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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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最初の目的

ちょっと短いかもしれません

<ギルド/パーティ会館>を横切ってさらに進むと、さすがに目の前の壁のスケールを理解してしまう



 王都南の壁、それは今まで見てた北の壁とは違ってとんでもなく分厚かった。詳しく測っているわけではないけど、流石に2倍くらいはあるのではと思えるほど。



 そしてその壁に設置されている門もまた造りが頑丈。金属で出来ているのはもちろんのこと、その落とし格子の仕掛けが外に露出しているため、ロープを切断すれば有無を言わずに門が落とされる。しかもそれが3重になっていることを鑑みるに、おそらく防衛のためにしっかりと金をかけているわけだ。



 北の壁とここまで違うのは訳があるのだろうか。後で聞いてみることにしよう。



「...周囲に敵影、なし。このまま入るとしよう」



 と言って団長は壁に隣接されているでかい建物に入っていく。マナお姉様やエリカ先輩も入っていくため、僕もついていく。



 中は......まあすごい綺麗だった。



 燃えてしまった館とは違うしなんなら館のほうが高そうだけど、それでも豪華絢爛なことに変わりはない。



「団長室は3階でな、本来はそこで話すべきことなのだが...こればかりは実物を見たほうがいいだろう」



 団長がそう話ながら廊下を進む。時折すれ違う騎士団の人がエリカ先輩の持っている大きな袋に驚いているが、まあしょうがないことではあるだろう。



 そして進み続けると、目の前には地下に続く階段。ここを進むのかな。



「ここの地下には我ら騎士団の墓場と死体解剖するための場が設けられている...」

「そこに見せたいものがあるう、ということですねえ?」

「そういうことだ」



 降りていく一同。ちゃんと明かりは灯っているため真っ暗で何も見えないということはない。



 だが長い。およそ5分くらい静かに降りていった後、ついに廊下に辿り着いた。



 そこの装飾は、上の階のものと比べてとても無機質で、少し恐くなり得るものであった。



「......ここだ」



 そしていくつもの扉を無視し、1つの扉の前へ。



 その扉には、空箱置き場、と書いてあった。



 入ってみると、そこはすごい匂いで溢れかえる空間だった。おそらく、何かが腐っているのだろうが...



 床にはいくつもの袋、袋には名前が書かれていて、そのうちの一つは知っているもの。



 そして、その知っているものの前に団長は止まった。



「これだ」

「...アンナ、てことはこれって...」

「開けるぞ」

「え?」



 袋を開く団長。縦開きのその袋の中から出てきたそれは、どう見ても母さんの姿だった。






 ただし、頭がないことと心臓にナイフが刺さっていることを除いて。



「...空箱ってえ、そういうことだったんだねえ」

「えっ?」



 マリアお姉様が唐突に何かを言い出したんだけども。思わずえっ?って言っちゃったよ。



「だってこれは母さんの...」

「ああ、えっとねえ。この世界では基本的に2度まで死ねるんだよお。<肉体の死と魂の死>っていう理論でえ、肉体が死んでも肉体を、魂が死んでも魂を再生すれば生き返るんだあ。もちろん片方が欠落した状態で何年も経っちゃうと死んでしまうけどお、基本的にそんなことは起こらないんだあ。魔獣は基本肉体が死ねば魂も死ぬしい、そもそも生き返らせる術が一般的じゃないから人間も肉体が死んだら死と同義い、なんだけどお...」



 母さんの死体を見るマナお姉様。



「この死体い、マリアちゃんのお母さんはどちらとも死んでいるう。私の父さん母さんと同じようにねえ」

「え、てことはもうマナのパパママって生き返らないの?」

「そうだよお。もし生き返らせる術を私が持っていてもお、すでに家の中にいった時点でどっちも死んでいたから......」



 急いだって間に合わなかった。その言葉を言えずに泣きはじめるマナお姉様。



 ...ん?ちょっと待てよ?



「養父母の死因と母さんの死因が一致、ということは殺した犯人も同じ可能性が高い?」

「気づいたか。そうだ、死体袋は開けていないが最近この死に方をしている死体が多くてな。まさかヒルド一家もこの殺され方をするとは思わなかったが」

「つまり、見せたかったことと話したかったことというのはこのことについてってこと?」

「そういうことだ」



 そういうと、団長は部屋を出る。



「詳しく話してやろう。3階の団長室にいくからついてきたまえ」



 ============================================



 団長室は、やはりというかなんというか豪華だった。



 出されるカップも装飾が細かく丁寧、口にする紅茶とお茶菓子も上品なものである。



「さて...確か君たちは<パーティ>を組んでいたな」

「まあ、ね。私、エリカが一応パーティリーダーだけど...」



 あ、パーティーリーダーってやっぱあるんだ。



「そうか。ではこの<クエスト>を受けていただきたい」



 そう言って目の前の机に紙を出す団長。そこには大きくこう書いてある。



<クエスト>:殺人鬼の捕獲



「マリアが言った通り、この死体は全て1人の人間がやったことだと思われている。そもそも魂と肉体を同時に殺すという方法は俺ですら知らないこと。どう考えても複数人の手に渡ってはいけない方法ではあるからな、個人が行っている可能性が非常に大きい」



