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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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万能なんて存在しない

ううむ、不完全燃焼。



6時間後にもう一本行きます。

「っと、こんなことを考えている場合じゃないな。さっさとここから脱出しないと」



 軽く頭痛が思考の中に混じってきたことに気づき、急に大きな声をあげてしまう。



 頭痛、ということはつまり酸素があまり脳に届かなくなってきたということ。この空間内の酸素もだいぶ少なくなってきたのだろう、あくまでもまだ人間であると思いたい僕の体には酸素が必要不可欠、酸素がないと生きていけないのだから。



(であると思いたい、とは?)

「そういえば、山羊の乳はとても美味しいと聞きましたが」

(...そういうことか、わかった)



 若干シュド=メルが引いているような気がしなくもないが、まあいいだろう。とりあえず脱出だ。



「だが。脱出といってもその環形動物門貧毛綱(ミミズ)の姿では我とマリアが通れるような隙間ができないだろう。どうするのだ。マリア・ヒルド」

「うーん、僕の中では<魔力解放>しかないかなあとさっき結論づけたけども」



 左腕の接合作業をしながらのミ=ゴの質問に答える。魔力解放を行えば、おそらく本来あるべき形に戻るはずだからそれで脱出ができるだろう



 でもやろうと思えばミミズの状態でもクトーニアン達と協力して大穴開けられそうだけどねえ。そこらへんどうなの?



(可能、とは言いにくいな。このミミズの状態だからなのか、もしくはこの世界の土及び岩石の質なのかはわからないが、お前たちでいうところの酸によって溶かすという我々の移動方法があまりうまくいかないのだ。さっきだって、卵の元に向かうのに苦労したからな)



 おっと、そうでしたか。



「じゃあ、やっぱり<魔力解放>だけかなあ」

「終わったぞ。針と糸だけだから完全とは言えんが」

「お、ありがとうミ=ゴ......動かすのに問題はなさそうだね、よし!」



 6さいという小さい体も相まってこの空間の中でも腕を振り回せるのだが、本当に針と糸でやったのかというほど違和感がない。



 可動域の限界まで腕を振り回しても、外れたり痛くなったり出血したりしない。99%元の腕そのままと言っても過言ではないだろう。



「相変わらずミ=ゴの技術は凄まじいですね。人間ではこうもいかないでしょう」

「科学っていうのは突き詰めると魔法みたいになるって聞いたことあるけど、この外科技術は魔法そのものと言っても...」

「過言だな。この世界の魔法ならば。その程度の怪我を一瞬にして治すことができるからな」



 現実は非情である。特に結構な現実主義者なミ=ゴさんの中では科学及び医学<魔法ということなのだろう。



「それよりも。だ。おそらくこの状態で<魔力解放>を行うとシュド=メル様の体によって我々が押しつぶされる。あるいは岩石によって生き埋めになると思うのだが」

「あ」

「考えていないのか...やはり下等生物ということか」



 そうだった...というかなんでそんな当たり前のことを考えていなかったんだ。



 シュド=メル、いやクトーニアンのサイズはおよそ人間の数倍。シュド=メルはそのさらに数倍。被害が大きいことは目に見えてるはずなのに、いやあ、危ない危ない。ミ=ゴが言ってくれなかったら気づかなかったところだった。



 というかそう考えるとドール呼ばなくて正解だったな。あいつクトーニアンの数十倍だし。



「んーと、そしたら...地中に行ってそこで、いや僕がどうやっていくんだ」



 さっきシュド=メルが言っていただろう、この姿だとなぜか掘るのがあまりうまくいかないと。それは直上掘りでも直下掘りでも変わらないことは容易に想像できるし。つまるところ...



 何か他の.......生物の力を...借りて...



 ここから...脱出を.........!






「.........ショゴス、例えば僕の細胞を接種して、僕の体の一部を作れたりって、できるよね、きっと」

「マあ、その程度ナら。流石にまだマスターそのものニ擬態することはできませんけどね」



 頭が回る。また僕は不思議な体験をしようとしているのか、それともただただ無謀なことをしているのか。



「じゃあ......例えばミ=ゴが接合してくれた腕、いや指先でもいい。切断面から切断面を僕とほぼ同じ細胞で接着、その部分を伸ばせるだけ伸ばすことって、可能?」

「...えっト、ツまり?」



 回りすぎて説明が足りないのか、それとも言っている意味が少しわからなかったか。いやどちらにせよ...



「...つまり。マリア・ヒルドは自分の切断された腕を伸ばし。地中深くでシュド=メル様に<魔力解放>を行いたい。その腕を伸ばすということを。ショゴス。お前にできるかと聞いているのだ」

「うん、そういうこと....できるかな?」



 ...腕を伸ばす。



<魔力解放>は今のところ僕が手で対象に触れなければ行うことができない。まあ僕が成長すれば話は別だろうけども、今はそこのところに関してはどうでもいいことだ。



 問題は、それを行うと僕たちが危険な目に遭うという点。巨体が唐突に空間に出現したら、そりゃあ僕たちもペシャンコになるかあるいは生き埋めにされる。ここまではさっきまでわかっていたことだ。



 となると可能な限り僕たちよりも遠くで<魔力解放>を行いたいところだが...そもそも触れなくてはいけない以上、そんなことはできない。僕が地中深くに行くことなんてできないし、そもそも<魔力解放>すると押しつぶされる問題が解決していない。



 だが...例えば腕を伸ばして地中深くで<魔力解放>を行えれば。その場合は腕が犠牲になるだけで済むし、何よりその腕は魔法でなんとかなるはず。



 しかもその魔法はお姉様という回復魔法の達人だと個人的に思っている人物がやってくれるであろうし、それまでの繋ぎもミ=ゴが完璧な処置を施してくれるだろう。



 またはショゴスがある程度形を保った左腕を再現してくれるか。どちらにせよ傷口については問題ない。



 あとは...ショゴスがそれをできるかどうか。



「まア、できますケど。ただ魔力?ヲ通すとなると私の体ではなくマスターの体でないといけません。おそらく私の体だと私が<魔力解放>サれることになるのd」

「できるのか!じゃあそれで」

「なノで、左腕を完全再現シてそれを伸ばす。もちろン皮膚骨筋肉血液血管神経の全てを。ツまり、シュド=メル様の<魔力解放>によッt」

「腕が潰れて痛みが生じる、だろう?全然平気さ!むしろシュド=メルを直に触るという特別な体験ができるじゃないか!」



 痛み?そんなもの関係ない。むしろ五体分散に近いこととか全身火傷とか食らってきた僕に痛みについて問うなんて愚の骨頂とも言える。



「エえ...」

「さて、それじゃあやろうか。ミ=ゴ、縫合した僕の左腕を切断してくれ」

「了解した」

ドール、ていうのはまあクトーニアンの親戚のようなものだと思っていただければ。



全然姿形は似ていないですが...この異世界に来たらどんな姿になるのかなあ

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