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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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学生のお仕事

人によって違いますよね。

バイトとか、勉強とか、遊ぶこととか。

「ふむ、初日から遅刻とはいい度胸だ、マリア・ヒルド」

「すみません...」



 あのあとすぐに学園内に直行、死体製造機を乗り越えた後に飛ばされた先は教室内。だいぶ急いでいたのもあって、およそ20分くらいで到着した。



 だが、結局遅刻である。校長も言ってるけど、初日から遅刻はないでしょうに。



「まあまあ、多分マナちゃんかエリカちゃん絡みのことで遅れたんですよ、きっと」



 そうそう、アキ先輩もそう言ってるし。



「だろうな...全く、確かあいつらも遅刻しているはずだからな、後で問い詰めることにしよう」

「ほどほどにしてくださいね、校長先生」

「あはは......」



 言えない。エリカ先輩の片付けが下手で、ものすごく時間がかかっただけとか言えない。



 なんなら崖下り(命綱なし、落下=死)があったからというのもあるが。



 ...まあ、後のことはエリカ先輩達がなんとかしてくれるだろう。



「さて、遅刻とは言えどもまだ授業は始まっていなかったからな。今回は目を瞑るが、次からは容赦しないからな......それでは今日の<戦闘>を始めるとしよう」

「よろしくお願いします!」

「よ、よろしくお願いします」



 そして、学園生活は静かに幕を開けたのだった。



 ============================================



「そもそも<魔力撃>とは、<魔力>...空間に存在するものでも体内に存在するMPでも問題はないが、それらを一点に溜め込みそれを解き放つ技術の総称だ。剣だろうと、拳だろうと、どちらにせよ<魔力撃>となる」



 校長はそう言うと、突然拳を握りしめる。



 すると、その拳が徐々に光り始めた。魔力を拳に溜め込んでいるのか。



「たとえばこのように、な!!」



 光が消えたタイミングで拳を教壇に叩きつける校長。その瞬間、ものすごく強い光が拳を中心にほとばしる。



 その光はいつの間にか慣れていた<インベントリ>関連の光とは月とスッポンレベルの違いがあり、目が眩んでしまう。



「うわっ!」

「わわわ!?」



 ...そういえば、<魔力撃>って今年できたばかりのやつだったっけ。そりゃアキ先輩も初めての体験になるのか。



 まあいい。少し眩しさが減ったので目を開けてみると...






 バラバラになった教壇、その近くで仁王立ちしている校長がいた。



「すっご...」と言う声が漏れ出す。教壇のバラバラ具合は、もはや教壇であったことを伝えない限りわからないレベルであり、しかも拳には傷ひとつついていない。



「一体どうなったの...ってわあ!?」



 アキ先輩もようやく目を見開いて驚いている。あの教壇の硬さが一体どれだけのものだったのかは知らないが、前世の硬さを基準に言うならばすごいのだろう。



 少なくとも、何もない状態の拳1発で教壇を上からバラバラにした人間は見た覚えがない。あったとしても覚えていないだろうけど、どちらにせよやばいことをやってのけたことに違いはない。



「これが、<魔力撃>だ。極めればこの程度、余裕でできる」



 あ、でもすぐにあの火力が出せるぶっ壊れではないのね。よかったよかった。



 流石にそうだった場合はインフレが激しすぎるからね。



「さて、一呼吸ついたからな。質問はあるか?」

「はい!質問があります!校長先生!」



 質問タイム、それに入った瞬間手を挙げるアキ先輩。



「私この単元を校長先生に勧められた時に"実際は魔法みたいなもの"だと言われました!先程の実演では<詠唱>も<魔法陣>も無かったような気がするのですが一体どのような魔法なのでしょうか!」



 めちゃめちゃ早口。とんでもない人だ。



 だけど、言っていることはわかる。確かに<詠唱>は聞こえなかったし<魔法陣>もなかった。



 ただ、僕が聞いてきたことから考えると...



「アキよ、良い質問だ。だがその答えを出す前に質問だ、マリア・ヒルド。魔法には種類があるが、それを貴様はいくつまで知っている?」



 ってわあ、質問されたよ。まあいいけどさ。



「えっと、<詠唱><魔法陣><魔眼><魔道具>、あとは<魔技>もそうですかね?」



 一応僕の解釈だとゲージ技だから正しいはず。流石に<召喚魔法>は違うだろうし。



「ほう、すべての<魔法母体>を網羅するか...大体はわかると思うが、一応説明だけはしておこう。<魔法母体>は魔法を使う上での基礎のようなもの、例として<火球(ブレイズ)>の魔法を使うが...」



 というと、校長の掌の上に<魔法陣>が出てくる。その<魔法陣>が光ると、そこから火の玉が生まれる。



 だいぶ熱いのか、手の周りがモヤモヤと歪んでいるのが見てとれる。なんて現象だったかな、あれ。



「これが<魔法陣>。どれだけ小さいものでも<魔法陣>のサイズによって強くできるが、さすがに今は実演できんないな。そして...」



 手のひらの上の玉が握りつぶされる。すると、



 。旧き神、火山の守り手よ

 。そのかけら、我が手に宿るべし



「<火球>」



<詠唱>が聞こえ、魔法の名前を校長が言ったかと思うとまたもや火の玉が手のひらの上に現れる。



「これが<詠唱>。この俺レベルになると<無詠唱>でもいけるが、さすがにわからないだろうからな。普通にやらせてもらったぞ」



 そしてまた握りつぶされる火の玉。あとなんだかんだ言って<無詠唱>もあるのね。



「俺の持っている<魔眼>は攻撃系のものではないからな、<火球>は実演できない。<魔技>はできるが、この場だと被害が大きすぎるからな、別の機会にさせてもらおう」



 と言いながら、校長は胸ポケットから何かを取り出す。



 形状は...指輪か。中央に赤い宝石がはまっている。



 しかもなぜか、その宝石の周りも少し歪んでいるような気がする。



 すると、突然宝石が赤く光り出す。



 少し時間が経って、指輪の上に火の玉が現れた。



「これが<魔道具>だ。一定回数使うと壊れてしまうが、その分速攻で使うことができる」



 火の玉を握りつぶす校長。同時に指輪も壊れてしまった。使い捨てということか。



「今見せていた通り、<魔法母体>は魔法を扱うための種類のこと。基本的に魔法は<魔法属性>と<魔法部類>を選び、そこに<魔法母体>を組み合わせることで創る。人によって得意不得意はあるが、少なくとも<魔法陣>か<詠唱>で使えておくといいだろう」



