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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第二章 少狂学校生存
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学園生活⑤〜南風と月〜

注、人は死ぬ

「マリア・ヒルドよ、久方ぶりだな」

「...顧問の掛け持ち?」

「まあそういうことだ」



 まあ校長先生なんだし、それくらいはあるのかもしれない。いやけどさ。



 なんで行く先々に毎回校長がいるんだ?運命っていうか、なんか操作してるでしょ。



「あれ?マリアってバルバトス校長先生とは知り合いなの?」



 いやいやエリカ先輩、違いますよ。



 なぜか今日だけで3回目の出会いなだけです。



「エリカよ、俺はこいつとはまだ今日あったばかりだ。なぜかはわからないがやけに出会うものでな」



 その言葉に頷く僕。まあ校長がわからないというのなら僕にもわからないのだろうが、それでも僕は校長の陰謀論を信じてやる。



「だがな、エリカ。たとえどんな理由があったとしても、授業中の抜け出しとよそ見は認められていないのは知っているな?」

「はい、校長先生」

「そうだ、だからお前に罰を下してやる。<デスラン>1時間耐久だ」



 瞬間、教室中がざわつき始める。



<デスラン>という単語に聞き覚えはないが、僕の間が当たればおそらく...



「いや、校長先生。いくら何でもそれh」

「つべこべ言わずさっさと行ってこい!!」

「はい!!」



 そして、慌てた様子でエリカ先輩は出ていった。



「全く、これだから問題児は。貴様らもこうなりたくなかったら気をつけるように」

「「「「「はい...」」」」」

「聞こえんぞ!!」

「「「「「はい!」」」」」



 なるほど、これがいわゆるパワハラか。



 恐喝紛いのことやってるし、生徒には死ぬかもしれないことさせるし。



 ......だが、おそらく。僕に<3単元>を教えてくれた時のエリカさんの顔を思い出すと、こうじゃないといけないようにも感じる。



 もしかすると人によっては違うかもしれないが、とにかく僕はなんとなくそう思う。



「さて、マリア・ヒルドよ。貴様にはまだ<3単元>を決める仕事がまだ残っている。本来なら少しは<結界魔法>の授業を体験していけと言いたいところだが...実際は()()単元の方が大事だからな。さっさと向かうがいい」



 そして、まるで授業の邪魔だと言わんばかりに扉から放り出される。



「頑張れー!」

「応援してるぞー!」

「死ぬなよー!」

「ちゃんと授業でろよー!」



 などといった応援が後ろから聞こえてきたのは嬉しい。結構僕のことは歓迎してくれているのかもしれない。



 さて、まああの教室からは出たわけで。今は<その他>を決める場所にいる...はずだ。



 なぜ、はずなのかというと、今いるこの場が今までの空間とは違うからである。



 青い空、緑豊かな草原、照りつく太陽、ふかふかの土。



 そう、なぜか外にいるのである。そしてそんな状況の者たちが周りに約...100名くらいか?



 人数が多いな、それだけ人気があるのかもしれない。



 おそらく、ここは最初から決まっていた<その他>の単元、すなわち<ギルドズパーティ>だろう。



 だが、ふむ。よく見るとキョロキョロしている生徒しかいないな。



 今まで通りなら顧問が、そしてあの発言からして...






