神話生物と神話生物じゃない生物
誤字報告、ありがとうございます。
まあでも、たとえショゴスの本来のサイズがめちゃくちゃ大きかったとしても僕がヘマをしない限り命令を聞いてくれるだろう。
で、今の問題はそこじゃない。
このスキル、メェーちゃんの[魔力生成]はともかくとしてショゴスのだけは前から使えているのは確実にあっている。一番最初にこのスキルを見た時の思考がそれだからね。
てことは、このスキル自体は最初っからもっていたスキルか、あのドラゴン戦よりも前に手に入れたスキルということだろう。
...一番あり得そうなのは後者だな。ドラゴン戦の前といえば、あの牢屋からの脱出があった。その時に約50人もの人間を食らっている。
もしかすると、この世界では<到達点>を上げるのにEXPみたいな何かが必要なのかもしれないな。
後で校長に聞くとしよう。
さて、そしたら次はバーストのステータスを見ようかな、と僕は思いマナお姉様達の方へ向く。
相変わらずバーストはマナお姉様とエリカ先輩に触られまくっている。この世界で僕は猫を見たことがない、もちろんいるのかもしれないが、マナお姉様とエリカ先輩の反応を見るにいないものだと思う。
目、キラッキラしてたからね。
そんなバーストは現在、もはや何か悟りを開いたような目をしていた。
あ、でも神様だし流石に悟りはおかしいか。じゃあ、死んだ魚のような目ってとこか。
「マナお姉様、そろそろやめてください。エリカ先輩も、なぜ止めないんですか」
とりあえず止めに入る。バーストのステータスみたいしね。
「だってえ、かわいいしい!」
「こんなかわいい生き物がいるなんて思わなかったよ!」
食い気味のお姉様達。あの、その猫、赤ちゃんバリボリ食うやつなんですけどね。
そして、ポテン、と頭の上で寝っ転がるメェーちゃん。なんかむすっとしてるね。
あ、もしかしてやきもち焼いたの?
「メー」
そっけない鳴き声が帰ってくる。絶対そうだな、これ。
「お姉様方、それ以上バーストを可愛がってたらメェーちゃんが触らせてくれませんよ」
「「な!?」」
手放すお姉様、即座に帰ってくるバースト。
「メェ〜」
「やっぱりメェーちゃんが一番だねえ」
「このモフモフ、たまらない」
そして嬉しそうなメェーちゃんとお姉様達。その神様もなかなかですけどね。
ま、とりあえずバースト助け出せたしいっか。
「......やはり、訳がわかりません。なぜあんなふうにモミクチャにされても彼女は笑ったままでいられるのでしょう」
僕にしか聞き取れないような小声でバーストが喋る。
「かわいいからだよ」
小声で答える。それ以外に理由はないだろう。
実際、メェーちゃんはかなりマナお姉様達に対して心を許しているだろう。ずっと笑顔だし。
「...なるほど」
「あ、それはそれとしてステータス見せてください」
「唐突ですね。ですが、ステータスとはなんですか?」
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「なるほど、これは便利ですね」
1分もかからずに、バーストは<メヌー・リング>を扱えるようになっていた。メェーちゃん達もそんな感じだったし、神話生物は初見殺しにも引っ掛からなそうだね。
で、肝心のステータスはっと。
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[名前] バースト
[性別] 女性 [年齢] ■■■■■
[借体] 家猫
[到達点] Lv11/11
HP 222222/222222 MP 2222/2222
ーステータスーーーーーー
筋力 22222
体力 22222
敏捷 2222222
知性 2222222
精神 2222222
魔力 22222
ースキルーーーーー
呼び出されたもの Lv100(MAX)
結界術 Lv100(MAX)
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わあ、2ばっかだあ。あれか、ニャンとかけているのか。
もしくは数値がバグってるか。なんとなくそっちの方が正しいような気がするね。
スキルはメェーちゃんと同じ[呼び出されたもの]と[結界術]ってやつか
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結界術 銀
異世界の結界魔法。少ない魔力で強力な結界を作れるようにさまざまな工夫が施されている。
そのためこの世界ではバグる可能性がある。
使用時には注意されたし。
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...バースト側から見たら元の世界、てことはこの魔法は地球で使うためのものか。
あるいは、ドリームランドのものか。
どちらにせよ問題はない。なんなら今までで一番シンプルですらある。
ただ、このバグるというやつ。もしかしてだけど、バグらなかったらあの森海王の攻撃では割れなかった可能性がある?