 なるほどねえ、要はパズルを組み合わせて魔法を生み出しているわけか。そりゃ新魔法もわんさか出るわな。



「さて、それを踏まえての質問である"<魔力撃>とは如何なる<魔法母体>か"だが、答えとしては"そもそも魔法ですらない"が正しい答えだろう」

「え、でも校長先生は魔法みたいなものだって」

「確かに魔法みたいなものだと俺は言ったな。だが、実際のところやっていることは魔力を一点集中させて解放しているに過ぎない。若干<魔技>に近いが、あれは<魔法属性>を指定しているからな。全くの別物だ」



 はいはい、なるほどね。えっとつまり...



「<魔力撃>は魔法を構成する3つのものがない、だから魔法ではないということでしょうか」

「正解だ、マリア・ヒルド」

「なるほど!ありがとうございます!」



 しっかし、魔法って一見複雑そうだったけど、やっぱり複雑だったか。たった1個の魔法を形創るのに3つも要素が必要とは。



 あれだね、前世でいう元素みたいなものだね。



「さて、それでは実戦してみるとしよう」

「わかりました!...ところで、誤字しているのでは?」

「安心しろ、誤字ではない」



 へ?と思ったのも束の間、指をパチンと鳴らす校長。



 瞬間、世界が真っ黒に。



 そして、僕たちはいつのまにか草原にいた。



 悲しいことに、こういう状況は初めてではない。むしろ校長が関わっていることがあった以上、心のどこかでやっぱりかとも思っている。



 一体これで何度目だろうか。転移も慣れてしまったよ、全く。



「ここはケノセス草原。王国からエルに3、ヌルに6行った場所にある」

「知ってます!魔獣が本来湧かない場所なんですけど、攻撃行為を自然物に行うと敵がすごい出てくる場所ですよね!」

「そうだ。俺もよく課外授業として使っているが、やはり安全な場所だ」

「そんな場所にいたんですか、僕たち...待って、実戦と言うことは!?」



 嫌な予感が頭をよぎる。いやいや、いくら校長とはいえ生徒を死なす行為は...



 ...するわ。そういや死体製造機すっかり忘れてた。



「そういうこと...だ!」



 校長が腕に力を込め、周りにあった木をぶん殴る。



 すると、



 びゅうぅぅぅぅ!



 突然風が強くなる。それは突風どころか台風の域に達し、立っているどころか目も開けることができなくなる。



 すっと、足が浮く。その瞬間、小さな手ですぐに足を掴まれたことによりなんとか吹っ飛ばされずに済んだ。



「そ、そのまま足を掴んでいてね、メェーちゃん!」

「メェー!」



 目を使わずとも、メェーちゃんの手はわかる。あとは...



 視界を取り戻すため、目元に手を当てて即席の暴風壁を作る。ちょっとずつ風も弱くなってきているし、これなら...






 たった少し、アニメのあの細い目の人が目を開いている描写の時。そんなレベルでしか開けないが、それでも外は見えた。



 そう、あの絶望的な外が。



 大量の、四足歩行の生物。一体幾つの魔獣がいるのか見当がつかないくらい、いる。



 もはや、それが背景なのかと疑えるくらい。シナリオを作る上で誇張表現はやむなしと思っている自分ではあるが、そもそも誇張表現ですらないのは狂ってる。



「なん、くはっ!」



 抗議をしようとすると口の中、いや喉の奥を風が掻っ切ってくる。舌に染み渡る血の味と、それに連なってくる喉の痛みが実感させてくる。



「まさか。貴様らはこの程度で挫けるような人間ではないだろう!!立て!!そして目の前の敵を打ち砕いてみろ!!」



 馬鹿なのか、校長は。一瞬しか見えなかったが、相当な量の敵がいたぞ。



 いや、でもまあやらなきゃ生き残れない。あまりにも理不尽すぎるこの世界に絶望するわけじゃない。



 ただ狂ってるとは思うけどね。うん。



 とりあえず、メェーちゃんはバーストたちを呼び出して!



「メェー!」



 大きな鳴き声。すると、突然目の前に猫のマーク。



「...あ、あ。よし、まだ痛いけど、これで喋れる。目は...開いても問題ないね」

「最も、そこまで長くは持ちません。すぐに行動しなさい」

「ありがと、バースト!」



 さて、あとは...



「ショゴスはそのまま遊撃しておいて!メェーちゃんとバーストはとりあえず掃討!」

「「了解」」

「はイ、マスター」



 こっからが、正念場。生き残って勝つ。



「わ、わあ...」 バタリ



 あ、どうしよう。アキ先輩がぶっ倒れてしまった。負傷者を抱えた状態で戦わなきゃいけないのか。



 まあでも、しょうがない。ショゴスを見せてしまったのは僕だしね。



 ...それにしても、なんでみんなショゴス程度で気絶するんだろう。

次回、戦闘開始

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