「ふん、貴様らはやはりまだまだ未熟か。俺にも気づかないとはな」



 声、上から聞こえてくるその声は、まるで打ち上げ花火のように心臓に響く。



「だが貴様らは今までの腑抜けどもとは違い、この俺の元に来た」



 何度も聞いたこの声、もはや飽きてくるまである。



 そして、声の主はだんだんと空から降りてきて。



「それだけで、貴様らは評価できる。命を捨てようとは思わず、可能な限り生きようとするのだからな」



 ...そんなこと1ミリも思ったことない。



 というか、ここってそういう意図があったのか。



 ストン、と着地する校長先生



「ようこそ、<ギルドズパーティ>へ。俺はこの<国立学園>の校長、バルバトス・ストーリク。早速だが、貴様らにはある種のテストを受けてもらう」



 パチン!と音が鳴る。



 瞬間、世界が真っ暗になり、唐突に色が戻る。



 今までの場所じゃなく、まるで洞窟の中のようで。



 目の前には、大扉。石でできているそれは、今にも僕たちを押し潰さんとするようだ。



「貴様らには、今から簡易的な<ダンジョン>に潜ってもらう。中には魔獣と宝、そして<可能性の写し鏡>がある。貴様らがこのダンジョンに入り、生き抜くこと。これががテストだ」



 コンコンと叩かれた大扉は、大きな音を立てて開いていく。



「この扉は閉まったが最後、1時間は開かない!!だが!!1時間経過するか<可能性の写し鏡>を<インベントリ>に入れた状態でこの扉の前に行けば!!この扉は開く!!」



 音に負けない声で響くその声は、もはや耳がキーンとするレベル。



 だが言わんとしていることはわかるので、そのまま話を聞くとしよう。



「最終的にこの扉をくぐり!!無事生還することができたなら!!テストは合格!!無事にこの単元を学ぶことができる!!」



 扉が開ききる。大穴は、こちらを飲みこまんとする勢いがある。



「だが忘れるな!!このテストでの死亡率は平均70%!!いいか、貴様らは弱いのだ!!あらゆる手段を使って、このテストを攻略!!無事生還するように!!いいな!!」

「「「「「はい!!」」」」」



 声に押され、返事をしてしまう生徒。もちろん僕もその1人。



 ...ただ冷静に考えてさ、生き残っているのが平均で3割しかいないのおかしいでしょ。その篩、穴小さすぎない?



 と思った直後、何かに引っ張られる。



 直接ではなく、間接的で...いや違う。吸い込まれてるのか。



 周りも、ああやっぱり同じように吸い込まれてる。



「な、なんだ!?」

「きゃああああああ」

「うわあああ!」



 人によって反応は様々、この状況は僕たちには止められず、あと校長先生が一言。



「では行ってこい!!死ぬんじゃないぞ!!」



 ...死地に向かわせたやつが何を言っているのやら。



 ============================================



 中は思ったより広かった。100人位余裕、何なら1000人くらい入れる空間にいた。



 後ろには大扉。何人かがなんか言いながら叩きまくっているが、うんともすんとも言わない。



 おそらく校長が言ったことは本当なのだろう。この<ダンジョン>にある<可能性の写し鏡>を持ってきて、この扉を開く。



 とりあえず皆からは見えずらい壁際に寄って、と。



「メェーちゃん、ショゴス、いる?」



「い、いるよ」

「こコに」



 ...聞こえているのか。



「ショゴス、君は今本の状態だけど、その状態で聞こえているのね?」

「ハい、マスターの夢のト同じ状態です」



 なるほどね、つまりあの夢の中だと思われていた場所は<ダンジョン>の可能性が高いわけだ。



「うーん、とりあえずは進むしかないんだけどなあ。紙とかあるのかな」



<ダンジョン>、もしあの夢の時と同じように一本道ならやらなくてもいい。だが僕の認識だと、そもそも聞き馴染んでいる<ダンジョン>はめちゃめちゃ入り組んでいる。



 いわゆるマッピング、必須のことだろう。だが。



 紙なんて持ってきていない。なんならペンすらない。



「なしでいくしかないのか。とりあえずは覚えやすい方法で進むしかないかな」



 いわゆるク〇〇カ理論みたいに右に...