 まあ、確かに。さっきのマナお姉様の説明を聞く限り、そもそも人間を殺すには肉体を殺す...つまりはHPを削り切れば言い訳なんだろうし。



 それこそあの死体製造機のように体を真っ二つにすればいいだけだろう。なのに魂と肉体のどちらも殺しているのはおかしいよね、という話なのだ。



「本来これは<シウズ守護騎士団>が秘密裏に行わなくてはならないんだが...」

「...南の魔獣、のことね」

「そう、最近<変異>が多くなっていて危険でな。我々としてもそちらの方に割く人員がいない」



 南の、魔獣。やはりそういうのに何かあるのだろうか。



「ねえマナお姉様、南と北の違いって?」

「そうだね...南の方が魔獣がより強力でえ、出現頻度も高いんだよお。逆に北に行けば行くほど魔獣は弱くなって、出現頻度が落ちるんだあ。ただしい、一部例外はあるけどねえ」

「そうなんだ...ありがとう、マナお姉様」

「いいんだよお。もっともっと私を頼ってねえ」

「わかった、そうさせてもらうね」



 なんか知らないことがあればマナお姉様に聞く。これを毎回できるようになったのはでかいな。



「で、だ。だから君たちにこの一件一度任せたい。もちろん危険度はそれなりにあるからな、報酬は弾ませてもらう。どうだろう、受けてはくれないだろうか」

「いいですよお金のために」

「わあ、即答だあ」



 もはやくれないの時点で食い気味に言ってたな、エリカ先輩。



「それではエリカ、この受理書にサインをk」

「なあ、父さん。なんでこんな悪名高い<エリカ&マナ>にその<クエスト>をさせるんだい?」



 後ろ、扉の方から声がする。



 振り向くと、そこには僕と同じくらいの背の男の子がいた。



 というか、父さんってもしかして...



「...キラ、何度も言っただろう。お前には任せられないと」

「でもさ、僕も母親を殺されているんだよ?どうせそこのマナっていうやつの親が殺されたからその<クエスト>を頼むんだろうし、僕だって<ギルド>に入団したんだよ。<神仰団>ってやつにさ。僕はそこに入るのにすっごい苦労したんだよ?力を示せって言われて何時間も戦わせられたんだからさ」



 ...なんか、兄さん結構やばいやつになったな。



 今言っていること、人の死を愚弄しているに等しくないか?



「大体、こいつらより僕のいる<ギルド>の方が何十倍も強いよ。失敗して無駄金払わせられるより、確実性のある僕たちに頼んだ方がいいでしょ」



 そういうと、彼は手をあげる。そして後ろからずんずんと鎧を着た男女がくる。



 なんだか近くにいると少しピリピリするし、ちゃんと清められていたり...ん?



 本当に小さな、声。耳を澄ませると、なんとマナお姉様がブツブツと言っていた。



「......その果て......強き.........再演したりて...」



 ...なんだ、これ。まるで何かの詠唱みたいだけど...



「見てよ、この集団。僕、今日一日で小隊長に任命されたんだよ。しかもこの人たち1人1人がこいつらより強いんだ」

「なあ、キラ。だからお前には無理だと...」

「だからそれがおかしいんだって。なんで僕たちの方が強いのに弱いこいつらにそんな大事な<クエスト>をm」

「ねえ、君はキラって言ってたっけえ」



 モゴモゴとした喋りをやめ、キラに喋りかけるマナお姉様。



「...なあ、今は僕が喋っているんだ。君は口出ししないd」

「じゃあ、少し黙ろっかあ」






 瞬間、この部屋がものすごく寒くなる。



 多分気温が一気に30℃近く下がったということを教えてくれるのは、目の前のカップ。中身が凍っている。



 そして...真後ろのキラとその仲間たち。完全に凍っているのか、ピクリとも動かない。どうやら火の魔法を持っていないらしいが、まあそもそも打てない可能性もあるか。



 マナお姉様をみる。その顔はいつもと変わらないような気がするが、少しだけ青筋が立っているのを見るに静かに怒る系の人らしい。



「...すまん、愚息が迷惑をかけた」

「いいええ、それじゃあ受理をさっさとやってしまいましょうかあ」

マナさん、恐ろしい子...

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