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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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直上掘りは危険

砂利とか砂とか溶岩が落ちてきますからね...

 キイイイィィィン



 という大きな音を響かせながら、ゆっくりと扉が開く。



 結構力をかけているのだけどね、全然開かない。まあ、あの校長とかエリカ先輩がすぐにこの扉を開いている想像が容易なことを考えると、それほどこの世界の平均ステータスというのは高いのかもしれない。そして、今の僕じゃ電波塔よりも高い位置にそれはあるだろう。



 ふと、こんなことを考えてしまう。



「この世界の最強の存在って...誰なんだろう?」

「この星で。という意味ならわからん。だが文字通りこの世界でというのであればかのアザトースということになるだろう」

「だね」



 よくよく考えてみると愚問だった。そんなことを思考していると。



「...ふう。とりあえずこれで通れるかな」



 ミ=ゴの隠れ家からの出入り口の時と同じくらいの隙間ができる。普通に扉が重かったんだけど、この<ダンジョン>では扉が重たくなる仕様でもあるのだろうか。



「まあこれだけあれば通れるな」



 僕が通った後に続いてミ=ゴがギリギリ通り抜け、バーストが余裕で通る。それを見届けた後、念の為扉を閉める作業を行う。



「なぜ扉を閉める?」

「ちょっと前に扉を壊して中に入ったことがあってね...その時、扉のあった場所から<ダンジョンボス>の攻撃が飛んできたんだ」



 閉めながらそう返答する。しかもその攻撃が即死攻撃に相当するものだったからタチが悪い。



「ま、そういうことがあったからっていうのもあるけど、ただただ何かが来てしまった時の備えでもある」

「...<勇者>か」

「そそ。あいつら5人が束でかかってきた時に勝てる方法って、それこそメェーちゃんの<魔力解放>くらいしかないからね」



 あれは味方に対する被害(特に僕)があまりにも大きいし、それに何が起こるかわからない不安もある。



 可能なら戦闘は避けるべきだろう。



「マリア。貴方は<勇者>がここに来る可能性があると思っているの?」



 扉を閉め終わった頃バーストがそう質問してくる。もちろん答えは...



「是。ほら、あいつらきたときにボスがここにって言ってたけど、明らかに>コボルド・オブ・キングウォーリア<がここの<ダンジョンボス>でしょ?だから、おそらくだけど何か他のものを求めてここにきたんじゃないかなって。まあマッピングが終了してなくてこのボス部屋及び宝物庫を見つけられなかった可能性もあるけど」



 と返答しながら宝物庫を進む。周りには金貨と宝石の山々があり、その向こうには何かの台座があるのがわかる。



 金貨の山に近づいて見てみると、やはり今も使われている金貨。宝石も相当高価なものと推測できる。



 売ればいくらになるだろうか...あれか、豪遊できるようになったりするのだろうか。



「まあでも今はそんなことより、とりあえずこの金貨と宝石を可能な限り<インベントリ>に入れる...前に台座見ておこう」



 危ない危ない、一番大事であろうものを見逃すところだった。



 金貨と宝石の山々をかき分けて、ついには台座へと辿り着く。



 台座は大理石でできていて、壁面などがボス部屋と変わらない宝物庫の中でも一際目立つものになっている。装飾は小国であり、これまた美しいと思えるものだ。



 で、持ち帰れは...しないと。付け外しが可能なタイプではないのね。



「そしたらこの台座のどこかに何かが...お、これかな?」



 台座に向かって一直線できた僕たちの反対側。何やら見慣れぬボタンがそこにはある。



 軽く触った感じだと確実に大理石ではない。むしろプラスチックとかじゃなかろうか。



「とりあえず調べ切った感あるし、ボタン押してみるか。みんな、何が起こってもいい様に体勢を整えておいてね」



 ミ=ゴが少しばかり金貨の山に隠れ、バーストが<結界>をすぐに張れるようにする。それが見え、安心してボタンを押す僕。



 カチッ



 という軽い音が聞こえる。すると、なんと台座がゴゴゴゴゴと動き始める。



 台座の中央をみると、台座が開いて中から何かが出てくるのが見て取れる。



 ...これは、宝箱かな。装飾がついてる小さい箱状のもの。



「...一応敵が来ることはなかったようだな」

「まあ宝物庫だしね。そんなトラップは流石にないでしょ」



 とか言ってるが実際はそれをめちゃくちゃ警戒していた。



 というのも、<ダンジョンボス>が結構あっさり死んでいるから。今まで戦った2体の<ダンジョンボス>は、確実に僕が死ぬギリギリまで追い詰めてきた。だが、ここのボスは第2形態があるわけでもなくあっさりと終わった。



