<心眼>
偽でなければ真でもないです
...ふむ、ふむふむ。
頭の上で寝ていたメェーちゃんを持ち上げ、胸の前で抱きしめる。
やはりいつも通り可愛い。だがその正体は神話生物の中でもかなりやばいやつ。
で、ここまでやってから返答を行う。
「あー、まあ、そうですね。僕、<魔王>です」
「意外とあっさり告白するのね。抵抗とかはないのかしら?」
とか言うメアリーさん。抵抗されることを求めていたのか。
だけど...
「まあ、本気を出せば負けることはないでしょうし」
そもそもメェーちゃん達の本気を引き出せるかは別としてね。
「それに、僕を探す<クエスト>を受注した<勇者>達も既に僕が<魔王>であることは知っていますからね」
情報セキュリティがガバガバの世界です。何で敵にばれているんですかね?しかも全然襲ってこないし。
僕単体と戦ったら確実に<勇者>の勝利に終わると思うんだけどなあ...メェーちゃん達は別として。
まあでも戦わないに越したことはないからね。うん。
なんて考えていると、
「え!?<勇者>はわかってて一緒にいるの!?」
と驚いた様子で話すのはアナさん。そんな驚くことでも......あるか。
「一応街に帰って深い怪我を負った<勇者>3名を助けるまでの停戦条約みたいなものですけどね」
完全に味方になったわけではないし、そんなことできるわけがないと思う。
彼らは<勇者>、僕は<魔王>。おそらくだけど、<勇者>達は僕の話なんてこんな緊急事態でなければ聞いていなかっただろうと振り返りながらそう思う。
だってまあ、あのコウモリ<魔王>を倒した後の歓声はとんでもなかったからね。たった数秒ではあったけど、世界中から<魔王>が敵として扱われていると言うことが少なくともあれでわかったわけで。
...もしかすると、マナお姉様のお父さんお母さんを殺したやつに対する感情は、マナお姉様のお父さんお母さんという味方を殺されたからなのかもしれない。1000人に聞いて999人は敵と答えるであろう、<魔王>の味方を。
ぐっ、と人形を抱きしめる力を強くしてしまう。顔は見ていないけど、絶対に.........
「...そ、そういえば。私の旧友からの依頼で君を探しに来たんだけどね?」
段々と空気が重たくなる。それに気づいたのか、話題を逸らそうとするメアリーさん
まあ、考えるだけ意味もないし、その船に乗るとしようか。
「...それで、何でしょうか......」
なんかだいぶ重い返答になっちゃったな。言い直したりしたほうg
「その旧友が依頼した内容はね、既にマリア・ヒルドが失踪してから太陽が7回ほど天高く登ったが帰ってこない。探してくれ、っていうものなんだよ」
「んな!?」
7回、7回って言ったか!?太陽が、7回!?
え、てことは拉致監禁されてから1週間は経っているってこと!?
嘘だろおい。そりゃマナお姉様だって例え受注したのが<勇者>達だったとしても探させるわ。
というか考えてみると、
「え、まって。メアリーさんは僕のことを<魔王>だと知っている...ってことは校長も!?」
「いやいや、私は自分の<魔眼>で視ただけだよ。旧友は知らないはずさ」
...胸を撫で下ろす。それはよかった、あの校長と戦って勝てる自信はないからな。
あとこの人、<魔眼>って言ったか。
「<魔眼>...近づいた時に視たんですか?」
「大正解!私の持っている<心眼>は、ある程度近づかないと発動できない代わりに心を読む能力とステータスを除くことができる能力をもつの。戦闘時にも敵の攻撃を予測するのに大活躍だし...」
メェーちゃんに指を差すメアリーさん。
「...あなたの抱えているその化け物とか、<インベントリ>の中身。果てにはあなたの隠された[<魔王>の種]すら見ることができるの」
む、メェーちゃんが化け物とな。
「メェーちゃんは化け物じゃないです。可愛い人形です」
「メー!!」
ほら、メェーちゃんも抗議している。メェーちゃんは可愛い可愛いお人形さんと言ってもいい存在なのだ。
................その正体は別としてね。
「ほら、やっぱり化け物じゃない」
とと、そういえば心を読むことができるとか言ってたな。
...ショゴス達はあまり近づけないで...ん?そうなると...
「そういえば、サオさんはメアリーさん達が連れてきてくれたんですよね」
「うん。私があなたの元へ連れて行くという<クエスト>を受けた」
とアナさん。ふむふむ...
