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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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再三再四の繰り返し

またちょっと遅れてしまった...

(そろそろ地上に着くぞ)



 そう声が聞こえる。前を行くシュド=メルからの通信だ。



「そろそろか...ようやく地下から脱出だあ」



 うーん!と体を伸ばす僕。記憶の中では数時間だけども連れ去られていることを考えるともうずっと太陽の光を浴びていないわけだし、何よりこの30分間は周りの景色が一辺倒でものすごく暇だった。



 座りにくいであろう触手の上、しかも安定感を求めるために変な体勢で座っているっていうのもあって、身体中が痛くなってる。



「...っあ!ふう...」



 血流が流れていき、ほぐれていく体。といっても左腕はないんだけどね。



(準備はいいな)

(とっくのとうに)



 返答を即座に行って、そのまま<インベントリ>やら身の回りの最終確認。



 ...うん。制服が少し破れていて素肌が見えること以外は問題なし!



(...ではカウントダウンだ。5、4、3、2、1...)



 次の瞬間、目の前に強い光が現れる。



 さっきまでシュド=メルがいたはずだが、一瞬ではあったが直角に曲がっていくシュド=メルを眼に焼き付けることができたのは良かった。が、そのあとすぐに眼が潰れたのは良くない。



「っ!」



 咄嗟に目を瞑る。もう遅いがやらないよりはマシだろう。



 ていうか、これに関しては予想できた事象だな。さっきまで暗かったのだから、太陽光で眼が一時的に使えなくなる可能性くらい考えればわかってた。



 つまりは全然準備は良くなかったってことだ。



 などと考えていると、足場がだんだんと斜めになっていく。クトーニアンたちが帰ろうとしているのだろう。



(その通りです!あとはお任せします!)

(ああ、ありがとう!)



 そしてもちろん着地に失敗する。眼が潰れているからね、地面の位置がわからないのだ。



「がっ!」



 顔から思いっきり体を地面に打ち付け、そのままうつ伏せに寝転がってしまう。



 痛い。だがそれと同時に、久しく感じていない草の感触がしっかりとここが地上であることを教えてくれる。



 そのまま眼もだんだん治ってきて、目の前の光景が見えてくる...



 キィンカァン!!



 がその前に金属音が聞こえ、いや聞こえていたのが聞こえていなかったのか。



 出てきた時の地面が崩れる音とかでかき消されていたのか、それとも眼が潰れたことで二次的被害が起きて耳も使えなくなったか。どちらにせよ、おそらく先ほどから聞こえていたことだ。



 体を起こす。まあ体を打ち付けた直後だからまだ動きづらく、ゆっくりとした動きにはなってしまうけども。



 だけど、その間に周囲の確認はできる。さて周囲は...






 戦闘。目の前で戦闘が起こっている。



 片やちょっと前に出会った勇者たち。片や<コボルド>...ではなくおそらく先ほど殺したはずの犬戦士王、その人間サイズが5匹。



 乱戦状態、と言っても差し支えない状況。一体どうして<ダンジョン>の宝物庫の真上でこんなことが起こっているのか。



「後ろだ!警戒しろ、<魔王>!!」



 何度か聞いたことのある声が聞こえ、咄嗟に振り向く。



 ギャァァァァン!



 そこでは、バーストと今勇者達と闘っている犬戦士王が爪と双剣を交えているところだった。



 ...6匹目か!



「メェーちゃん!」



 その声の前に犬戦士王を殴るメェーちゃん。



 が、全然のけぞらない。むしろそのままメェーちゃんを切り付ける。



 それをカバーするバースト。<結界>がメェーちゃんに向かっていた剣を弾いた。



 ...強いな。さっき戦った犬戦士王とは違って、ただただ<コボルド>を大きくしただけの存在ではない。



 むしろでっかくした<コボルド>を縮小。それだけ筋肉とかが圧縮されてより強くなったってところか!



 そして、それが正解だとでもいうようにニヤリと笑う犬戦士王。すると、



 ーーーーーーーーーーーー


 >コボルド・オブ・キングウォーリア/シュリーク<



 207103/207103


 ーーーーーーーーーーーー



 ステータスが出てくる。本当に犬戦士王だったが、なぜ分裂しているのだろうか。



 で、シュリークっていうのは...シュリンク、縮小ってか!



 バギャアアアアン!



 拳と爪、それらと剣と剣がぶつかり合う。バーストはまだいいとしても、片方の剣でメェーちゃんの拳を受け止めるのはやばいだろ。



 これは逃げたほうが...と後ろに下がったその時、



 ゴン!



「痛っ!な、何!?」



 なぜかそこには<結界>。でもさっき勇者達を見た時は無かったような...



 うーん、確かに奥では勇者達が強化犬戦士王ズと戦っている。だが既にその鎧はボロボロ、しかもかなり無理をして戦っていることが、剣の動きでわかる。



 僕は剣に関してはど素人、だけど一度見たものは流石にすぐには忘れない。だから、ミ=ゴと相対した時の剣と全然違うことが見ているだけでもわかってしまう。わかってしまうほどボロボロなのだ。



 ...だが、そうなるとまずいな。バーストは既に<魔力>の限界から少し休んだ状態。さっきメェーちゃんを庇うために<結界>を出した時、めちゃくちゃ苦しそうな顔をしたのを僕が見逃すはずはない。



 メェーちゃんは元気そうだけど、到底拳が犬戦士王に届いているとは思えない。このまま持久戦すればいずれは倒せるかも...