 そしたら、ねえ。もしかすると宝物庫内で第2形態かその代わりとなるものと戦う可能性だってあるわけで。



 宝物庫が安全じゃないのは僕が体を張って証明している。魔獣はスポーンしないっぽいけども、<ダンジョンボス>がウリ槍入ってこれると知っているからには、それくらいの警戒はしないといけないだろう。



 まあこんなこと考えてても結局何もなかったしね。切り替えよう。



「さて、とりあえずこの宝箱を開きますか」



 時間制限があるかどうかは知らないけど、あった場合を考えてさっさと行動に移す。



 幸いなことに鍵はかかっていないみたいで、すんなりと開く。そしたらその中身は...






 珠、というのが妥当だろうか。ああ、それが妥当だろう。



 数は1つ、とはいえどもそれはとても美しい緑色だ。だが...



「................」



 体が震える。僕としては思考が染まらないことが不思議でしょうがない。いや、実際にはこの思考で8割は埋まっている。



「...なぜここに?」



 耳を当てるまでもなく、それに違和感を覚える。やけに重く、あまり透き通ってはなく、かつ頑丈なこの宝石のように見えるそれを即座に宝箱に戻す...瞬間。



 ニブニブニブニブニブニブニブニブ...



 地響き。一瞬下からかと思ったが、どちらかというと部屋全体またはそれ以上よりも上から振動が伝わってくるように感じる。



 天井を見ると、ひび割れが起こって破片などが落ちてきて、さらにはそれが部屋全体で起こり始めているので、流石に僕でもこれから...



「崩落か。逃げるしかないな」

「それ以外あるとでも!?」



 宝物庫を見渡し、扉がひとつしかないことを確認したのちにその扉に向かう。



 が、固く閉ざされていて動かない。引っ張ると動くが...これでは逃げ遅れ必至だろう。



 扉を吹っ飛ばして...いや、力担当が寝ている以上、そんなことできる奴がいない。



 あくまでもメェーちゃんの馬鹿力だからこそできたことだ。バーストには流石にできない。



「悔しいですが、ええ。それを認めるしかないでしょうね」



 ほら、バースト様のお墨付きだ。そうなると後は...



「...そういえば。マリアはシュブ=ニグラス様を召喚で呼び出したといっていたが。他の神を呼び出すことはできるのか?」

「...まあ確かにできるけども。でも特定の生物を呼び出すことはできないよ。バーストはそのための<魔法陣>があったからできただけだし何よりメェーちゃんは適当な<魔法陣>で...ああ、いやなんでもない」



 ()()に気がつき、僕は走って台座の方へ向かう。だが天井も限界だったらしく、崩壊が始まってしまう。



 落ちてくる瓦礫、それを避けつつ台座に走る。なんとか最悪の事態だけは防がないと...この場で死ぬことになる。



 それだけはダメだと、自分を鼓舞して台座に意地で辿り着き、即座に宝箱ごと回収。



 金貨と宝石の山々も瓦礫に埋もれてもう拾えない。だが命と比べればマシだろう。



「バースト、ちょっと広めに且つドーム状に<結界>!」



 即座に命令。下した後にショゴスを<インベントリ>から出す。



「ショゴス、確か僕の記憶が正しければ<ネクロノミコン>を投げ飛ばした時にキャッチしたのは君だ。今持っていたりはするかい?」

「イや、持ッてません。あの後保護しようとしましたガ、いつの間にか消エていたので」



 おっと、ということはどこにあるかわからないのか。そしたら今からでも探す他ないな。



「バースト、すまないけど結構時間がかかりそうだからそれまで耐えててくれ」

「無理強いにも限界がありますよ...もうMPが限界に近づいているのですが?」



 っと、それはまずいな。そしたら...



