異世界夢想
第3章?のプロローグ的な何か。
はっじまっるよー
目を、覚ます。真っ白な天井が目に入る。
体を動かし、今いるのがベットの上だと確信した後起き上がる。久しぶりのこの状況下、少し楽しみで頬が少しだけ緩んでしまう。
でも危険な世界に変わりない以上、安全確認はしっかりと行わなくてはならない。
周りを見渡す。一面真っ白だ。ベットも、壁も、床も、そして扉とそのドアノブすらも。
まあ少なくとも監視カメラとかはなさそうかな。ベットの下も...うん、特にない。
次はここに来る前の記憶だ。確か...ショゴス・ドラゴンとでもいうべきか、ドラゴンに変身したショゴスに乗って空の旅をしていて...多分疲れて寝落ちしたんだな。
ということはやはりここは夢の世界。あのドラゴンがいた時と同じ<ダンジョン>の可能性がある...まああそこが<ダンジョン>でない可能性もあるんだけどそれは置いといて。
そうなると行わなければいけないことがある。
「メェーちゃん」
...
...来ない。
「ショゴス、いる?」
......いない。
まあ、うん。つまりは神話生物の助けはないということだ。いやそもそも今まで、そしてこれからも神話生物の助けがあることがおかしいのだけど。
<メヌー・リング>は、一応使えて。ステータスも<インベントリ>も...いや、<インベントリ>は見ることができなくなってる。
...ここでできることはもうないか。あらかたやれることはやったし、扉の方へ行こう。
ベットから降りて、扉の方へ。
そういえば、今僕が着ている洋服は...ネクリジェってやつだな。前世でも着たことないし今世でも着たことないけども、可愛いと思って少し憧れはしていた。
でも位の高い人たちが着るイメージが僕の中で定着しているのもあって、自分からは買わなかった。だから今こうして着ることができたのはいいことだし、とても嬉しい。僕をここに連れてきたやつに感謝しなければ。
そう考えつつ扉を開ける。するとまたもや真っ白な部屋。
だが、そこの中央に明らかに異物感が漂っている真っ黒な机と椅子。近づいてみよう。
椅子は丸い座面と円柱の脚3本が複雑怪奇な状態という絵面で構成されている。何じゃこれ、しかも2つあるし。机も同じような形なのを見る限り、セット商品か何かなのだろう。
机の上には何も、いや黒くてわかりづらいけど黒い紙があるな。取って裏側をみるとそこには白い文字。
「座ってください、ねえ」
絶対座ったら何かが起こるので、その前に探索。と、言いたいけどこの部屋にはそれ以外のものがない。
窓もなければ換気扇もないので酸素供給がどうなっているのか知りたいけど、そこは考えすぎるとまずいからやめよう。
さっき通ってきた扉は......
......ない。なぜにない?もしかして、座る以外には何もないですよとかおっしゃっている?
そうか、じゃあ座ろう。そう思い椅子に座る。
座り心地はそこまで良くない。座面が無駄に硬いからだ。
あと座ってみて気づいたけど、明らかに椅子のサイズが机とあっていない。6歳児なのもあるだろうけど、頭がぎりぎり机より高い位置にある程度なのだが。
「いやあ、今用意できるのがこれくらいしかなくて。すまないっすね、魔王さん」
「全然大丈夫ですよ。それにしてもかなり質素な部屋ですね。飾りとか用意しなかったんですか?」
「あはは、お金がなくて用意できなかったっす。やっぱり飾りとかあった方がいいんすかね?」
「いやいや、むしろこのままのほうがいいですよ。本来あり得ない部屋なのだから、その分恐怖に飲まれやすくなります」
極論、ただの真っ白の豆腐ハウスでも問題はないわけで。むしろ外観にリソース使うより中の仕組みにリソース使ったほうが楽しいだろう。
「なるほど...そういえば自己紹介がまだっすね」
と言ってくるその生物の外見は、人間。成人男性といってところか。
...本当に?おそらく人間のフリをしているだけだろう。
でもここまで有効的な神話生物はそれほど多くないし、対話できるのはさらに少ない。すでに的は絞れている。
「多分僕のことは知っていると思いますけど、一応自己紹介をば。僕の名前はマリア、マリア・ヒルドと言います。一応まだ覚醒はしていないですが、魔王です」
「マリア...どっかで聞いたことのあるような」
「多分それ以上考えるとまずいことになりますよ...で、あなたは?」
「ああ、そうっすね。俺もしなきゃっすね」
「俺っちは、030-19。サオイキュ、って呼ばれてます」
「じゃあサオさんって呼んでも?」
「構わないっす。あ、けどこんな姿しているけど人間じゃないっす。実は」
「イスの偉大なる種族、でしょう?できればその姿を一眼見たいのだけど」
「...まあ、いいっすけど。どうなっても知りませんよ?」
知ったこっちゃない。僕としてはその姿を見るためだけにここにいると言っても過言ではない。
と思っていると、いつの間にか人間がいなくなり、代わりに神話生物が出てきた。瞬きの間に変身したらしい。
...円錐、いや本当に円錐か?明らかに頂点から歪なものが出てきているんだが。首か、腕か、わからないけど似たようなものだろう。それはどうやら伸びたり縮んだりできるらしく、グネグネと動いている。
肌?の色はおそらく個体によって違うのだろうが、この個体は黄土色、いやもうちょっと綺麗だな。黄色ということにしよう。
頭?と思われるその部位に目はある。耳...どれが耳なのだろう。鼻は見当たらなくて、髪はあの触手だろうか。
で、しかも体には鱗。ヌメヌメとしているのか、少しだけ光沢があるように感じ取れる。
というのがとりあえず感想だな。
「ああ...こんなにも本物が見られるなんて...なんて僕は幸せ者なんだ...」
「...へ?」
昇天してもおかしくないだろう。ショゴスから始まりイスの偉大なる種族まで見ることができた...
