誤差(1と100)
<召喚獣>と神話生物は月と鼈
「あいつら、結構肉が硬いデす。マあ人間と違って旨味が閉じ込められているとも考えられますけど」
「うん、食レポありがとう」
おかげで人肉は旨味が閉じ込められていないらしいことがわかったよ。人間は体の7割ほどが水分だというけど、おそらくそっちに旨味が逃げているのだろう。
でまあ、それは一旦置いといて。
大穴。シュド=メル及び部下のクトーニアン達が造ったそれに落ちていった6体の犬戦士王...>コボルド・オブ・キングウォーリア/シュリーク<達は、底にいるショゴスの食糧となった。
まあ確かに奴らは強いけど、結局落下ダメージと酸による攻撃は防げないみたいでね。
ボコボコにされて瀕死になった後、ショゴスにもぐもぐされた...ということらしい。
いやあ、そうすれば倒せるんじゃないかと考えたのは僕とミ=ゴだったけどね。あんなに広いところじゃなきゃ不可能な作戦だったわけで。
<ダンジョン>内部だったら到底できっこないだろう。地上、それも草原に沸いていてよかった。
「でも...何であそこに<ダンジョンボス>がいたのだろう」
ふと口にしてしまう、そんな疑問。まあ今は確実にそんな疑問を考えてる時間じゃないけどね。
「そんなこと考えている場合なのか...?」
「いやあ、そうだよねえ」
<勇者>にも突っ込まれる始末。ダメダメだあ。
「当たり前だ!何たって...」
ところで、僕らは急がなくちゃならない。
一応僕も約束したしね?負傷した<勇者>全員を助けるって。
だからまあ、とりあえず一番近くの街がどこなのか<勇者>に聞いたんだ。
そしたら、いくつかの山、湖、森、その他諸々を越えていかないといけないと。
ミ=ゴっていうのは基本的に人間社会には関わらないし関わりたくないと思っているからね、おそらくバレにくいであろうこの場所の地下深くに拠点を設定したのだろう。
...そうなると何であそこに<勇者>たちが来たのか疑問だな。後で聞いてみよう。
でそれはまあ置いといて。そういう理由があるから急ぐにしたって距離があるし、流石に僕たちも戦いが多すぎてもう疲労困憊状態。あらゆる場所に魔物が住んでいるような世界なんだから、例え北の方に街があるのだとしても戦うのが困難なことに変わりはない。
そしたら遠回りをするか?そうすれば、比較的戦いやすい場所で戦うことはできるし、上手くすれば戦わないこともできるだろう。
でも僕たちは急がなきゃいけない。適切な処置はしっかりとした場所と施設でなければならないのだから。
急ぐ。でも戦えない。戦いを拒否する。でも急がなければならない...
「...おい。聞いているのか!?起きてるのか!?今までの話、全部聞いていたか!?」
「ん?ああ、もちろん聞いていたよ。ところでこれは何の話だっけ?」
「全然聞いていないな」
あいにく1人で考え事をしてしまうのが癖でね。
「ああもう!要約して言うとだな...何で!俺たちは!空の上を!ドラゴンに乗って!飛んでいるんだって聞いているんだよ!」
<勇者>の1人、短剣使いのマイゲスというやつが大声を出す。
「あのねえ。僕たちこれでも時速300km以上の速度で飛んでいるんだよ?舌噛みちぎっちゃうことになるよ?」
「その速度とかキロメートルとかわからねえよ!俺はただ、何でこうなったかの理由が知りたいがふぁあ!」
「マイゲス!?」
ほーら、言わんこっちゃない。
「はあ...乗る前、それも君には一番最初に言ったじゃん。いい?僕たちは急いで、且つ魔獣との戦闘を避けながら最寄りの街であるメッキョに行かなくちゃならないんだよ?そしたら空を飛ぶのが一番手っ取り早いだろう?」
ショゴスがドラゴンに変身すると空を飛べる。これは流石に察してはいたけど、試す機会がなかったんだよね。
街中とか学校でやるわけにもいかないし。特にマナお姉様やエリカ先輩に見せるわけにはいかないし。
「うん。だから俺たちも了承してこのドラゴンに乗ったんだよ?」
「むむむー!」
「舌を噛んでしまったせいでしゃべれない。と言ったところか。やはり所詮は下等生物だな」
「それはもう、うん。口がないミ=ゴに言われるのはちょっと...」
それにしても、<勇者>たちは意外とドラゴンで怖がったりしないな。マナお姉様たちはショゴスをドラゴンに比べるとまだマシと表現していたのを覚えているけど、あれか。初見じゃないのか。
確かに2回目のミ=ゴ遭遇もあんまりビクついていなかったし。結構この世界の人間は精神面がとても強いのかもしれない。
「あ、そうそう。<勇者>たちに聞きたいのだけど」
「なんだい?」
そう聞き返してくる<勇者>ソルス・バミア。多分こいつすっごい優しいやつだよね。
仲間のこと第一に思っていたし。多分とてもいい<勇者>になるよ。うん。<魔王>である僕がいうことではないけどね!
「何であの<ダンジョン>にきたの?こんなに遠い場所にあるんだから、何か理由があると思うんだけど...」
「ああ、それか。でもそれはこちらのセリフでもあるよ?俺たちだって、君がなぜここにいるのかわからない」
うーん、なるほど。確かに。
「僕は拉致られただけだよ。そこにいるミ=ゴという生物が僕を人体改造実験の被験体にするためにね」
「じ、じんたいかいぞう?」
「あー、要は僕が自分からここに来たわけじゃないよ、ってこと」
人体改造とかは流石にわからないらしい。魔法で人間をとんでもない化け物にするとかなかったのだろうか
「で?あんたらは?」
「俺たちは<クエスト>でここに来たんだ」
「<クエスト>...ああ、<ギルド/パーティ会館>のやつか」
なんか<クエスト>という言葉を久しぶりに聴いたような気がする。実際は2日くらい前に聴いているはずなんだけどねえ。
「そう。<この人を探しています>っていう<クエスト>でね、ここ最近は辛い戦闘ばかりだったから休憩になるかなあって」
「で、この様と」
「むむ...」
「みんなには申し訳なく思っているよ。まさか、こんな大変なことになるなんて思っても見なかった」
...当事者じゃないから何も言えないけど、それ自体は仕方ないのかもしれない。
理由、というのははっきりとないけど、アクシデントは絶対に起こるもの。じゃなかったら老衰で亡くなることが出来る人間があんなにも少なくなることはないだろう。
もしも僕にそういうことが起こったとしても、しょうがないで済ませるほかないのかもなあ...
まあそれはそれとして。
「それで?探している人間は見つかったの?」
この<ダンジョン>がどれだけ難しいのかはわからないけど、こんな辺鄙な場所にくる人間なんてそういないだろうし。
今回で見つかったか、それとも見つからなかったかのどちらかだろう。
「ああ、見つかったよ。目の前にいる」
「...僕?」
「そう。この<クエスト>を依頼したのは...君ならわかると思うけど、<ナイル&ホテップ商店>の店主であるナイルさんからだよ」
「ファッ!?」
っと、危ない危ない。思わず奇声をあげてしまうところだった。
「え、あの店主が?」
「そう。確かとある女の子に頼まれてって言ってたような気が」
「.........よし、とりあえず街に行って、詳しい話はそれからだ」
これ以上は...僕の気が狂う。
これにて第2章。完!!
次回、第3章!(多分)




