学校生活③〜オリチャー〜
某巨大金貨は持ってません。
あと活動報告でも申し上げた通り、今後は18:00に投稿します。
なので遅れた時の追加投稿は、次の日の00:00になりますね。
「さあ、まずは中央にある<3単元目録>を取ろっかあ」
と言われたので早速取りに行く。
中央にも生徒はたくさんいて、何人もの人が紙らしきものを見ながら迷っているように見える。
まあ見渡す限りだとそれくらい悩めるほどの数のドアが...おっと、あったあった。
<3単元目録>...一体何が書かれているかなっと。
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<3単元目録>
=<戦闘>=
<剣>
<槍>
<棒>
<鞭>
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そして僕は<3単元目録>を閉じた。多分だけど、これを全部見るのは苦でしかないだろう。
だったら、自分で見て回った後に決めるのが一番いい。勘になるかもしれないが、路頭に迷うよりは全然いいだろう。
とりあえずは適当に見ていくか。
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僕がここにきてからおよそ1時間経った、が生徒は減っていない。むしろ増えている。
どうやら僕が通ったあの死体製造機はいくつか種類があるらしく、他の道からくる生徒もいるみたいだ。
「落下しながら障害物を避ける奴は結構楽しかったねえ」
とはマナお姉様談。全く笑えないが、確かに少し面白そうではある。
まあそんなことは今はどうでもいい。いやどうでもは良くないが、今見るべきは前だけだ。
とりあえず候補は3つ。
<護身術><戦闘知識><棒>という面々だが、どれも面白そうではあるな。
<護身術>はその名の通り、自信を護るための術。しかも応用できれば味方まで護ることができるらしい。
こいつが候補に上がる理由は、やっぱり自分が召喚師であることだろう。どうしても自分自身が弱くなってしまうだろうし、一部戦闘が苦手な生物もいるからそれを守れるようになっても面白い。
ただ、そもそも味方の戦闘できるものたちが強すぎて守りを固める必要がない可能性があるのが欠点か。メェーちゃんとショゴスは神話生物、特にメェーちゃんに至ってはおよそどの人間よりも強いだろうし。
次に<戦闘知識>。エリカ先輩にも聞いていた通り、<魔法>がメインで<戦闘>は全部苦手っていう生徒が入ってくるらしい。
まあ自分は召喚師ということもあるし、基本的に運動は苦手だ。今持っている教科書の重さ、1時間も持っているからこそ慣れてきたが結局辛いことに代わりはない。だからこそ、下手に<戦闘>方法を学ぶんじゃなくてその知識を学んだほうがいいのかなと思うわけだ。
だが、少し悩む理由もある。どうやらマナお姉様によると、
「最近<戦闘知識>は不調らしいよお、なんたって50年間もの間勝ててないみたいだからあ」
らしい。この学校で卒業するために必要な年4回のイベントでのうち、
「<戦闘>の単元が参加できるのは<国際競技大会><単元対抗大運動会><ザ・コロシアム>の3つでねえ、その中で<戦闘知識>は50年間も勝てていないんだあ」
「つまり、その間<戦闘知識>を受講した生徒は卒業していないということ?」
「そゆことお」
とまあこのように、なかなか現実的な理由であまり選択しようとは思えない。
最後の<棒>はその名の通り、棒術を学ぶことができる。理由としては単純で、
「私が入っているのは<棒>だねえ。魔法の方が得意だけどお、近接戦闘をこなさないといけない時は必ずあるしい、武器は杖でいいからねえ。一応2年前にようやく勝ててえ、今は顔を出していないけどお」
ということ。<護身術>などと同じく近接戦闘が学べて、少なくとも<戦闘知識>よりは勝てそうで、さらにマナお姉様もいる。
一見最高の環境に思えるが...問題が一つ。実際に僕が杖を武器にするかわからないという話である。
だって、ねえ。どっかの武器屋で手に入れたのは未だ出すこともできていない本だし、ショゴスを武器か何かに擬態させて持ち運ぶのならば現状本の状態が一番いい。
いわゆる、宝の持ち腐れになりそうなんだよねえ。
っていうところまで考えてみると、だ。どれもメリットはあるけど、どれもデメリットがある。
こういう時はデメリットのないものをできれば選んでおきたい。魔王としていつから動くことになるかわからないけど、<3単元>は人生に関わりそうだし。
一体どれにするべきか...ん?
