赤ちゃんは大切に
この次からは、もうちょっとずつ長くしたい
「■■■■■■■■」
どこからか聞き慣れた声がして、ふと我に返る。
まあ聞き慣れたとは言っても全く聞き取れないのだが。
時計の類が自分のいる部屋には、少なくとも見える範囲にはないのでわからないが、おそらく夜なので寝ているか見に来たのだろう。
とりあえず、寝よう。変に夜ふかしせずに。子供は育つことが仕事とも言うしね。多分赤ちゃんにも通じると思う。
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「■■■■■■■」
いつもの、聞き慣れた声。だが妙に浮かれている声で、今日も起きる。
そういえば、この声のトーンは聞いたことがある。たしか……
おおそうだ。兄の誕生日のときのトーンと似ている。
ふむ。ということは、だ。
(今日が僕の...誕生日)
赤ちゃんなのに精神年齢は高校二年生という、こんな矛盾はなかなかありえないことだ。もっとも、こんなことがぽんぽん起こってしまうのは、それはそれでおかしいけども。
「■■■■■■■■■■」
なんて言っているのかわからないが、顔がとてもいい笑顔になっているからものすごく嬉しそうではある。
そういえば、兄の時もこんな感じの笑顔だった。親の気持ちはわからないけど、子供の誕生日は素直に嬉しいのだろう。
「カラーンコローン」
「!?!?」
急な、鈴、いや鐘の音!? 急すぎてめちゃくちゃおどろいたんだが!?
と、おもっていたら視界が端から崩れてって、な、なんだこれー!?
「■■■■■■■■!!!」
え?え?今自分はなにをいったの!?というか自分でもわからない言語発する普通!?
あ、まって、なんかどんどんへやのでんきがよわくなってる。いや、でもここにはでんきがなくて……………
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急に、目の前が明るくなる。電気がついたとかではなく、意識が覚醒したことで視神経が回復し光をとらえるようになったからだ。
自分にとって意識の消失と回復は一瞬だったけども、冷静になるのには十分だった。というか、冷静になるまで永遠みたいな時間を過ごした。何もできない時間を永遠に。まるでそれは、深淵のようで……
兎に角、僕は冷静になることができたんだよ。うん。
とりあえず、あたりを見渡すとしよう。
真っ白な空間なわけがなく、いつもの場所にいるようだ。
だが何時間気を失っていたかわからない。もしかすると母親が動転しているかもしれない。その時はちゃんと事情を説明して………
いや、そういえば僕はこの世界の言語がわからないんだった。
「■■■■■■■■■■■■■」
いつもの、理解できない言語。だけどこの言葉を聞くとやけに安心する。やはり親の存在は大きいのだ。
というか、軽く涙まで出てきたよ。
「■■■■■■■■■!!!」
さっき(多分結構前)も聞いた、自分の口から出ていることが信じられないようなわけのわからない声。が、こうやって冷静に、いや絶賛号泣中ではあるんだけども。
ただまあ、少なくとも慌てるようなことじゃなくなった。だってまあ、自分の声だしね。
そうやって心を落ち着かせていくと、だんだん涙が引いていった。
「■■■■■■■■■」
少しずつ音が戻ってきた。涙で見えなくなっていたまわりもだんだん見えてくる。
どうやら、母親は自分が泣くたびに持ち上げてあやしていたらしい。まさか持ち上げられる感触もなくなるとは。
母親は僕が泣き止むのを見ると、ホッとした表情を浮かべていつものベットにのせてくれた。
そして、僕と兄が寝ている部屋をあとにした。と、思っていたら。
「■■■■■■■■■■!!」
言語はわからないけども、それでもその声に怒りがこもっていることはさすがにわかった。
いや、比較的ドアの近くにあるから聞こえるのかもしれないし、なぜ怒っているのかも理解できなくもないから泣いたりしないけど。
もし兄が聞いていたら号泣もんだよ。うん。
他になにかは………聞こえないか。まあ赤ちゃんもいるししょうがないよね。
ああ……少し、眠くなってきた………もしかすると…そういう時間なのかもしれない………
そうして、マリアは眠ったのでした。