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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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魔王、初めての演説

ささ、本編進めましょう。



あ、死体出ます。

「ふむ、いささかトラブルはあったが、何事もないな。では、中断していた入学式を再開することにしよう。勇者は一旦自分の席に戻れ」



 響く校長の声、そろそろ姿くらいは見せてくれてもいいんじゃないですかね。



 そして勇者はニコニコとした明るい表情で席へと戻っていく。まあ周りの人間からしてみれば勇者が正義なんだろうし、相当に喜ばれることになるんだろうなあ。



「次は入学者のファインプレーだ。今この場にいる入学者は全員数々の試練を乗り越えており、その難易度は1個小隊の<ゴブリン>を1人で相手にしているものと同等」



 おお...という声が周りからホール中から聞こえてくる。1個小隊がどれくらいなのかはわからないが、結構すごいのかも知れない。



 瞬間、ホールが暗くなる。電気が消えたのか、と思いきや壇上の壁一面に映像が映し出される。



 プロジェクターみたいなものかな。この場にはないけど。



「その中でも最高難易度を誇る我が<ギルドズパーティ>の<ダンジョン>探索から見せよう」



 うわあ、あの<ダンジョン>って一番難しかったのか。ある意味外れくじを引いていたわけだけど、クリアできてよかった。



 あ、でも待てよ。この場合のファインプレーってやっぱり戦闘とかのことになるのでは?



 だとしたら...神話生物、みんな見ることになるってこと?



「今回の<ギルドズパーティ>参加試験の参加者は114名。そのうち21名が生き残るというまずまずの強さを持ってくれている。だが今回の試験は今までと一味違う、なぜなら>キメラティック・フォレストアンドオーシャン・キングズ<を打ち倒したものまで現れたからだ」



 ざわざわし始めるホール、やっぱり森海王倒すのはすごいことなのか。



「だがそれ以上に素晴らしいのは、<リザードマン>と接敵して逃げ出したものがいなかったことだ。もちろんそのまま殺されたものも数多いが...」



 映し出されたのは、戦闘中の様子。ズバズバと生徒達が切り捨てられていく中、勇敢に立ち向かってなんとか倒すことに成功している。



「それ以上に戦闘に勝利しているものの方が多い、これは全体的に今回の入学者が強いことを意味している」



 そのほかにも戦闘の映像が映し出される。弓で遠距離から殺すものや、なんと拳で頭を潰しているものまで。世界は広いってことなのか。



 まあ僕もショゴスとメェーちゃんに戦ってもらって勝利しているわけで、これも世界からみたら珍しいことなのかも。そもそもショゴスとメェーちゃんが珍しいのは一旦置いといてね。



「しかし、そんな彼らでも勝てない奴がいた。それが>キメラティック・フォレストアンドオーシャン・キングズ<、<魔獣研究会>に特別に造らせた代物で、約50年もの間こいつを殺すものは現れなかった...」



 画面が切り替わる。そこには大きい部屋、つまりボス部屋の中央にある手鏡を手に取って大喜びしている集団がいた。



 そして、その手鏡はもちろん<ダミラー>。<インベントリ>に入れた瞬間、突如上から降ってきた森海王に潰されたことによるものなのか、<ダミラー>が弾き出されている。



 それをキャッチしないで他の連中はそのまま逃走。弾き出された<ダミラー>は跳ねて扉の間に挟まってしまった。



 そんなことがあったんだ、知らなかった。



 そしてまた映像が切り替わり、今度は入り口付近。



 そこには<可能性の写し鏡>を<インベントリ>に入れるということをすっかり忘れて入口に持ってきた僕がいた。



 あとは記憶の通り、奪われて<インベントリ>に突っ込まれて出てきて虐殺され落とし格子が開き走り始めている様子。



「こいつは強いからな、道中にいた生徒のほとんどを殺している。こいつに危害を与えようとしたものもいたがな、全て触手に受け止められて終わりだ」



 他の映像では、確かに小部屋から顔を覗かせて魔法(と思われるもの)を放ったり真正面から剣で切ろうとしている生徒の姿が。まあ全部ダメだったけど。



「だが、それほどまでに強いこの生物から逃げ切った者がいた。それが今回の合格者の内20名であり、殺された者達よりも遥かに強いことを証明した者達だ」



 ワアアアアアア



 歓声、それは勇者が魔王を打ち倒した時よりも遥かに強いもの。



 ...なんか引っかかるなあ、まあでも別に気にするレベルのものじゃないか。



「そして、だ」



 またもや画面が切り替わり、ボス部屋内の映像。なんとか逃げ切って奥の扉に近づくも、その扉が開かないことに戦慄して且つの方にある大穴から入ってこれることを悟っていた。



