量と質
今回は結構痛々しいかも。火傷の時と比べると一瞬ですが。
「「「「「ガウガウガウ!!」」」」」
群れというべきかなんというか。その大群の奴らは結構頭が良いらしい。
というのも、<結界>を維持し続けている僕を集中的に攻撃し続けているからだ。
ガキィン!ガキィン!
牙がその<結界>を破ろうとめちゃめちゃに噛みついてくるが、そもそもこの<結界>はバーストが作ったもの。そんじょそこらの攻撃じゃ壊れることはない。
やはり、あの森海王がおかしいだけであった。その事実だけでもホッとできるが、まあ今はそんなことをしている余裕はない。
...今こうやって攻撃を維持している<結界>で防いでいるからわかったことだけど、どうも維持している<結界>を攻撃されると、それに応じた分のMPが減らされるらしい。
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 6
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
[パーティ] <ギルドズパーティ>
<クエスト>:殺人鬼の捕獲 受注中
[ギルド] <未来団>
[到達点] Lv11
HP 105/105 MP 40/120
ーステータスーーーーーー
筋力 26
体力 25
敏捷 15
知性 50
精神 399
魔力 121
ースキルーーーーー
言語 Lv37
召喚魔術 LV50 (2)
応急処置 Lv50
耐性 Lv50
結界術 Lv10
(魔王の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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ほら、学園に遅刻した時にはMAXだったはずのMPも、すでに残り1/3という悲惨なことになっている。
まあ維持しているお陰で[結界魔法]は取得できてるっぽいけどね。確認する余裕は今の所ない。
というか、そもそも今僕は<魔力撃>の授業中。<結界>の練習ではなく<魔力撃>の練習をしなくちゃならないだろう。
そもそもここにきた理由はそれだし、おそらく、あの校長ならこの状況をもう一度とか平気でやらせるだろう。
...やるしかないか。だけども、<結界>の中にはアキ先輩がいて維持は必須...
「バースト!<結界>の維持を頼めますか!」
「いいですけど、一体何をするつもり!」
シュッ、っと素早い身のこなしで戻ってくる。さすがバースト、この程度の風にはびくともしない。
「僕は前線に出て<魔力撃>の練習をします!バーストは気絶しているアキ先輩を守るために<結界>の維持を!」
「は、はぁ!?」
「よろしくお願いします!」
と言って<結界>の外に飛び出す。
風が、強い。これは<結界>がなかった戦闘前と同じだろう。
だがそれ以上に目を見張るのは、その景色。
今まで僕たちが相手にしていたのは、確かに犬系の魔獣。そう、犬系の、小さな、魔獣。
...奥の方、まるでカーペットのように敷き詰められた犬の向こう側。
カーペットを、歩くもの。それがいた。
ドシン、という音は聞こえる。歩くたびにそれが聞こえてくるし、それすなわち超でかい。
...考えるだけ無駄だな。今は目の前に集中しよう。
だいぶ減ってきたのか、今僕の周りにいて且つ僕を停滞認識している奴は......5体。
その他のやつはメェーちゃんとショゴスが蹴散らしている。潰されたり、溶かされたり。
だからまあ、草原は血に染まっていた。真っ赤だ。
というか初っ端から5体同時て。
と思うのも束の間、3体ほどの犬が牙をこちらに突き立てようと飛びかかってくる。
「「「ガウウ!!」」」
それをすんでのところでしゃがんでかわす。思いっきり頭狙ってたな。
でえーと確か、一点に溜め込みそれを解き放つ、だったよね。
手を握り締め、体内の<魔力>を動かすよう集中する。
が、思うように<魔力>が動かない。なぜ?
おそらく、集中できていないからだろう。今さっき敵の攻撃を避けたばかりだし、僕がkpならそうしてる。
「「ガウガウ!」」
その瞬間、もう2体の犬が飛びかかってくる。まずいぞ、すでにしゃがんでいる状態である今のままだと避けられない!
と思った矢先。
バシン!
という勢いのある音。見ると、そこにはショゴスがいた。
「マスター、ご無事ですカ?」
「あ、ああ。僕は大丈夫。ありがとね、ショゴス」
な、なんとか窮地は脱したか。最も、まだ3体ほど僕に対してヘイトが向いているけども。
「ショゴス、とりあえず他の3体は僕が相手をするから<結界>の守護をお願い」
「わかりマした。ゴ武運を、マスター」
そのままショゴスは他の所へ移り、暴れ始める。いうてショゴスも神話生物、この程度の魔獣には負けないだろう。
さて、そんなことよりも、だ。
「「「ガウウウ...」」」
唸る3体の犬。よく見ると犬というよりも狼と言った方が正しいような気がしてきたが、どっちもイヌ属なんだし問題はないだろう。
あるとすれば、この3体をどうにかするという問題だ。
もう一度右手を握り締めて<魔力>を集める......なるほど、どうもあの犬たちはショゴスを見て少しだけ畏怖しているらしい。現に腰がひけているし、さっきから唸ってばっかだ。
どんどんと集まる<魔力>、ただどうにも一点に集中させることがむずがしい。<魔力>を物に流す、例えば本状態のショゴスに流す行為はずっとやっているから慣れている。でも、その行動を今やっているのは手と腕ではなく腕だ。
水の流れる川を堰き止め湖を造る、この時に対策をなんにもしていないと周りが決壊するように、手という壁が機能せず、少しずつ<魔力>が溢れ出てくるのだ。
右手が震える。まるで押し寄せてくる魔力の波を我慢するかのように。
...そういえば、僕はどこまで魔力を溜めればいいか知らないな。うーんと、確か校長の時は手が光っていたよね。
