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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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邂逅邂逅

邂逅って、わくらば、とも読むんですね。知りませんでした。


意味はたまたまとか偶然とかだそうです。

「ここ最近の"誘拐/殺人事件"の犯人はお前か!」

「いやいや、僕じゃないよ。というか、さっきまでベットにこの姿で縛りつけられてたんだからね?」



 ふむ、"誘拐/殺人事件"とな。なんだか守護騎士団団長に聞いたあの殺人に関連しそうだけど...誘拐については団長からは何も聞いていないもんな。



 あ、そういえば寮に入る前に女性の悲鳴が聞こえてたけど、なにか関連性はあるのかな?



 いや、でも誘拐の部分は確実にミ=ゴの可能性が高いな。多分僕が寝ている時に拉致とかしたから今ここに僕がいるんだろうし、被験者なんとかって言ってたから被験者が他にもいる可能性はある。



 ただ、殺人はミ=ゴではなさそう。もし被験者が死体になったとしても、丁寧に元の場所に戻さなそうだし。



 バラバラの事件を一つの事件して扱ってそうだね。確証はないし今はどうでもいいけども。



「我を無視して会話にふけるとは。ふざけたものだ」



 ミ=ゴが右の鎌で薙ぐ。飛び退くことで避ける勇者前衛。



「会話くらいさせてもらってもいいじゃないですか。貴方も喋ることができるのですから、その気持ちも...」

「わかるわけが無い。我を貴様らのような下等生物と同じにするな。だから下等生物は下等生物のままなのだ」

「なんだと!」



 ...勇者達は理解していないが、実際にミ=ゴからしてみれば人間は下等生物だ。



 人間が絶対に辿り着けないと言わしめるほどの優れた技術を持ち、そして口で会話せずにテレパシーで会話するのだからね。



「そうすぐ激昂する。もう少し自らの感情を抑えてはどうだ」

「俺たち人間は下等生物なんかじゃねえ!どちらかってぇとな、食物連鎖の頂点にいるんだよ!」



 シーフの短剣による斬撃、それに合わせて複数の攻撃が同時に飛んでくる。



 長剣による袈裟斬りに<火球(ブレイズ)>、そして...それだけか。弓のやつは構えているだけで何もしていないからね。



 が、それを全て弾く。特に<火球>は完全に霧散させていたのを見るに、本当に僕を守る気があるのがわかる。



「くっそ、こいつ強いぞ!」

「当たり前だ。貴様ら下等生物に我が負けるわけがないだろう。だが。その魔法というものだけは評価してやろう。我々のたどり着いた星々にもいくつかには魔法があったが。ここまで複雑なものはなかった。それにこの星の形状...とても興味があるぞ」

「...一体何が言いたいのかはわかりませんが、少なくとも和解できなさそうなのはわかりました」



 おいおい、理解を拒んでどうする。



 目の前にいるのは人智には理解し得ない超文明を築いた種族、その亜種だぞ。どうしてその知識がすごいものであるとわからない?



 そんなことを考えているうちにも戦闘は続く。しかしそのどれもこれもが全くミ=ゴには通用していない。それどころか、攻撃の合間を縫って鎌の斬撃を行うミ=ゴ。



 この世界には魔獣が闊歩しているからね。そういえば勇者のドア前での言動で結構ここにくるまでに消耗していた。それを踏まえると、ここは<ダンジョン>である可能性もあるしミ=ゴがここまで戦闘慣れしていても説明がつくだろう。



