お話とお話とお話
またもや短め。年末なんでいそがしすぎるんだ...
「この世界には、2つの勢力がいる。<魔王>と<勇者>と言うものだ」
「で、それと僕が[魔王の種]の保持者であることがバレていることになんの関係が?」
「......あなた、人の話を最後まで聞くようにって教わらなかったのね」
...ふむ、確かに。
「わかりました、少し静かにします」
「はあ、続きを話すぞ......先程のふたつの勢力は、基本的に現れるたびに争う。つまり、いない時があればいる時もある。少なくとも前回、73年前の時に現れた時はその後10年間にわたって争った...」
なぜか急に始まった歴史の授業は、僕のことなんか放置して進んでいく。
何か言っても、さっき言われた通りのことを言われるだけだろうし、このまま聴くとしよう。
「だがな、これまで<魔王>が勝ったことは一度もない。なぜならば、<勇者>に味方する者たちである<聖神信仰教会>というこの世で最も大きい勢力が味方しているからだ。奴らの邪魔のせいで、<魔王>は勝てなかったのだ」
ふうん、なるほどね。ただ、<魔王>が勝てないのは多分、<勇者>が明らかに強すぎる武器を持っているからじゃないかなあ。
だって、ねえ。あの店で見た[勇者の種]を持つ男子が手に入れた剣、下手したら触れただけで死んじゃうだろうし。近づくだけでも危なかったのに、それ以上となると余計に危険だろう。
いわば<魔王>が不利な状況にある状態で戦っているわけだから、そりゃあ負けるでしょうと言う話。
「だからこそ我々はこう考えたのだ...そう!」
「"<魔王>を助ける勢力があれば勝てる"とね!」
「それがあ、<反聖教>なんだよお」
「...は、はあ」
いやあしっかし驚いたなあ、まさかマナお姉さますら信仰者だったとは思わなんだ。
本当、エリカ先輩の言う通りだった。変、と言う言葉一つで言い表せる人たちだな。
「あの、それあなた方に利益がないのでは?まだなんでそんな戦いに介入しようとしているのか知りませんが、絶対<勇者>に加担した方がいいですよね」
だが、変なのは信用するに値しないし、それどころか面倒にも感じる。それに...
「それに、どう考えても僕が<魔王>ということを知るわけにはなり得ません。違いますか?」
だって、[魔王の種]はほぼ全ての[鑑定]でバレない特別なスキル...のはず。
一体シナさんの[鑑定]がどれほどのものなのか知らないが、超がつくほど強力でもない限り見破ることは困難...だと思う。
一回もそういう状況になってないからね、本当に[魔王の種]の説明が正しいかすらわからん。けど、少なくとも書かれているんだから正しいと考えていいだろう。
「あの、基本的に負け続けである<魔王>が勝つためには、できうる限り<勇者>に対し情報は与えない方がいいと話を聞く限りは思ったんです。ですから、なぜ僕が<魔王>であることがわかったのかの詳細と、なぜ僕に味方してくれるのかがわからないとね、マナお姉様を含めて信用できません」
マナお姉様を含めるのは、そもそも養子になった詳しい理由すら聞かされてないのもある。予約のような感じで養子にした?絶対養子にする前から僕が[魔王の種子]を持っていること知っていたでしょ。
「「「......」」」
目が丸くなるヒルド家御一行。こうなることくらい、<魔王>の目線になって考えれば理解できることでしょう。
「...いや、なるほど。確かにそれはそうだが、ううむ」
「何か、<魔王>に対して話しずらいことでも?」
「あ、いや、そういうことではなく...我々は、なぜ君が<魔王>なのかがわかるのか知らないのだ」
......why?
じゃああれか、騙されている可能性も否定できんわけか、なるほど。
「本部の方で通達が来てな...なんでも、<召喚(クトゥルフ神話)>という見たことも聞いたこともないスキルを保持するものが魔王らしくてな...君が気絶中に<鑑定石>を使わせてもらったところ、持っていることがわかった」
あ、そうゆう。
ということは、[魔王の種]の状態まではわからないということか。一応隠しとく動きでいいよね?
「それと君に味方する理由だが...ふむ、私たち家族h」
「待って、それは血縁者以外の絶対に誰も言わないって約束したじゃない」
「だがマリアはもう私たちの家族であり、<反聖教>信者であり、大事な娘だ。この家訓、伝えても...」
「そうだよお、マリアちゃんは大事な妹だよお」
嬉しいような、悲しいような。
ゴア父さんとマナお姉様は僕のことを家族と認めてくれているみたい。養子としては嬉しい限りだが、どうやらシナさんはちょっと棘があるのね。
シナさんが一番の曲者っぽいな、これ。
「そうよ、マリアは大事な娘。でもだからこそこれを伝えたくはない」
「あのなあシナ、だからこそ教えるべきなんだろう?かの方の...」
「いやあ、そうだねえ。確かにマリアちゃんに教えるのはちょっとお...」
「あ、マナお姉様もそっち派なのね」
まさかのマナお姉様もですか。そうですか。
ううむ、どうするか。言ったからにはちゃんと聴きに行きたいところだが、教えたい派が父親だけなんだよね...
諦める方が...良さそうだね。
「わかりました、味方してくれる理由は問いません。ですが...」
「ああ、そういえば伝えるのを忘れていたことがあったわ」
「な!おい待て、あれは絶対に認めないぞ!」
「???」
一体何なのか...シナさんが<メヌー・リング>を操作しているように見えるけども、おそらくは<インベントリ>を開いているのかな?
そして一瞬の光、慣れたもんで目は閉じないが...取り出されたのは、ふむ、一枚の紙かな。
目の前にあるちょっとでかいテーブルに置かれる紙には、デカデカと文章が書かれている。
なになに...<学園生活に関する契約>?
「これはね、<契約書>。あなたと私たちで結ぶ契約を、この紙にまとめてあるの。読み終わったら、サインをしてね」
「おかーさん?やらないって言ったよねえ?」
「あら?マナにもこの契約はさせたわよね。それをさせないのは、さすがにずるいんじゃあないかしら」
「う...」
、学園の中途退学を禁ずる
、寮生活を禁ずる
、学園生活における異性との恋愛を禁ずる
、マナの言うことを聞くこと
、マナよりも先に卒業しないこと
くらいか、なるほどね。
で、えーっとサインする場所は...ここか。
「あの、ペンを貸してくれないでしょうか」
「あら、ごめんなさい...これよ」
「あ、ありがとうございます」
これで...マリア・ヒルド、っと。
書いた瞬間、紙が眩い光を放つ。そして、何も起こらなかった。
.........ん?
これ、ちゃんと何か起こっているのだろうか。あ、でも紙から文字が消えてる。
「ん、これで契約終了よ、おつかれさ...待って、何かが違う」
「え?」
「...いや、いいわ。私の気のせいだったみたい」
うーん、いやなよーかん。
さて、本当に年末なんですが、1月15まで小説が投稿できません。
なぜなら、さらに忙しくなるから。勉強しないといけないんじゃ...
でも書き溜めはしておくので乞うご期待、と言ったところでしょうか。
まあ、みなさまも良い年末をお過ごしください。良いお年を!!