「なあ君、今から向かおうとしているのかい?」



 声、男子の声か。



「まあ、そうだけど」

「それなら僕たちと一緒に行かないかい?生き残るなら、一緒に行動した方がいいと思うんだ」



 顔を上げてそいつの顔をよく見ておく。



 まあ普通か。うん。一般人というかなんというか、パッとしない。



 だがなぜか頼りやすさはある。



 で、じゃあ集団行動した方がいいかという話だが。



 まず、僕は今のところ魔獣が危険な生物なのは火吹きとかげを見て知っていはいる。



 だが、魔獣そのものについてはわからない。接敵せずに隠れながら進んだ方がいい魔獣もいるだろうし。それが一つ。



 そして、僕が戦うということはつまりメェーちゃんやショゴスを使うということ。メェーちゃんは可愛いしさほど問題にならないが、ショゴスはまずい。



 この世界の人間は見ただけでSANがごっそり持ってかれるからな。あれ以上発狂した人間を増やしたくない。



 つまり、結論は一つ。



「...すまないけど、他の人を当たってほしい。僕は独りで行きたいから」

「そうか、じゃあまた」



 走り去り、そして他の場所で話しかける男子。



 まあ、いいか。とりあえず進むことにしよう。



 背には大扉、そして右手を壁につける。



 そしてそのまま進む。扉の反対側にはでかい道があり、その先にはT字路があるのが見て取れる。



 まあそういうの全部無視して壁の通り進むんだけどね。



 一番にマッピングを考えるくらい、迷わないことは重要だ。



 砂漠など迷ったら死ぬ場所で一番大事なのは、ただただ迷わないこと。いつか資源が底をつき、やがて死ぬからな。



 右に行って、右に曲がって、さらに右に向かう。壁に手をつけているからな、迷うことはない。



 そして敵に会わずおよそ5分、扉を見つけた。



 ...扉に罠とか仕掛けてあったらまずいな。



「メェーちゃん、これを壊して。ショゴスはこのドアと僕たちを囲んで」

「わかった!」

「了解デす」



 ガシャーン!



 メェーちゃんが扉を壊し、音が出る。一応ショゴスが囲むことで音を減らしたつもりだが、すっごい耳がいい魔獣とかいたらまずいだろうな。



 さっさと扉の中に入る。



 中には宝箱っぽいものが一つ。さて、安全かどうか。



「ショゴス、その宝箱を開けてもらっていい?念の為僕は外にいるから」

「了解でス」



 外に出て、壁に背を当てる。



 カチャリ、と音。罠とかはないか。



 中に入り、宝箱の中身を確認するか。



「さて中身は...ふむふむ」



 少し重い小袋だ。開けると、そこには銀貨が40枚。



 ...わお。お小遣いにしては多いのでは?



 一応<インベントリ>に入れる。なんだか少しだけ体が重くなるが、ぶっちゃけ今までよりマシだからいい。



 あ、そういえば体の重さがどうでも良くなってきたような気がする。



 慣れというのは本当にあるんだなあ。



 ってそうじゃなくて、とにかく進まなくちゃな。



 外に出て、周りを確認。他の人が奥にちらほら見えるけど、まあ別にバレずに移動とかはしなくてよさそうかな。



「よし、ショゴスは本の状態になって。メェーちゃんは本を持って僕についてきて」

「うん!」

「はイ」



 よし、これで大丈





 バシィ!!



「!?」



 すぐに宝箱の部屋の中に入る。音は確かに奥の人がちらほらいたところから聞こえた。



 聞いたことのない音だった。言うなれば、何か柔らかいものが鋭いもので裂ける音。



 ......死亡率、70%。それはつまり......



 体が震えてくる。理解できればできるほど、震えが強くなる。



 ピタリ......ピタリ......



 ドアのあったところに扉はなく、そこから音が聞こえる。



 液体がついた足で歩く、そんな音が。



「グウ”ウ”ウ”」



 声、泣き声。それはあまりにも近く、ましては気づかれてはいけないものだった。



 呼吸を止め、心臓の鼓動を最小限に。それができたらどんなによかったことか。



 ...汗、それが顔からひたたり落ちる。



 それが床に落ちて、



 ぴちゃん



「グウウウウ!!」

「!?」



 見つかった。

多分真面目な戦闘描写がある、はず。

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