「いや、あの、話の本題をまだ俺っち話していないんで...」
「精神交換ですか?」
「急に冷静になるっすね!?あとそんなことやったら俺っち殺されますよ!?」
っと、そうだった。そういえば現実の僕の周りにはメェーちゃんたちがいるのだ。
精神だけ殴るとか、彼女らには容易だろう。いやあ、こわいこわい。
「それで、本題って何でしょうか」
聞いていないらしい、というかそもそも話をほとんどしていないのでしょうがないのだが。
「えっと、ですね。まあ単刀直入に言うと、俺っち達を仲間n」
「大歓迎ですむしろ今から来てください」
「...あの、まだ理由とか言っていないんで、そこからいいっすかね?」
おっと、僕としたことが焦ってしまった。
ミ=ゴにイスの偉大なる種族まで加わるとなると、もはや技術チートの領域ではあるのだがなあ。
「理由としてはっすね、あの、実はこの世界の魔法とかのシステム作ったの、俺っち達なんです」
「知ってます。僕のスキルの説明が前にイス語?だったらしいので」
そんなところだろうと予想してはいた。イスの偉大なる種族の技術ならできうることだろうし。
「そ、そうっすか。で、あの<勇者>と<魔王>が何度も戦って、結局負けている歴史がこの世界にはあるっす。知っていると思うんすけど」
「ですね」
「こちらとしても、その歴史に終止符を打って<魔王>が勝ったらどうなるのか見てみたい...なので、<魔王>を意図的に強化したっす」
「はあ」
となるとやっぱり[召喚(クトゥルフ神話)]は本来持つはずのないスキルってことか。
「ただ...そこで問題が発生したっす。なんか一つだけ異常に強すぎるんすよね」
「僕のスキルだね。うん」
「わかってるっすよね...明らかに本気出していないっすよね、<召喚獣>達は」
「むしろ僕がどうやってあの方々の本気を出させろと」
無理だ。何か第三者が関わらない限り、僕(の召喚した神話生物達)が本気を出すことはないだろう。
「でまあ...要はお目付役っす。何か異常な行動をしないかということっすね。明らかに世界滅ぼせますもん」
お目付役、か。それは...
「なるほど、それはありがたいですね。僕としても彼女らを完全に操ることができないわけで、むしろ僕が操られているわけで」
「え?」
意外なコメントなのか、驚いた様子のサオさん。
でもね、少し考えればわかることなんですよ。
「あの、一応イスの偉大なる種族ですよね?」
「まあ、そうっすね。下っ端の下っ端ですけど」
「それでもわかると思うんですけど...僕、色々おかしくはなっているけど、一応人間なんです」
「はあ」
「で、僕が召喚及び仲間にした神話生物は全員人間の上位種族なんです。ショゴス、シュブ=ニグラス、バースト、ミ=ゴ、クトーニアン、シュド=メルとまあ、錚々たる面子です」
「(唖然)」
「それを人間である僕が操る?冗談じゃない。あらゆる人間が無理です。たとえ地上最強だろうが、宇宙最強だろうが、こいつらを思うがままに操るのは不可能なんです」
人間以外なら可能だろう。例えば神話生物なら、大いなるクトゥルフとかなら操ることができるだろう。喧嘩はあるだろうけど。
「まあなので、僕と言うよりは僕達のお目付役ということで。これからよろしくお願いします」
椅子の上に立って手を伸ばす。
「...よろしく、お願いするっす...」
涙目になりながら握手を交わすサオさん。あれだな、まさかこんなに辛いことになるとは思っていなかったのだろう。
シュブ=ニグラス...メェーちゃんが特にやばい。下手したらイスの偉大なる種族の超テクノロジーですら不可能だ。
本当に頭の上で寝ているマスコットキャラクターで良かった。
「あ、ところでやってほしいことがあるのですが」
「な、何すか?」
「現実に帰ったら精神交換してほしいです」
「頭おかしいんすか!?さっき言いましたけど、やったら殺されるっす!」
「大丈夫!最初に一時的に交換するって言ったら問題ないですよ」
「大有りっす!くそう、なんでこんな奴が一番強い<魔王>なんすか〜!」
僕というより、神話生物が強いんです。
ちなみにサオさんは常識人だと思ってもらって結構です。
というか何でイスの偉大なる種族が常識人なんだ...?