それだけ溜めればいいってことかな。じゃあその間って、
「ガウ、ガガウ!」
1体の犬が恐怖に打ち勝ち襲いかかってくる。今度は飛びかからずに、真正面から突進。
上にジャンプ、はダメだな。当たった時にガードが難しくなるから......可能な限り引きつけての横跳びにかけるしかないか。
まさに猪突猛進、もはや後のことなんてこの犬は考えていないだろう。恐怖に打ち勝った、だから相手を殺す。それだけ。
...ギリギリ。そうギリギリで、溜めている右手を保護するために右に跳ぶ。ギリギリすぎて避けられなかったけど、まあ左足に噛みつかれたくらいだ。
それに、なんとか1体目を遠くに蹴り飛ばしたし。
「ぐうっ!」
倒れる体。バランスを崩したのもあるが、何より現在進行形で血を流している左足が原因だ。早急に止血をしなければやばい状況になるのは必然だろう。最も、右手が今使えない状況なので止血が難しいが。
しかもまあ痛い。けども、この言葉を何回連呼したかわからないが結局全身やけどよりは痛くない。そう思っていると、自然に痛みが引いてくる。
だが、後もう少しだ。チカチカと光始める手。強さはまだまだだが、これくらい溜まればもういいんじゃないか。
というか、そろそろ右手が限界を迎える。震えが止まらないどころか、その震えで腕全体が震えてきてしまう。
左手でなんとか右腕を押さえる。なんか厨二病っぽいが、実際に震えているのだから仕方ない。
「「ガ、ガウ!」」
僕が倒れたのを見て2、3体目も襲いかかってくる。さっきまでなかったよだれを見るに、確実に僕を仕留められるとおもているのだろう。
だが、それは叶わない。なぜなら襲ってくることくらいは僕でもわかっているからだ。
弱っているやつ、または孤立しているやつを多数で追い込むのはとても理にかなっている。確実に相手を1匹落とせるからね。
でもね...それはあくまでも本当に弱っていて動けないやつを狙う時のみの方がいい。なぜなら、だ。
襲ってくる奴らに向けて右手を向ける。若干3体目の方が速いからそちらを狙って...
「「ガウウウウ!!」」
飛びかかってくる犬。その牙が僕に当たる直前、右手が犬に触れる。
すでに右手の光は激しい点滅を繰り返していて、爆発寸前ではあった。
だからまあ、あとは解放するだけだろう。
「...<魔力撃>!」
校長も言っていたように、<魔力撃>は魔法ではない。だから、別に使う時に名前を言う必要もない。まあそもそも魔法を使う時に名前を言わなきゃいけないルールがあるのかすらも知らないけども。
だけどまあ、気合いを入れるために叫ぶ。抑えていた魔力を解放しようとした瞬間、暴れるようなうねりが手の中にいたから。
そして、腹に触れている手を解放する。
刹那、手が爆発する。まるで手榴弾を握っていてそれが爆発したかのように。
で、まあ当たり前だけど直撃した奴らは被害がすごい。
「「キャイイィィン!」」
「がっ、はっ!」
もちろん奴らの中に僕は含まれている。まだ僕は6歳、腕の長さは30cmくらい。
それを至近距離と言わないのなら、1mくらいの2体目は至近距離ではなくなるのだ。
飛び散る3体目と2体目の体。ただ2体目はいいとしても3体目の吹っ飛んだ体のパーツが僕に向かって降り注ぐ。
そんなことが起こったら、まあ骨が僕に刺さるわけで。
「ッ!」
声にならない悲鳴。初めて全身火傷より痛いのをくらう。
腹、それも思いっきり下腹部。腎臓の辺りを肋骨らしきものが貫く。
それと同時に折れて尖った骨が右肺に大穴を、もう一方の骨が左腕に杭を打つ。
しかも右腕は完全に消滅、3体目に噛みつかれたことによって右足の太ももも6割減。
はっきり言って、致命傷である。五体+胴のうち頭以外が死んでいるという最悪の状態。
だがまあ、生きているんだけどね。この世界だと本当にHPが尽きない限りは肉体的に死なないらしい。
実際に、霞んではいるものの目の前は見える。一応ステータスを見るか、この状況だと何もできんし。
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 6
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
[パーティ] <ギルドズパーティ>
<クエスト>:殺人鬼の捕獲 受注中
[ギルド] <未来団>
[到達点] Lv11
HP 5/105 MP 0/120
状態異常:身体欠損
ーステータスーーーーーー
筋力 26(-13)
体力 25(-13)
敏捷 15
知性 50
精神 421
魔力 134
ースキルーーーーー
言語 Lv37
召喚魔術 LV50 (2)
応急処置 Lv50
耐性 Lv60
結界術 Lv10
(魔王の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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残り、5。やばいね、もう小パンで死んじゃう。
「マリア!」
メェーちゃんの声が聞こえる。というか、初めて僕の名前を呼んでくれた?
「ああ...大丈夫、ではないね」
喉の痛みに堪えながら、一応僕の現状を説明する。まさか初<魔力撃>が暴発とは。
「うん......うん、ちょっと待ってね!」
その説明が終わると、何かを取り出すメェーちゃん。色が黒。いや暗闇。違う、深淵の液体、それが中に詰まっている小瓶だ。
...あ、全身やけどの時に飲んだ薬と似てる。あれは確か紫だったけど。
やっぱメェーちゃん由来のなんかだったか。
「飲ませるよ!」
と言って小瓶の破片と共に液体を口に流し込むメェーちゃん。さっきから喉が痛いのにさらに口が裂ける。
だが、小瓶の効果は絶大だった。
どれくらいかというと、まずすっかり痛みが消えた。
そう、一瞬で。しかも、これだけでは終わらなかったのだ。
おっくすりおっくすり美味しいな!




