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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
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助け合いのリレー

お姉さん、一体何者なのでしょう......

 この街に入っておよそ5分。



 第一印象は、



「ボロボロ...」



 倒壊した家、それが視界いっぱいに広がっている。火事なのか燃えている建物もあるし、死体だってそこらに転がっている。



 街中にいると、可能な限りの呪詛が聞こえ、嗅いだことのない匂いが漂い、人々が悲しみに明け暮れている。



 街のひとに聞くと、どうやら<勇者>が僕のところに向かってこの街を出た時に魔獣が侵入して人々を襲ったらしい。他の街と同様に分厚い壁と強そうな門番がいるのにも関わらず、とも思ったけど、勇者によると



「確かにここはヌル()の方にある街、魔獣は基本的に弱くなっている...でもこんな大惨事になってしまうんだ。ただ一瞬気を抜くだけでね」



 弱い魔獣、それが数十体きた時の強さは<コボルド>との戦いでよく知ることができた。所謂数の暴力というやつだ。



 ある程度、いや異常なまでの力を持ったメェーちゃん達ですら完全に抑え切ることができなかったその力は、さらにとてつもない(シュブ=ニグラス)によって消し炭にされた。



 そのために僕のMPはすっからかんになった訳で、それほどのことをしないと数の暴力は突破できない。



 ただの<ゴブリン>が守護騎士団と対等に戦えたのもそれが理由だろう。数、それが戦う時の問題点を解決していたんだ。



 ...基本的に、市民でも戦闘ができないと生き残れない世界。いや違うな、戦闘ができるやつだけが生き残るのがこの世界。どれだけ安全なところにいようと、自らの隣には死が待っている。ということなのだ。



「そんなことがあったんだ...それなら確かに門番がピリピリしていたのも頷けるわね」



 フードを被っている女性もうなずく。



 実際一番気を抜いてはいけないのが門番だからなあ、より一層気を引き締めているのだろう。



「だが。この現状を見る限り怪我人を助けることができない。何か密室になる場所があると良いのだが」



 とミ=ゴ。



 そう、僕たちの目的はいくつかあるが、現在の最優先事項は<勇者>を助けることだ。



「俺たちの宿泊していた宿が確か...」



 と言いつつ止まり右を向く<勇者>。



 そこには何とか倒壊していないもののかなりぶっ壊されている宿らしき建物があった。



 あれは何部屋か潰れているな。部屋の壁が抉り取られて解放感がとてつもないことになっている。ベットが血で染まっているのも見えるし...



「だ、大丈夫なのか?」



 一応聞いてみる。



「いやどう見ても大丈夫じゃないだろ。どうすんだ?」



 シーフがそう言うが、それは誰がどう見てもわかることだ。



「宿の中に生きている人間はいない...この宿で代わりにするのは難しそうだね」

「衛生という面でも悪いからな」



<勇者>の決断にミ=ゴがアシスト。確かに、こんなヤバい場所で外科手術なんてしたらなんかヤバい病気にかかりそうだ。



 うーん、でもそうなると八方塞がりだけど...



