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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
83/402

信頼≒崇拝

多分ここまでの狂信者はいないと思います。

 ============================================



「落ち着けましたか?」

「ああ。にわかには信じがたいことだがな。冷静にはなれた」

「それはよかった」



 10分くらい狂いまくって、ミ=ゴはようやく落ち着いたらしい。まあそもそも見ただけで狂気に侵される存在だからね、これでもだいぶマシな方だろう。



「だが。まだ腑に落ちないことがある。なぜお前にシュブ=ニグラス様が...」



 そう言いつつ、僕の隣でバーストと一緒に寝ているメェーちゃんを見る。



「しかも。そのような小さいお姿でいらっしゃるのだ」

「さあ?なぜか召喚したらこんな姿だったし、こういう化身もあるってことじゃない?」



 それに...



「それに、そもそも僕たちは絶対に神話生物の全てを理解できない。僕がメェーちゃんのことを完全に理解できるわけがないのと同じように、ミ=ゴにもメェーちゃんのことは完全に理解できるわけがない」

「まあ。確かにそうだとは我も思う...しかし。召喚か。よくもまああっさりと召喚したものだな」

「本当にねえ。たまたま新月の夜だったかもしれないけども、少なくともあそこは森の中じゃないし...」



<ダンジョン>っぽいしね、あそこ。記憶の限りだと出口のドア以外は出入り口がなくて密室だったはずだし。



 あとよくよく考えてみると謎のクリスタルも気になってくる。メェーちゃん自らが壊しに行ったし、しかも壊されたことでメェーちゃんが喋れるようになったように見えたし。



「まあ...深く考えるとさらに謎になる生命群が神話生物だからね、これ以上考えても仕方ない」

「そうだな。なにか理由があるのだろうが。それは確実に我々にすら理解し得ない事柄なのだろう」



 そもそも理解しようとすること自体が禁忌だからね、しょうがない。



 理解し得たら最後.....考えたくもないな。



閑話休題(それはともかく)。確か脳の解剖のリワードとして仲間になってくれ、という話だったな」

「そうだね」



 実際、ミ=ゴの技術はこの世界で大きなアドバンテージになるだろう。魔法でなく科学でしかわからないこともあるだろうし。



 ...死体解剖を行えば、犯人への手がかりになるやもしれん。



「こちらからも要求する。我を仲間にしてくれないだろうか。シュブ=ニグラス様の元にいられるのもあるが。俄然お前に興味が湧いた。もしも対価が必要というのであればなんでもしよう」



 おっと、仲間にして欲しそうな(ないけど)でこちらを見つめてくるミ=ゴ。まあこちらとしては断る理由もないだろう。



 ...ん?そいえば確かにさっきなんでもって。



「じゃあ僕の解剖をよろしくもちろん脳みそ込み且つ意識あり痛みありで」



 食い気味に言うそう僕にとってはミ=ゴの技術体験こそリワードむしろそのためという理由が1番大きいと言っても過言ではない。



「...まあ。別に断る理由もないが。それは本当にリワードとしt」

「僕にとっちゃご褒美です!」

「その状態だとたとえ我々に切り刻まれたとしてm」

「ありがとうございます!」

「少しは話を聞け」



 ============================================



 すごかった。本当にその一言に尽きる。



 痛みありって言ったのもあってとんでもなく痛かったがそれは最初だけ。数十秒たった頃にはもう痛みを感じなくなっていたし、ガンガン僕のことバラしてたのに死ぬ感じが一切なかった。



 脳みそを取り出された時は眩暈がしたが、逆にそれ以外何にも起こっていない。地球の技術じゃ無理があることと言え流石はミ=ゴということだろう。



 そして最終的に臓器やらなんやらを戻すわけだが、戻された後には全く違和感を覚えない。むしろ体が少し軽くなった感触まである。



 というか実際に手術前と手術後の検査で明らかに体重が落ちていた。地球の単位でいうと3kgほどらしいが。



「臓器を戻す前に洗いましたから。臓器の周りにこびりついた脂肪が洗い流されたのでしょう」



 とはミ=ゴ談。臓器の周りの脂肪ですら全く理解できない知識量っていうのもあるけど、やっぱ科学ってすげえ。



「そしてやはりお前の臓器はやはり地球の人間とほぼ同じだな。ただし。一個一個の臓器が持つ筋肉量は違う。比べ物にならないほど強靭なものになっているのはいうまでもないが。特に肝臓が相当強くできている。同様に肉体自体の筋肉量も間違いなくお前の方が上。骨も頑丈かつ健康的であり。これは地球人の140%の強さを持っているに等しく...」



 うーん、わっかんない。なんかベタ褒めされている感じはするけど、詳しい数値まで引っ張り出されても全然理解できん。



「...総合的に見て。だいぶエネルギー変換効率の高い且つ運動性能の高い体だ。戦闘を行うことに特化しているともいえるが。この世界では戦闘を行わなければ生きていけないからな。そういう進化の道のりを辿っても不思議ではないだろう」

「はえー...」

「だが。やはりまだまだサンプルが足りん。お前...マリア・ヒルドは転生者且つ魔王且つシュブ=ニグラス様の乳と思われる飲料摂取済みというこの星どころか宇宙中でも本当に珍しいタイプの人間。できれば戦闘にあまり関わっていない一般人のサンプルが欲しいが...」