「ということは、僕を探している間に彼とある程度の接触、つまりは心を読む機会があったと思うんですけど...率直に言ってどんな感じでした?メアリーさん。具体的にその時の感情と一体どれくらいの間心を読んだのかとあなたがどう狂ったのかと狂って見てどんな感じだったのかとサオさんが思っていたこととサオさんのその時の行動とアナさんのその時の行動を詳しくお聞かせ願います。ふう」
早口で言ったので息を切らしてしまう。でまあ、<心眼>は心を読むとのこと。ということはイスの偉大なる種族の心、いわゆる絶対に視てはいけないものをみてしまったと思うんだけど...
「え、ええと。期待に沿えないのは残念なんだけど、私は彼の心を視てはいないわ。彼、視られるのを嫌がるように動いていたから」
「理由を聞いたら、視たらあらゆる意味でまずいことになる、って言っていたけd」
「なるほど、クトゥルフ神話の流布に発狂による敵対化それと異常なレベルで発達した技術の閲覧機密事項の漏洩と言ったところか」
「「??」」
「あ、すみません。独り言を喋ってしまったみたいですね」
「そ、そう」
いけないいけない。自分としたことが、すっかり興奮状態に陥ってしまった。
気を取り直して.....思考を続けよう。
とりあえずサオさん的には視せないことにしておくと。まあ視ることによって起こるのは不幸な事故だけだし、その行動には納得がいく。
となると僕も今まで通りショゴスやその他大勢を視せない、メェーちゃんはなぜか視ても問題がないみたいだが、それ以外は基本的に外に出さないほうがいいかもしれない。
一応読心に関してはメェーちゃん達に後で聞いておくとしよう。
あとは...
「そうだ、校長から何か伝言みたいなものってあったりしますか?というか、むしろ校長のことだから絶対にあると思うんですけど」
そう問う僕。実際1週間も学園を休んだわけで、その代わりの補習みたいなものをあの脳筋校長は考えていても不思議ではない。
すると
「ああ...そうね、あなたはもう<通話>は使えるかしら?」
「いえ、まだできません」
「そしたら...ちょっとまってて」
メアリーさんが自らの<メヌー・リング>を操作すること10秒ほど。
「<メヌー・リング>出して」
と言われ出した状態で右腕を見せると、メアリーさんが<メヌー・リング>をかざすに動かす。
その時、フォンという音がしながら<メヌー・リング>が一瞬だけ光った。
一体何をしたのか...<メヌー・リング>を離すメアリーさんにならい、僕も離す。そして念の為ステータスの確認。
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 6
[種族] ■■■■■■
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
[パーティ] <ギルドズパーティ>
<クエスト>:殺人鬼の捕獲 受注中
[ギルド] <未来団>
[到達点] Lv25
HP 475/475 MP 600/600
ーステータスーーーーーー
筋力 175
体力 175
敏捷 117
知性 91
精神 1036
魔力 341
ースキルーーーーー
言語 Lv45
召喚魔術 LV65 (1)
応急処置 Lv65
再生 Lv43
耐性 Lv100 (MAX)(ON/OFF可能)
結界術 Lv10
(<魔王>の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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やったね、精神が4桁に到達したぞ!
ってそうじゃないそうじゃない。えーと、とりあえず<到達点>はおそらくあの犬戦士王達を殺した後のステータスだろう。
で、それに応じてかステータスが伸びていて...む?
「特に変化がない?」
「そりゃあね。私が今やったのは、その<メヌー・リング>に<通話>を可能にする...えっと、確か<灼熱青火>だっけ?」
「プログラム」
「そうそう。プログラムっていうのを...」
「インストール」
「...したの!うん!」
...大丈夫なのだろうか。と思った矢先。
ブウウウウウウウウウと音、いや振動。これは<メヌー・リング>からか。
「おっと、察知が早いなああいつは」
<メヌー・リング>からステータス画面の板と同じようなものが出てて...そこにはバルバトス・ストーリクの文字。
「早く出てあげな。あいつ、教え子がいなくなったとか言って慌てふためいていたからさ」
全然想像できないのだが...まあいい。えっと、ここの通話って書かれているボタンかな?
「えい」
ポチッ
"おお!!ようやく繋がったか!!"
「校長!!ひさしぶr」
"マリア・ヒルド!!お前一体何をしていた!!答えろ!!"
これは...いつもの校長だあ。
お姉様よりも先に出てくる校長先生でございます