 何かないか確認して、右手に本があるのを発見。その中の魔法陣を起動するために型に血を流し込んでいる。



 ...やけに周りが静かだな。ちょっとしたガヤガヤすらない、けどまあここまでショゴスを見ちゃってるししょうがないか。



 そしてやってきた森海王が殴ろうとして、結界に阻まれる。



 あとはもはや覚えていないけど、やっぱり結構な長い時間走り続けてたんだな。そんな体力、一体どこから湧いて出たのか。



 そして最後はメェーちゃんとバーストのコンビネーション技で倒して終了。そのあと何気にショゴスが死体を食べているけど、まあいいか。



「こいつはなぜか>キメラティック・フォレストアンドオーシャン・キングズ<を打ち倒した。それほどまでに強いものが現れたのは先ほども述べた通り約50年ぶりだ。その時は倒したものは勇者だったが、やはり年々生まれてくる子供は強くなっているということだろう」



 ふっ、と急に映像が消える。真っ暗闇になってしまったけど...



 バン!、と今度はスポットライトが僕に当たる。この流れ、まさかとは思うけd



「打倒した者の名は、マリア・ヒルド!!このまま壇上に上がり演説をする者だ!!」



 やっぱりか!上がりたくないんだが!!



 まあでも上がらなきゃ逆に怪しいか。ちゃんと立ち上がり壇上に進む。



 スポットライトのおかげで周りが見えるが、やはり一部の人間が気絶していた。まあ発狂しないだけマシなのかも知れない。



「あはは、どーもどーも」



 と言いながら壇上に上がり、周りを見渡す。



 すると、やはりまあ勇者と目が合う。すぐに笑いかけることでなんとか...はなってないだろうな、うん。



 で、確か演説しないといけないんだっけか。



「えっと、皆様初めまして。僕はマリア・ヒルドと言います。何気に転生者です」



 とりあえず自己紹介、それと転生者である告白。



 あ、よく見るとマナお姉様の近くに他の生徒の人がいる。めっちゃ悔しそうな顔をしているあたり、本当に奪い合いがあったんだな。



 また、やはりか...みたいな空気も流れている。本当に転生者は強いらしい。



「まあ、特に演説らしいことはできませんが......そうですね、僕の職業は召喚師(サモナー)。先ほどの映像にあった摩訶不思議な生物は全て僕が召喚した生物です」



 とりあえずいつのまにか<インベントリ>にいたメェーちゃんを出しておく。出てきたメェーちゃんは頭に乗り、ゆっくりとしていた。



「メェ〜」



 おっと、一部の人間の顔が緩んでいる。なんなら勇者の一人も緩んでいる。



 可愛いは万国共通ってことだな。



「しかも、あの戦いではまだ本気を出していません。<魔力解放>すらしていませんし」



 実際はしていないのではなくできないのだけど。まあ本気を出していないのは事実だろう。



「じゃあまあこれほどの力を持っているのになぜ勇者じゃないのかと思われるかと思いますが、まあ僕は勇者の権利を破棄しています。<インベントリ>に入っていた宝玉の使用時に<勇者の因子>がありましてけど、面倒で選んでませんし」



 実際のところ、勇者と魔王の兼任は面倒だろう。先ほどの戦闘で魔王1人の覚醒につき勇者1人の覚醒だと思われる現状、下手したら自分自身を倒すのは自分自身になりかねないだろう。



「でもまあ、僕としては<魔王>は根絶されるべきだと思います。勇者様以外が倒すことはできないでしょうし、何よりその力は強大なのです。もしも世界の危機になるレベルの強さをもつ魔王がいたら、それこそ勇者様にしか打倒できないのですから」



 まあおそらくメェーちゃん達神話生物が本気を出したら世界なんて終わるだろうし、あながち間違ったことは言っていない。



<魔王>なんて実際は<勇者>に倒される役だろうし。



 だからすでに壇上に立った時点で僕は勇者に襲われないことを祈るしかない、なんたって僕勇者と接触しているわけでね、まあ身バレくらいはしているだろう。



 もちろんこの場にいる勇者は僕が魔王であることは知っているだろう。現に小刀使いだと思われる勇者がなんか文句ありげだし。



 ただここまでやって襲われていないことを鑑みるに、今は戦うことにはならない。そう願いたい。



「僕は勇者ではありません。ですが、悪の根絶のためにはあらゆることをいたしましょう...これで僕の演説を終了したいと思います。ご清聴、ありがとうございました」



 パチパチパチパチ



 拍手喝采、もちろん<勇者>も行っている。



 壇上から降りて、自分の席へ。向かいながら、思考する自分。



 ......僕の場合、悪とは<勇者>のことを指しているだろう。正義と悪は紙一重と言うように、正義はそれすなわち悪なのだ。



 いじめられている子供から見ればいじめっ子や傍観者が悪に見えるのと同じ。正義は悪から見れば悪。



 僕が生き残るためには、いつか<勇者>を滅さなければいけない時が来るだろうけど...