 ...なんか、こうやって羅列させられると本当にすごい体験ばっかしてるな、僕。



 絶対そうはならんやろっていうことばっかのこの世界ですら珍しい状況だもんね。仕方ない。



「...まあいい。協力に感謝する。マリア・ヒルド。あとはこれを仲間に報告する。少し待て」



 そういうと、ミ=ゴはその場で静かになる。テレパシーで他のミ=ゴに色々と伝えているのだろう。



 こうやってテレパシーとか読心とかできるとメェーちゃんたちとも会話しやすくなるんだけどね。多分スキルか何かにあるんだろうと思うけども、そこら辺は調べないとわからないだろう。



 あ、そういえば服ってどこなのだろう。さっきからずっと裸、と言っても一応白い布のようなものはかけてもらってるけどまあ寒い。



 一度部屋を出る。やはりというかなんというか、ここの施設は<ダンジョン>の深層を利用しているものらしく、ちょくちょく侵入者が現れるらしい。



 そしたら捕まえて解剖、記憶消して入り口に戻す。こんなことを3ヶ月ほどしてたとかなんとか。よくもまあバレなかったねとは思うけど、そもそも<ダンジョン>ボスを倒すとここが崩壊することを考えるといつでも外に出られる方法と湧いてくる魔獣を撃退またはそもそも湧かせない方法がないとこんなこと3ヶ月もできないだろう。



 魔法以上に未知に溢れてるな、科学って。そんなことを思いつつ、服を探す。確かこっちの部屋に荷物とかを置いていて...



 お、あったあった。制服の状態で寝たのかどうか覚えていないが、少なくとも目の前にある僕の下着と制服一式を着る。



 寮には着衣室とかいう便利装置はない。よって自分で着るしかないから、ちゃんと制服の着替え方も覚えている。まあ節約のために制服の着替えは自分で行うよう言われてたんだけどね。



「ん、しっくりくる」



 何度も死線をくぐり抜けたのもあって、すでにボロボロで所々赤い。だがだからこその安心感が生まれるというか、これを着てればなんとかなるという感じというか。



「さて、とりあえず服着たし、ミ=ゴのところに戻らねば」



 廊下に出る。と、なぜかさっきより寒く感じる。



 血が滲みてるのもあって服が軽く濡れていて、ていうこと?いやでも流石に裸の時より寒くなることは...





 ドダドダドダドダ



 その音が聞こえた瞬間、走ってミ=ゴのいる部屋に戻る。



「ミ=ゴ!」



 そこにはいまだにテレパシーで話してるミ=ゴが。確実に何かが起こっているのに気づいていない様子だが...



 ドダドダドダドダ!!



 音が大きくなる。一応ドアの方を見て警戒をしつつ、ミ=ゴに触れる。



「ミ=ゴ!ちょっと戻ってきて!」

「む。なんです...まずいですね」



 即座に机の上にある機械をいじり始めるミ=ゴ。



 とりあえず生きていることは確認できた。そしたら...



「ショゴス、状況を探ってきて」

「了解デす」



 本が液状化、扉の隙間から外に出る。とりあえずこれで状況把握はできるだろう。



「ショゴスまで...やはりあなたはとても良い研究対象ですね」

「戯言は後。この状況ってやっぱり」

「予想通り。魔獣がジャマーを蹴破っている。だが被害が相当大きいのを鑑みるに...」

「っ!強力な魔獣か!」

「この施設は最下層、つまり<ダンジョンボス>のいるボス部屋がある階層です。なのでおそらく<ダンジョンボス>が蹴破ったのかと。しかし。<ダンジョンボス>がボス部屋から出る前例など...」



 その時、自分の意識がある時間からみて昨日に当たる時間を思い出す。



 そう、あの<ダンジョン>では...



「......設定された何か()を踏んだ場合、<ダンジョンボス>がボス部屋から出てくるギミック。可能性はあるし実体験もした」

「なるほど。そういったものを踏んでいないことは確実に証明できる。だから外部の何かが踏んだ可能性が高いな」

「<ダンジョン>だからね。探索しにきた奴らが踏んだ可能性は非常に高い、か」



 もちろんここで籠城とかあり得ない。そのための資材が圧倒的に足りないし、あったとしても確実にどっかで尽きる。



 つまり。



「脱出方法は?」

「ある。なかったらこのような危険地帯に造っていない」



 でしょうね。ミ=ゴとかいう知能の化け物が最悪の状況を想定していないわけがない。



「戻りまシた」

「ありがとう。外どんな感じ?」

「相当まずイと言って問題ないかと。いくつかの扉ガ粉々になってますし、それに<ダンジョンボス>であロう存在がこの施設の外を彷徨いているのを確認できました」

「粉々かあ...機械類はどうするの、ミ=ゴ」

「放棄する。そろそろ替え時のものではあったから問題ない」



 じゃあ荷物関連は問題ないか。あとは...



「脱出経路は?」

「それについて残念な報告だ。先ほどショゴスが言っていた通り。すでにいくつかの部屋の扉が壊されている。脱出経路のあった部屋もすでに魔獣だらけ。入ることは極めて困難だ」



 わあお、だいぶまずい状況じゃん。



 てかこの場合の脱出って...



「正面突破ってこと?」

「しかない。あとそこの扉。振動などが伝わってこないせいで大丈夫なように見えるだろうが。あと10秒ほどで壊れる」

「メェーちゃん!バースト!」



 臨戦体制を即座即座に整える。



 瞬間、



 ドオオオオン!



 と大きな音を立てて扉が壊れる。



 そして出てきたのは、なんか狼、いや野犬が人型になったような姿の魔獣。



 手には剣やら弓やら盾やらと武装しており、入ってきた奴らの一部には鎧をつけているやつもいる。



「なるほどね、<コボルド>ってやつか」



 戦闘時だからこそ冷静に。狂気に陥っては抵抗もままならない。



 この状況を切り抜けるためにも、生きるためにも。

コボルド戦、スタートです。

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