「あ、確かメェーちゃんが<魔力生成>を持ってたな。メェーちゃん、バーストの援護してあげて」

「わかった!」



<インベントリ>から飛び出しバーストのところへ向かうメェーちゃん。



 しかしそれを見ているだけでは何も進まないのが現状。捜索を進めなければ。



<インベントリ>にないのはさっき確認しただろ?ポケットの中には何もなくて、周りにも落ちていない...いや、待てよ。



 右手をみる。そこにはいつの間にか握られていた本が1冊。



 どうやら僕はまだまだ<ネクロノミコン>を自由自在に扱えないらしいが、今はそんなことどうでもいい。



 パラパラとめくる。バーストについて書かれていること以外は白紙...



 だが、なぜかそれ以外の記述がひとつ。そうそれを待っていた。



「ミ=ゴ!ちょっと手伝って!ショゴスも!」

「我が何か手伝えることがあるのか?」

「了解でス」



 もちろん、ありますとも。



<ネクロノミコン>の魔法陣が書かれたページをミ=ゴとショゴスに見せる。



「...あいわかった。これを描くのだな?」

「正解。ただまあ僕に<魔力>で<魔法陣>を描く技術はないから血で描くことになる。ショゴスはこの<魔法陣>の型作り、ミ=ゴは僕の左腕を切り落としてくれ」



 即座にショゴスが変形を始める。どんどん形が出来上がり、その半分に到達したところで、ミ=ゴがその鎌を落とす。



 ...痛い、がまあこれくらいはどうということはないだろう。溢れ出る血を使って液体の<魔法陣>を描いてゆく。



「あ、これが終わったら後で縫合をお願いするね。ミ=ゴのことだ、それくらい余裕だろう?」

「...わかった」



 言質を取ってさらに<魔法陣>を描くスピードを早める。



 というのも、さっきからパリッパリッという音が聞こえてきているからだ。まあそりゃあ崩落がずっと続いているんだ、支えなきゃいけない重さも増えていく。



 だからこそ、早く描かなくては。



 ...描き終わるちょっと前に右手に魔力を込めながら宝箱を開いた状態で魔法陣の中央に置く。



 これは僕の持っていいものではないというのもあるが、何よりも<ネクロノミコン>に珠...やつの卵があった場合の召喚方法が書かれているのが理由だ。まじ<ネクロノミコン>有能。



「...溜まったぞ」



 そうミ=ゴの声が聞こえ、右手の<魔力>を思いっきり<魔法陣>に叩きつける...



 前に詠唱しといた方がいいか。適当ではあるけど、呼び出すやつ決まってるしね。



「すう、ふう...



 。それは地下に蠢く<生き残りしもの>




 。その体で地球の全てを飲み込む外神が1柱




 。さりとて子を育み子を殺すものを許さない母なるものなり



 来い、シュド=メル!」



 叩きつける右手。それと同時に魔力がすわれ体が動かなくなる...ところをミ=ゴが支え、自身の背中?に仰向けで乗せる。



 瞬間、強い揺れが僕たちを襲う。ぴょこんとメェーちゃんが体に乗ってきて、背中にぐったりとしたバーストが見える。



「......お疲れ...様...バース......ト...」



 こっちもこっちでやばい状況なので声が掠れたものになっているが、今現在異常なことが起こっているのは流石に知覚できる。



 そう、結界もないのに全く崩れてこない。瓦礫がまるで互いを支え合っているかのように。



 揺れが強くなる。ここまで近づくと、否が応でも震源がこちらに近づいてくるのがわかる。



 そのすぐ後、<魔法陣>があった場所あるいは卵がある場所に大穴が開く。そして聞こえるのは呪文のような声。



 何度も練習した発声だ。今の状態だとしゃべれないが、ちゃんと声が出せる状況なら言える文言。



 そして、大穴から出てくるのは...何かわからないためしっかりとうつむけの姿勢にしてみる...






 1匹の、細長いピンク色の生物。



 目はなく、鼻もなく、口もなく、触手もない。



 そこにいたのは、予想以上に卵が大きいことに驚いている...ミミズだった。



 ...ミミズ、ミミズか。



「...この子、本当にシュドちゃんなの?」



 多分...そうだと思う。けどまあ眷属という可能性m



 ポンポンポンっと出てくる他のミミズ。最初に出てきたそのミミズよりもはるかに小さい...



 うん、あのちょっと大きめなミミズがシュド=メル...もといシュドちゃんだね。

ちなみにシュド=メルが出てきたのはとある本を購入したからですね。


その本は...シュド=メルについて検索したら出てきます。

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