 基本、戦闘しないからね。有事の場合は仕方なくするけども、それでも戦闘経験が豊富であると予想できる勇者5人と互角どころか有利に戦えるわけがない。



「っ!まだなの、<完全射出(パーフェクトショット)>は!」

「あともう少しです!」



 お、<完全射出>っていったらあのアホ魔王をぶっ殺した技か。



『気をつけろよ、<完全射出>は魔王すら殺したやばい<魔技>だ。貴方でも食らったらまずいことになる』



 日本語で忠告しておく。流石に勇者たちにミ=ゴの味方をしているのがバレたらまずい。



「...お待たせしました!<完全射出>!!」



 放たれたその矢は風を、炎を、水を、土を纏ってとてつもない勢いでミ=ゴに迫る。



 ...ところで、あの弓使いはおそらく遠距離攻撃特化の存在。普通なら数10mくらい離れた位置からチクチクと矢を放つことだろう。



 だが、今の状況ではそうもいかない。ソルス・バミアがある程度守るような立ち回りをしないと鎌が当たってしまう位置にいなければいけないくらいこの場が狭いのだ。



 つまり、避けることがすでに不可能。そもそも避けたら僕に当たるのは無視するとして、そうなると撃ち落とすくらいしか無効化する方法がない。



 だが...それをわかっているかのように、左右から同時に剣撃が飛んでくる。つまりはどれかが絶対に当たる状況。






「下等生物らしい作戦。が無意味だ」



 矢を両方の鎌で撃ち落とすミ=ゴ。そして左右から迫ってくる剣撃がミ=ゴの体を捉えて...



 食い込んだ剣は、弾き飛んだ。まあ、でしょうね。



「2度目ですが。お前たちでは我に勝つことはできない」



 そもそも、ミ=ゴの体は地球のどの物質とも違う。そりゃそうだ、彼らの文明は地球とは違うのだから。なのでほとんどの武器が彼らに対して通用しない。



 そして、この世界に存在する物質ともおそらく違うだろう。だからこの世界の武器のほとんどは彼らに通用しないのだろう。魔法は効きそうだけども、当てるための工夫が必要だろうし何より当たってはいけないものを重点的に防ぐだろうからね。



 だからこそ、さっきの矢を両鎌を使って防いだのだ。流石に当たってはいけないものだから。



「...確かに。覚醒していないとはいえ聖剣が効かないのは勝ち目が薄いかもしれないですね」

「では。大人しく我々に...」

「ですが捕まるわけにはいきません、私たちは勇者なので。カミラ!」

「...ほんと、ギリギリで<魔力>を残しておいて正解だった。

 。我が力、与えし神よ

 。さらに強き力を貸したもうことに謝の意味を込めて

[<転移テレポート>」



 勇者達が光る。そしてすぐにその場から消え去る。



 後に残ったのは、戦闘の余波で散らかってしまった部屋。



「テレポート...魔法とはやはり研究しがいのあるもののようですね」

「地球には全くもって存在しない未知のものだからね。最も、貴方達の世界にあるのかは知らないけれども」

「知りたいか?」

「知りたいけど、今知ったところで何があるわけでもないし」



 ミ=ゴの世界の魔法を知ったところで、僕の実力に何か影響のあるものではないだろう。



「ふむ。それは残念だ。被験者■■■■...さて。それでは実験を始めるわけだが」



 あ、始めるんだ。結構散らかってるし、流石に片付けてからじゃなきゃできないと思うけども。



 と思った矢先、ミ=ゴは手作業でベットや機材を元の位置に戻してゆく。何度かやったのかはわからないが、かなり慣れている様子だ。



「片付けをおこなっている間に説明しておこう。今回行うのは解剖だ。何。無事終わったのならしっかりと元の場所に戻してやる。もちろん痛みはない。なおお前に拒否権はないことは留意しておくように」



 わお、つまりはいつも通りに外科手術をすると。なるほどねえ。



「質問。具体的にどこの部位を解剖するの?」

「右腕右脚。それと胴体だ。首から上を本当はやりたいが。流石に未だわかっていない体を解剖するのに難易度および危険性の高い手術を。それもかなり協力的な被験者にやるわけにはいかない」



 ほうほう、つまり脳みそもやりたいわけだ。なるほどねえ...



 うまくやれば、もしかして。



「じゃあもしも僕の脳みそも見せてあげると言ったら?」

「.............何?」

「だから、僕の脳みそも解剖してどうぞって言ったんだよ」



 ぶっちゃけミ=ゴの解剖で失敗なんて考えつかないし、何よりミ=ゴの解剖で失敗して死亡なんてある意味で超珍しい体験をして死ねることになる。



 本望だ。



「...先ほども言っただろう。今回行うのは右腕右脚と胴体だ。それ以上のことを行うにはお前にリワードを用意しなくてはならない。この世界では死ぬことはかなり日常茶飯事。地球でなら頭部以外にもリワードを渡すが...」



 きた。これなら...