「<魔力撃>魔法使える人にオススメだよー!」
耳に入ってくる声。それは全く聞いたことのない声だったが、ふむ。<魔力撃>か。
気になるな...ちょっと行ってみるか。
「マナお姉様、ちょっと聞いてきますね」
「わかったよお。どこにいくのかわからないけどお、がんばってねえ」
どうもマナお姉様は結構有名らしく、他のところに聞きに行くときも自分から離れていた。
まあ守護騎士団団長に問題児として伝えられているだけあるのだろう。おそらく悪目立ちしているのだと思う。
「<魔力撃>は簡単だし、楽しいよー!」
「あのー、<魔力撃>に興味があるんですけど...」
「はいはーい、興味があるのねー!ってええ!?」
で、とりあえず近づいて話しかけてみたんのだが、まさか驚かれるとは。
ちゃんと目の前から近づいたんだけどなあ。
ヒソヒソヒソヒソ
む、なんか声が聞こえてくる。なになに...
「<魔力撃>?聞いたことのない単元だな」
「転生者のくせして弱いし、あいつがいると卒業できないからな。単元を造れただけ良くやってるよ」
「ああ、あのドジっ子がいるやつか、あの可愛い子がかわいそうだわ」
「巻き込まれると面倒だしな、あいつ」
「お持ち帰りしたい」
......なんか最後だけ不穏な声が聞こえてきたが、無視だ無視。
こういうことは無視するに限るって前世でも...なんかまたひとつ思い出したな。
陰口は無視するに限るってことくらいだけど、それくらい陰口を言われてたってことか。
「やった!これで私も卒業できるよ!」
そして、僕はまだ興味があるとしか言ってないですよ。
まだ<魔力撃>は受講してませんからね。
「どういう授業なんですか?」
「え!?そのまま入ってくれるんじゃないの!?」
やっぱり。
「<魔力撃>に興味が湧いたので、どんな内容なのかを聞きにきたんです。入りたい内容なら入りますけd」
「つまりプレゼンすればいいのね、オーケイ!(頑張れー、私!ここで逃したらきっと今年も卒業できないんだから!)」
心の声、聞こえてますよ。
「えっとね、<魔力撃>っていうのは魔法に特化している人でも近接戦闘が行えるように編み出された魔法(本人談)なの!魔法ではあるんだけどメインは近接戦闘だから、<戦闘>の授業なんだ!で、魔法の中でも簡単な<詠唱>とちょっと難しめな<魔眼>から編み出されている(本人談)だけあってとっても覚えやすいの(本人談)!使いこなすのにも時間はいらないし(本人談)、とにかくものすごい簡単(本人談)なんだよ!...ぜえ、はあ、どう?入りたくなった?」
と、言われましても。長いんだから、そんなぜえはあする前に息継ぎを入れて話したほうがよかったのでは?