もしそうだったらすごいな、などと思っていたその時。
「...全く、お前達は一体何をやっているのだ!!ここに遊びに来ただけか!!」
怒声。それは僕の真後ろから響いてきて。
振り返ると、マナお姉様達の方を向いて怒っている校長先生がいた。
「俺は確かに言ったぞ!!<パーティ>を組めと!!だがな、それが終わったら遊んでいいとは一言も言っていない!!」
「でもお、遊ぶなとも言われてませんしい、これは仲良くなるためのレクリエーションですのでえ」
頷くエリカ先輩。なるほど、これは問題児だ。
<エリカ&マナ>。この中に僕が入ることになるのか...
先々が心配だ。
「ふん、どうだろうな。レクリエーションをやるのは<パーティ>での今後の活動内容を決めてからだと一週間前に通告したはずだが」
「え"」
固まるマナお姉様。
「そういえば、そうだったね...」
唸るエリカ先輩。この人達毎回こんなことしてたのだろうか。
いや、そもそも<エリカ&マナ>を知っているのであればそこに行こうとしないか。
「全くお前達は...すまない、見苦しいところを見せたな」
「あ、いえ。僕もマナお姉様とエリカ先輩に触らせていたので」
一応弁明はしておく。バーストとメェーちゃんを触らせたのは僕だし。
「ほう...あの人形をか。つまり貴様は<召喚>の類のスキルを持っているということだな」
「はい」
素直に答える僕。別に<召喚>自体は結構人気っぽいし、問題はないだろう。
流石に(クトゥルフ神話)まで喋るのはまずいけど。<勇者>にバレたらまずいし。
あ、でも既に一人の<勇者>に顔バレしてるな。やばい、どうしよ。
「なるほど、では質問だ、マリア・ヒルド。<魔力解放>は使えるか?」
...はえ?<魔力解放>?
「なんですか、それ?」
「......何?」
いつもよりも険しい表情をする校長。
これ、僕やっちゃった?
「つまり、貴様は>キメラティック・フォレストアンドオーシャン・キングズ<を[召喚]で、しかも<魔力解放>なしで倒したというのか?」
「まあ、そうですね。死にかけましたが」
ほんと死ぬかと思った、けどドラゴン戦よりはマシだったのはいうまでもない。
片手切り落とすくらい、全身火傷よりよっぽどマシだ。
「うわあ...」
エリカ先輩の唖然とした声が聞こえる。そんな状況で倒したことにびっくりしてるのか、そんな状況でも死にかけになれば勝てることに驚いたのか、もしくはメェーちゃん達の凄さを再認識したか。
どれだろうと、結局やばいことに変わりはないだろう。
「なるほどな......時に、貴様は<魔力解放>を知りたいか?この魔法は[召喚]において基礎の基礎だ。一応、管轄外の俺でも教えられるが」
「お願いします」
即答、それによって返事をする。この質問に対しては即答するほかないだろう。
というか、僕って基礎の基礎もできてないなかったのか。
「そうか、ならば簡単にレクチャーしてやろう。<魔力解放>とは、<召喚獣>などに対し使うことで、対象を強化することができる魔法だ」
おお、強化することができるんか。いいな、それ。
てかそれ、森海王と戦う前に知りたかったぞ。
「方法は単純、対象に触れてMPをこめるだけでいい。そうすることで、対象のステータスが2倍近く上昇し、使えるスキルも増える。姿もある程度変わるからな、一時的に別の<召喚獣>になると言っても過言ではない」
方法も簡単、しかもめっちゃ強くなる。スキルも増えるのはいいな。
そして姿も変わると。これは本来の姿が...
「とりあえず、適当にお前が呼び出した<召喚獣>に使ってみるといいだろう。何、姿が変わるから成功したかどうかは一発で判別できる」
...え?
それは、不味くないか?
いや、だって、この場で?
「それは、ちょっと、まずいかと...」
狼狽える自分。さっきの考え通り、もしもこの姿から変化するとしたら、それはまさに狂気の行いとなる。
メェーちゃんだろうとバーストだろうと関係ない。ショゴスならギリ...いや、ダメだな。
すでにいつもの姿で行動できる以上、ショゴス・ロードになってもおかしくないぞ。
どれにせよ、あまりにも被害が大きすぎる。
「まさか、怖気付いてできないとは言うまいな。貴様は俺に<魔力解放>を教えてくれと頼んだのだ、せめて教えを乞うた者にできると言うことを見せなくてどうする」
...正論、いやそうなんだけどさ。
ああ、もういいや。とりあえず比較的マシなのは...