「なら、僕から渡して欲しいものを提示するとしよう」

「...なんだと?」






「僕の仲間になってよ、ミ=ゴ」



「......」

「......」



 しばらくの、静寂。



「...お前、それが狙いだな?」

「うん」



 正直に答える。彼らに隠し事は無意味だ。



 その知能で怪しまれると、ほぼ逃げ場がないからね。



「...その誘いは実に魅力的だ。なぜお前が我々の種族名を理解しているのかにも興味が湧いてきたからな」

「お、つまり」

「だが。断らせてもらおう。頭部の解剖による利益と仲間になる不利益が釣り合っていない」



 むう、めっちゃ真っ当な意見だ。確かに釣り合ってないが...



 ふむ、そういえば。



「あ、ところで貴方はどの神様を信仰しているのですか?まさかこの世界の聖神を信仰しているわけではないでしょう?」



 ミ=ゴって一部神話生物を信仰対象にしているはずだったな。していないミ=ゴもいるかもだが、確かその中でも信仰している者が多いのって...



「...それがどのように関係があるのかはわかりませんが。お前はかなり協力的だからな。教えてやろう。シュブ=ニグラス様だ」



 はいビンゴ。



「もう一つ。僕の<インベントリ>に入っていたものはどこにある?」

「それなら別室で保管させてもらっている。危険物があると何が起こるかわからないからな」

「それを取ってきてもらっても?ああ、それが確認できたら元に戻してもらって構わない」

「...まあ、それくらいならいいだろう。言っておくが、これはかなり特別待遇だからな?」

「わかってるわかってる」



 部屋を出るミ=ゴ。一応元に戻されているベットに横たわっておく。



 あ、解剖の時に意識だけはそのままにしてもらおうかな。痛覚は...うーん、悩むなあ。



 多分すっごい痛いよね。解剖とか手術とか受けたことないけど、少なくとも虫歯予防とかじゃ味わえない痛みだろう。



 だが...ミ=ゴが行うとなると話は別。痛みもありでやってミ=ゴの解剖の体験を完全に覚えるのもありだ。



 悩むなあ...どうしようかなあ...うーん...



「待たせた...何を悩んでいる?」

「いやね、解剖の時に痛覚の切断をなしにしてもらおうかなって」

「そんなことを言う生物を見たのは初めてだ」

「だろうね。流石にミ=ゴでも痛覚だけは切るだろうし」



 まあ、それは後で考えよう。問題は、今ミ=ゴが持っている物だ。



 人形、猫の剥製、本、お金。うん、全部揃ってるね。



「本当に全部あるね。おk」

「確認したな。ではこれは保管庫に...」

「ああいや、ちょっと待って」

「?」



 ミ=ゴの方に行き人形を手に取る。



 かなり冷たい。だがそれは普通のふわふわな人形では味わえない冷たさだろう。



 だから、まあこれはメェーちゃんだと断言できる。



「起きて、メェーちゃん。そろそろ起きないと朝ごはん抜きだよ」



 多分これで起きる。試したことはないけd



「え!?無し!?」



 ...大食いの人にご飯抜きは辛いからね。



 瞬間、ガタン、という音。



 ミ=ゴが本と剥製を落とした音だ。最も剥製は華麗に着地しているが。



「...はあ。扱いが雑ですよ、ミ=ゴ。それでも上位種族ですか?」



 ほら、バーストだって呆れてる。



「ちゃんと神話生物は丁寧に扱わなきゃ、ねえ」

「うんうん」

「■■■■■■■■■■■■」



 その頃一方ミ=ゴは相当慌てふためいている様子だ。



 まあミ=ゴレベルの知能を持つとね、おそらく今までの質問と考察を踏まえた推理だけでメェーちゃんの正体を当てることができるのだろう。



「あ、この方がメェーちゃんことシュブ=ニグラスです」

「(絶句)」

推しに出会えたファン、その上位進化系の反応です。

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[一言] 脳に痛覚はありませんぜ、へへ
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