 ま...いいや...後のことは未来の自分に任せよう...



 ふう...疲れた...



「それでは次に<魔獣研究会>について.........」



 ============================================



 荒い呼吸、大きい足音。




 それは絶対に立ててはいけないもの。




「くそっ、もうきやがったか!」




 隣の大男がそう言う。目の前には、4人の勇者。




「...僕が殿をする。お前は早く逃げろ」




 喋る僕、驚く大男。




「な!?この状況で殿って、死ぬぞ!?」



「お前が一番生存確率が高いんだ...すでに僕の体はボロボロだけど、何、奥の手は最後まで残すものだ」




 奥の、手。それは使ったら死ぬもの。




 この場で死ぬのなら、結局使ったほうがいいんだろう。




「.........わかった...!」




 握りしめる拳、それから伝わる悔しさ。




「何、安心してくれ......1人は持ってく」




 駆け出す大男、叫ぶ僕。




「さあ、きやがれ勇者ども!!てめえら全員、地獄に突き落としてやる!!」




 ============================================



「マリアちゃあん、起きてえ」

「んん...あ、マナお姉様」

「おおー、よかった起きたあ」



 目が覚めると、そこはホール。周りを見渡してもマナお姉様以外だれもいない、ということはつまり入学式は終わったのだろう。



「もうみんな帰っちゃったよお、私たちも帰ろお?」

「え、でもマナお姉様は先輩だから授業があるのでは」

「今日はちゃんとした休暇だから私は大丈夫だよお」



 そういえばそんなことを言っていた気がする。確か入学式で保護者として出席するから、だったっけ。



 席から立ち、とりあえず出口に向かう僕とマナお姉様。その間に思考する自分。



 さっきまでの夢...いや他の夢もそうだな。全部僕は死んでいる。



 何かあるのか、それとも何もないのか。



 考えるだけ無駄というのは自分でも理解しているけど、ここまで回数が多いとそうもいかないだろう。



 なんだかんだ寝ると何かが起こるのはわかったけど、なんでそれを見るのか。これがわからない。



 明らかにおかしいとは思うけど、今の時点じゃ何も思いつかないんだよなあ。



「そういえば、メェーちゃんは?この場にはいないようだけど...」



 む、そういえばそうだな。



<インベントリ>に......やっぱり入っている。



 とりあえず取り出して、と。



「メェー」

「メェーちゃん!」



 出てきた瞬間ぬいぐるみを扱うかのように鷲掴みして抱くマナお姉様。そしてそれを受け入れるメェーちゃんは、やはり神話生物とは思えない可愛さだ。



 本体が本体だからねえ...これ以上は怖いから思考放棄するけど。



「メェ〜♪」



 まあ、メェーちゃんが嬉しそうで何よりです。



 そんなこんなありつつも扉をくぐると、そこは学園の外で<学園関門>の内側。僕が重さを背負って歩いていた場所だが...今はそんなことはない。



 そういえば森海王との戦いの前、<インベントリ>を確認した時には本がなかったけど...



「マリアお姉様、<インベントリ>の中に教科書がないのですがそれは何故?」

「それはね、あの本は筋力を鍛えるためだけの本d」





<学園関門>をくぐり抜けたその先、大通りをまっすぐ行ったところに屋敷はある。



 そしてその位置に、何故か煙が立ち込めている。



 ...まさか!



「走りましょう、お姉様!」

「うん!」



 祈るべきは、最悪の事態が起こっていないこと。



 だが、その思考はその十数秒後に壊される。



「お父さん!お母さん!」



 ...燃える館、消火中なのか水の魔法がかかっているその煙の中、叫びながら走るマナお姉様。



 エントランスホール、その中央に彼らは...否、彼らだったものはいた。



 ナイフ、それが心臓の位置に刺さりつつ頭が吹き飛んでいる、その死体が。

死体製造機って、もしかしなくても僕自身のことを言うのかもしれませんね

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