 しかしそうなるとバーストの問題ともう一つ、ここで後ろの勇者達が問題になる。



 あいつらもボロボロ。そしてもしもあいつらが負けた場合、残った犬戦士王はおそらく僕のところへくる。



 さっきから犬戦士王ズが勇者達に無差別攻撃をしているのが理由として挙げられるが、まあその可能性ってだけでも考慮しなければいけないことだろう。



 でも、おそらく逃げることはできない。



 例えば、勇者達を見ているこの状態で前へ進むと...特に何の問題もない。



 だけど勇者達を見ながらメェーちゃんのところへ向かうと...進めない。<結界>がいつの間にかここにある。



 つまり、後退不可。逃げるなら背中を向けるというとんでもない状況だ。



 ...短期決戦そのためには...



「ミ=ゴ!ちょっと来て!」

「なんだ」



 呼ぶと、本当に飛んでくるミ=ゴ。ミ=ゴもこの状況はまずいと理解しているのだろう。



「短期決戦がしたい。アイデアは?」

「そうだな...すぐに思いつくものといえば。一つだけ」

「教えて」



 即座に教えてもらう......



 ...



 ......よし。



「それで行こう。今を生き残るには...やっぱりそれしかない」



 ===========================================



 "大丈夫ですか。意識飛んでますよ"

「......はっ!」



 目の前の二撃、そして横からの一撃を切り返す。



「っ、ありがとう、おかげで目が覚めた」

 "いえ。私の心は、いつもあなたのそばに"



 脳天への一撃、それをガード。そのまま開いた腹へ突きを繰り出す。



 突かれたこの<コボルド>は、そのまま善戦しているマイゲスの方へ向かう。



 それを止める...前に他二体を思いっきり切り付けて移動。



 そのまま飛び上がってマイゲスが斬り合っている<コボルド>へ一撃。



 しかし、それを<コボルド>はガードした。



「何...!?」



 反撃をしようとするコボルド。しかし、その剣が俺に届く前に矢で撃ち落とされる。



 着地、そしてその<コボルド>に<突進(ショルダーチャージ)>を当てて遠くに吹っ飛ばしておく。



 体勢を戻し、マイゲスのところまで移動。背中を合わせる。



「おい、回復薬あと何本だ...?余っているなら欲しいんだが」



 聞いてくるマイゲス。彼なりの僕への心配だろう。



「あと3本。でも俺と同じで君も<水薬(ポーション)中毒(アデクション)>だろ?」

「それもそうだった、な!」



 回復薬は飲めない。でもヒーラーの代わりをしてくれるカミラは今戦闘で精一杯。



 助けに行きたいが、こちらとてその余裕がない。何とももどかしい。



 "このままだと全滅は必死です。先ほど<魔王>も出てきましたし"

「だね...あの<魔王>が死ぬとこっちもまずい」



 6匹目がこっちにきたが最後、確実に対応できなくな



「あっ!?...がっ...」

「カミラ!?」

「まずい!!」



 即座にダッシュ、カミラを救出する。



 ただ、お腹には空洞があり、そこから血が流れ出している。



 そして、救出したことで腕が塞がり。



「があっ!!」



 俺もまた、腹を貫かれる。だがそのままマイゲスがカバーに入る。



 その間に<インベントリ>から再生薬を二本。そのままカミラに飲ませたのち、俺も飲む。



 HPにダメージは受けるけど...この傷を直さないと話が進まない。



「あ...ハハ、やっぱり私...足手まといで...ごふっ!」

「喋らないで!その、傷が...」



 俺の腹が少しづつ治っていく。が、なぜかカミラの腹は治っていかない。



「私、<水薬(ポーション)拒絶症状(リジェクト)>に...」

「あ、ああ...」



 どうにかして逃げなくちゃならない。それはわかっている。



 だが、できない。なぜなら逃げようとすると背中側に<結界>が貼ってあるから。



 だけど倒そうと思っても...俺たちの力だとどうしようもない。



 "...カミラさんを殺さずに、生きて帰る"

「当たり前だ!!彼女は勇者の仲間...大事な仲間だ!!」

「ああそうだ、仲間だ!だが...この状態だといつまで持つかわからねえぞ!」

「わかっている!!」



 彼女を草地に置き、血の匂いに釣られてやってきた<コボルド>を斬りつける。



 しかし、その傷は浅い。そして今まで食らわせた傷も、既に治っている。



 だけど、引くことはできない。真後ろにはカミラが...



「はっ!カミラ!?」



 いない。さっき置いたばかりなのに。



 "上です"

「!?」



 見上げると、そこには不気味な生き物に乗っている<魔王>。その手にはカミラが抱き上げられている。



 降りてくる<魔王>。



「っ、返せ!」

「協力だ!」

「!?」



 武器を握る腕が止まる。



「僕は生きて帰りたい。君たちも生きて帰りたい。だろ?そしたらもう、協力以外あり得ない」

「ならカミラを!」

「彼女も治す!そして奴らを全員をぶっ殺して帰る!そのためには協力が必要!そうだろ!」

「っあ!」



 すごい見幕でこちらにくる<魔王>。その目には...執念。



 生きて帰るという、執念。固執。



 ...選ぶ時間は...ない。



「...わかった。方法は?」

 "ソルス!?"

「ああ、今教える...」

勇者側。書くのちょっと難しい。

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