あと、ちょくちょく(本人談)が入れ込まれているのはなぜなのか。
っていうところを除いて考えてみよう。
まず初めに魔法が特化している人でも近接戦闘ができるようにっているのは、まあ僕の場合都合がいいことではある。僕が魔王であるという理由と神話生物による精神汚染被害を少なくするっていう理由で、僕はほぼ<パーティ>は組めない。だからこそ<護身術>か何かを学ぼうとしていたわけだし。
次に覚えやすいのと簡単な点。いうまでもなくこれはメリットだし、しかもデメリットが付随していない点もグッド。
そして、武器を使用しないこと。杖か本か、どちらにせよ使えそうなのはいいな。
あとは実績だが...ふむ。
「質問です。実際にこの単元を受講して勝利したイベントとその回数は幾つなのですか?」
「...あー、えっとね、実はこの単元って今年できたばかりで...それもあってか誰も入ってくれないんだよね...えへへ(なんでくぐもらせないのー!こういうのは言っちゃダメな情報でしょー!)」
「なるほど...」
また心の声ダダ漏れだし。だけど、まあ新しいからこそ不安で入ってこないってことか。特に<戦闘知識>みたいに50年も卒業できていないわけじゃないんだな。
つまり、この先何が起こりうるか検討もつかないということ。これはメリットにもなりうるしデメリットにもなりうるが、こういうことはメリットで捉えてこそ楽しくなるもの。
となるとデメリットは...ないな。<護身術>よりも簡単そうで、<棒術>のような不安もない。<戦闘知識>と同じでイベントで勝てるかどうかわからないが、そんなの今年できた単元なら全部一緒だ。
だから、僕がここに入らない理由は一切合切存在することはない。
「わかりました。僕、この単元を受講しまs」
「ありがとー!!!やったー!!!じゃ早速いこっかー!!!」
腕を掴まれる僕、そしてそのまま嬉々としてドアの奥に入るこの人。
そういえば名前聞いていなかったな、一体なんだろ。
「僕はマリア・ヒルドと言います。ドアに入る前に聞きたいんですけど、あなたの名前は一体?」
「あ、そ、そうだね!私の名前はアキ!今後ともよろしくね!」
「はい、よろしくお願いします。アキ先輩」
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「ふむ、きたか。アキよ」
「はい!この子が<魔力撃>を受講してくれたマリア・ヒルドです!」
「だろうな...さて、久方ぶりだな、マリア・ヒルドよ」
......僕は、基本的にどんな場所であっても知らない場所に来たらまず真っ先に部屋全体を調べる。これは僕の人生の3割を費やして遊んだゲームでの習慣の名残だ。
あのゲームは、ステータスよりも情報の方が大事だからね。死ぬ時は死ぬ、相手が自分よりも強いことが明確にわかっているんだからね。
だから、死なないために空間に何があるかを明確にしてから情報を探していた。それはこの世界も同じ。
僕自身、この世界では死にたくない。前世はとにかく安全な世界だったことを覚えているが、この世界はそうではない。
いつ死ぬかわからないからこそ、周りを調べるのだ。が......
...この部屋は、ただの教室だ。
窓はないが、机と椅子がそれぞれ2つと黒板、その前には教壇がある。
僕はいわゆる教室の黒板左側のドアから入った。なので、横から見える教壇に座っている人間も自ずと良く見える。
「お、お久しぶりです。バルバトス・ストーリク校長先生」
「よし、しっかりと覚えていたな。俺が言ったことを守ることはこの<国立学園>では絶対だ。誰かに肩入れなどはしないが、絶対に守るように。いいな!!」
「「はい!」」
いやアキ先輩まで言わんくても。あ、もしかしてアキ先輩に対しても言っていたのか?
「さて、マリア・ヒルドよ。貴様はこの奥の扉から<魔法>の単元を選ぶことになる。もしくはすでに決めているか?」
ああ、そういえば<3単元>選ばなきゃいけないんだったな。魔法、魔法か。僕の場合だと<召喚魔術>とかになる...
いや待てよ。そもそも僕のスキルは[召喚魔術]だ。魔術は別世界の魔法だとスキル説明には書かれていた気がするが、だからとて[召喚魔術]が魔法という理由にはならないだろう。
それに、確か養父が言っていた<召喚(クトゥルフ神話)>を持っている奴が魔王って、つまり僕だけか僕以外の限られた人しか持っていないってことでしょ。持っているなら魔王っていう情報がある以上、その魔法と思われるスキル専用の授業はないんじゃないか?
だとすれば、今僕が受講すべき<魔法>の単元は...
「いや、決まってないです。何にするかは見てから考えようと思います」
「なるほどな。ククク、久しぶりに楽しくなってきたじゃないか」
「?」
何が楽しいのかわからないが、まあいいか。
この世には理解できないこともあるんだからね。
お持ち帰りがメェーちゃんなのかマリアなのかはご想像にお任せします。