...バーストか。人型だし、他の二人と比べて異形ではない。
「ちょ、ちょっと待っててくださいね」
そう言って、ちょっとだけ校長から離れた場所に行きメェーちゃんとバースト、ショゴスを集める。
「えーと、とりあえず<魔力解放>をバーストに使う。んだけど、被害がどうなるかわからん」
「まあ、そうですね。少なくともメェーちゃんに対して使うよりはマシでしょうが」
さっすがバースト、僕の言わんとする言葉がほぼわかっているらしい。
「いいなあ...私も<魔力解放>されたかったなあ.........」
「確カに、アの男が言う言葉が本当であるなら、私とメェーちゃんはやめておいた方がいいでしョう」
一応、ショゴスもわかってくれているようである。メェーちゃんは恨み節が強いけど。
「じゃあ、また今度<魔力解放>を被害が出ない場所でやろう。その時はメェーちゃんが最初だ」
「......本当...?」
目に光が出てくるメェーちゃん。実際の姿は僕も見たいし、必ずいつかやろう。
「......あなた、メェーちゃんの本当の姿を見たいなんて、カルト教団にでも入っていたんですか?」
「いえ、ただのクトゥルフ神話のファンです」
本当に、ただのファンでしかない。なんとかニャルラトホテップの発音をできるようになろうと練習したり、<ネクロノミコン>の原本のためにアラビア語を喋れるようにしたり、なんなら全てのクトゥルフ神話生物の名前とその召喚方法および退散のための方法とクトゥルフ神話の呪文全てを今この場で言い切れるけど、ファンでしかない。
「まあ、いいでしょう。あの者達は猫の扱いが少し乱暴でしたが、今回に限り許すとします。たとえ本来の姿になろうと、彼女らを八つ裂きにしないことにしましょう」
「わあ、流石バースト様!優しい!」
「おい、まだか!!」
っと、校長に呼ばれてしまった。
「とりあえず、バーストになんかあった時はメェーちゃん達、よろしくね」
「わかったよ!」
「はイ」
返事を聞き、振り返って校長の方へ向かう。
「お待たせしました。とりあえず今やってみますね」
と言うと、バーストが僕の目の前にくる。
しゃがみ込み、バーストに触る。ああ、確かに毛がもふもふだ。
と、今はそんなことはどうでもいい。ええと、MPをこめるんだったよな...
体の中のMP、<魔力>のうねりを動かす。
触れている右手になんとか集中させようとする、これが意外と簡単で。
要は本形態のショゴスにやっていたことと同じことなのだと今更気づく。無意識のうちにやってたかあ。
まあ、いいや。バーストにやると決めたのだから、バーストに行う。
瞬間、自分の中の<魔力>の動かなくなる。何かあったか。
もう一度動かそうとする。しかし動かなくて。
ようやく、きずく。すでに<魔力>がなくなったのだと。
吸い取られすぎたか?否、おそらく足りないのだ。
足の力が抜け、バランスを崩し後ろに倒れ込む。
視界はかろうじて保っているが、体が動かなくて。
「なるほど...体の負荷がとても大きいのですか。それは大変ですね」
声が、聞こえる。バーストの声だ。
<魔力解放>は...成功したか?
「ええ、もちろん。ご覧の通り、元の体...と言うのは語弊がありますが、顕現するときに使う形状になれましたよ」
手が差し伸べられる。人のものではない、手。
触れて、その力で起き上がる。
その手はとても冷たくて、やはり明らかに人のものじゃなかった。
起き上がって、そしてようやく待望のものが見れる。
まず、それを表現するなら風格だろう。圧倒的なまでの威圧感は、たとえそれを理解していても怖くなるレベル。
体は女性、膨らんだ胸がそれを理解させてくれるが、黄金に輝く鎧によって完全には認識させてくれない。それがいいんだけどゲフンゲフン。
そして、右手には黄金の盾、左手に黄金の剣。
これらを踏まえて、やはり彼女は戦女神なのだと。
バースト神、やはりその名は偉大なのだと。
周りを見ると、彼女の姿を見たものの全てが固まっていた。
特に、マナお姉様とエリカ先輩は泡を吹いて倒れてる。
...校長を除いて。
「ほう、とても邪悪、しかし慈愛をもち威圧があるその姿。確かに<魔力解放>は成功したな」
あんた、強すぎない?
ドリームワールドとは、まあその名の通り夢の世界です。
旧神と呼ばれるもの達がたくさんいるらしいですが、真実はいかに。