「あ、あのー」



 そういう声が聞こえ全員が振り向く。



 しゃべったのは...サオさんだった。



「俺、いい場所を提供できるっす。ちょうどここら辺にあるし、そこでよければ」

「「是非頼む!!」」



 すごい見幕のソルス・バミアとミ=ゴ。



「じゃ、じゃあ...」



 というと、サオさんは何かをポケットから取り出した。



 ...銀色の、鍵の形状をしている棒だった。



「向かいましょうか?」



 ============================================



「どうしてこの場所をさっさと言わなかった!このイスの偉大なる種族の面汚しが!」

「き、企業秘密のものもさっきまであったんす!この街に入る時に何をしたいか気づいたから、大急ぎでここの片付けを部下にさせたんすよ!」



 捲し立てるミ=ゴと何とか理由を言うサオさん。



 そして



「こ、こんな場所が地下に...」

「何か...不気味だな...」



 と言う勇者。



 それもそのはず、ここは無機質で暗い部屋。機械のようなものが壁一面を覆っていると言う、この世界では確実にみることのできない部屋だったからだ。



 だからまあ、普通はこんな感じの反応になる。僕も彼が銀色の鍵のようなものを使ったときは目を疑ったしね。



 そう、僕たちはここに<門>を使って来たと僕は考えている。あの銀色の鍵のようなものを空中で回すと、そこに扉ができたかのように空間を開くことができていたからね。



 なぜそんなすごいものをイスの偉大なる種族が持っていたかとかは一旦おいておくとしても、確実にここはこの街の地下とかそういうものではなく。



「別の次元の空間、てところかな。これ」

「あ、マリアさん。あたりっす。ここは元オフィスd」

「そんなことは今はどうでもいいのです!」



 ミ=ゴが叫ぶ。そのまま<インベントリ>を開いたかと思うと、そこから大量の医療機器?を取り出した。



 ベット3つはもちろんのこと、心拍数が映し出されているモニターとか、メスや針などの道具とか、自動で動く照明とか、手伝ってくれるサブアームとか。もちろん他にもたくさんあるが、大抵は何が何だかわからない意味不明な機械である。



 これらを出すと、部屋の何割かが埋まる...かのように見えたけど、全然そんなことはなく。むしろ部屋の方が広がって余裕のあるスペースとなった。



「これなら僕たちもゆっくりと休めるかな」



 と腰を床に下ろそうとした時。ミ=ゴが



「今から手術です。せめて別室に行ってから休んでください」



 と白衣帽子マスクの姿でそういった。



 でも別の部屋なんて...あ、いつの間にか背中側の壁にドアがある。



「それじゃ俺っちも休むことn」

「いや。あなたは手術の手伝いをしてください。人間に手術を手伝わせるのは控えますが。あなたは問題ないので」

「え、ちょっと!俺っち手術の経験なんて一回も」

「大丈夫。モニターなどのチェックをお願いするだけですから。さあ。マリア・ヒルド様方は別室に行ってください」

「OK。手術頑張ってくれ」



 といってこの部屋を退出する。



 でまあ、扉の奥は廊下だった。狭くはないが、人間が2人並ぶと埋まってしまうほどの横幅であり、両サイドの壁には一つづつの扉。



 ご丁寧に男性、女性と部屋わけがこの世界の言語で書かれているのを見て、唖然した表情の<勇者>。特にシーフは



「毎回色々と我慢しなくちゃいけないことを我慢できるのか、こりゃいいな」



 なんて言っていた。多分<勇者>として色々なことをしていた今日この時までまでずっと男女共用の部屋を使っていたということだろうが、それは未成年と言う...この世界の成人って何歳なのかわからないな。よし、別のことを考えよう。



 何か考えること...あ、そういえば。



「そういえば、お姉さん達にいくつか聞きたいんですけど」

「私はメアリーっていうの。で、こっちの子がアナ」



 コクリと頷くアナ...さん。



「じゃあメアリーさん、アナさんって呼ばせていただきますね。メアリーさん達は何で僕に用事があったんですか?」



 訪ねることはたくさんあれど、まずはここ。



 理由もなく近づいてくるのだとしたら、それはただの変態だろうが、果たして。



「まあ、簡単に言うのなら古い友達からの依頼なのよ」

「友達?」



 誰なのかわからないけど、少なくともその友達にも警戒をしないとか?



「あなたは見たことあるんだったかな?あのおっきな戦斧を振り回す...」

「バルバトス校長先生!?」



 わお、あの人が古い友達ですか。警戒とかありえないわ。



 ん?まって、じゃあこの人たちの実力って......



「...ちなみに、サオさんはメアリーさん達についてきたと思っていいんですよね?」

「そうよ。同時にほぼ同じような<クエスト>が指名で私たちに出されたから、びっくりしちゃった」



 また出たな、<クエスト>。<勇者>も僕を探すという<クエスト>をどこかの女の子から間接的に受けたと言っていたような気がするけど、この世界は<クエスト>で回っていたりするのか。



「そうそう、わたしたちからも質問があるんだけどさ...」



 そう言って僕に耳を近づけるメアリーさん。そしてなぜか扉の前にいき開けられないようにするアナさん。



「と、特に僕が言えることは何も...」



 近い。何がとは言わないけど何もかも近い。段々と頭がくらくらしてきて......






「あなた、<魔王>でしょ」


ミステリアスなお姉さんです。

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