係も常に微妙なものとなる。
・国際連合の常任理事国(五大国の一角)。
・だが政府も国民も、国連にあまり期待していない。
(常任理事国なのに意に沿わない事ばかりが増えていく為。アメリカ人の感覚に近い。)
・ソ連の脅威が間近にあるので、戦後は一貫して西側陣営として振る舞う。
・共産主義、社会主義と非常に敵対的。
・満州、朝鮮を、各地域独立後も勢力圏、影響圏として維持。
・満州、オホーツク方面を中心にした防衛戦略。
・満州には大軍を駐留。
・史実と違い在日米軍はないので、日本国内のアメリカ人は少なく、親近感も史実ほどにはならない。
・近隣の米軍は、フィリピン、グァム、そして中華民国に駐留。
・これらの要因により、アメリカの制御は史実ほど受けない。
・アメリカに対しては一定程度の距離を置く。
・ただし、日本が自前の利権で石油を手に入れても、石油はドル決済になるのでドルは必要。
・元売りではなく採掘なので石油価格は史実より緩和されるが、経済に大打撃を受けるのは自明。
・アメリカは史実ほど日本に市場を開かない。
・1970年代、80年代は史実ほどの経済成長がないので、アメリカの国債を買う余裕がない。
・赤字化するアメリカ経済は、西欧諸国とアラブ諸国が支える。
・アメリカは史実ほど国債を出せないかもしれない。
・日本がアメリカ国債を買うのは1990年代以後。
.。゜+..。゜+.玲子の部屋.。゜+..。゜+
お嬢様「これを見て何を話せば良いのやら。……というか、だいたい一巡した?」
シズ「はい。まだの方はご辞退されました」
お嬢様「ほかの側近達は?」
シズ「皆、畏れ多いと」
お嬢様「そんな席でもないのに。それじゃあネームドは?」
シズ「皆様ご辞退されました」
お嬢様「そりゃそうか。じゃあ後は、私の子供達とか?」
シズ「皆様ご存命です」
お嬢様「それじゃあシズ、誰かが顔を出すまで少し話しましょうか」
シズ「畏まりました。では一つ質問が」
お嬢様「なんでもどうぞ」
シズ「戦後のことを長々と見て参りましたが、戦前についてもこのようなものがあるのでしょうか」
お嬢様「おっ、メタ視点の発言」
シズ「いけませんか?」
お嬢様「ううん。いいんじゃない。なんでも、もっと沢山あるらしいよ。それに歴史年表みたいな、長ったらしいプロットとかも」
シズ「見る気も失せますね」
お嬢様「うん。けど、これもあと10回ぶんくらいあるそうよ、設定マニアよね」
シズ「まったくですね」




