怪しい宗教勧誘には気をつける、ここテストに出るからね
少しずつ、1話の長さを伸ばせればいいなあと、そう思います。
「戻ったよお...何かあったのお?」
お、マナお姉様が帰ってきた。ちょうどいいタイミングだね。
「えっと、エリカ先輩は僕に学校の卒業のために必要な、年4回のイベントについて説明してくれたんです。ただ、途中d」
「ははは、特に具合とかも悪くなってないよ。ほら、ピンピンしてるでしょ?」
説明を遮るように言葉を遮られる。何か嫌なことが......いや、先輩の嫌なことが何かなんて考えてもいいことはないし、この思考は一旦やめよう。
「あー、うん。そうだねえ。この調子なら大丈夫そうだあ、よかったよかったあ」
まあマナお姉様は気づいていそうだけども。長い付き合いによるものだろうか。
「それで?シナさんはなんて?」
おっと、そういえばマナお姉様は母親と話していたんんだよね。
あとシナって名前なのか、おうけい。
「うん。なんでもねえ、今日の晩御飯はレストランの予定なんだって」
「へぇー。現地集合?」
「みたいだよお。あ、流石に今回はエリカはダメだってえ」
「まあ、そりゃ養子との初顔合わせだからね。部外者は流石にまずいってことだね」
なるほど、話を聞くに結構家族ぐるみで仲がいいっぽいな、この2人。
「そしていつもの場所なのでえ、身だしなみを整えてからじゃないといけないねえ」
「じゃあ、今日は解散かな?」
「うん。ごめんねえ、エリカ」
「いやいや、謝られる理由はないよ。それとマリアちゃんは......」
エリカ先輩が顔を近づけてくる。
その顔に先程までの陰りはなく、一片の曇りもない晴れやかな笑顔が浮かんでいた。
よかった...のかな。根本的な解決も何も、そもそもなぜあんなにも暗い顔をしていたのか知らないし。
コンッ、と額と額がぶつかり合う。そして。
「実はね...マナのお母さん、シナさんは結構変人でね。ああ、いや。変ってい意味で言うのであればショゴスのほうが変なんだけど、それと同じくらい変なんだよね」
へ、変ですか。ショゴスは変っていうか、普通の人から見たらおぞましいと感じると思うんだけども...
まあでも、だ。ショゴスを引き合いに出すほど変なのであれば、義母はもしかすると異形の何かなのかもしれない。
化け物の母親......いいのか悪いのか、どちらかといえば悪そうだけどもそれはそれで面白いな。
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「へえ、勇者にあったんだねえ。それにそのお店、すっごく気になるなあ」
「ですよね...」
一度家に帰る途中、僕はマナお姉様に昨日あったことを話していた。
というのも、たまたま昨日は義父母とマナお姉様が帰ってこなかったので何も起こらなかったのだが、どうも外出した時は親に報告をする決まりがあるみたいだった。
面倒でも、家の決まりならば仕方ない。養子とはいえ家族なのだからね。
でもね、マナお姉様。アイツの店はやめといた方がいいですよ、だってアイツだし。
「でもひとつだけ注意ねえ。これからはその勇者にできるだけ会わない方がいいよお」
「え?」
いや、お姉さまときましたら何を当たり前のことを。
一応魔王の種だからね、僕。何があってももう勇者とは接触したくないし、もちろん自分から会いに行くとかもってのほか。
ただ...まあ本当にただの転生者なら、これから安定した生活をするにあたって勇者とのつながりが欲しいと考えるかもしれん。
だって勇者だし。どう考えたって、仲良くなれば絶対いいことが起こりうるだろう。軽く考えただけでも、危険な時に駆けつけてくれるというアドバンテージが思いつくし。
...ん?じゃあなんでマナお姉様は会わない方がいいとおっしゃられるんだ?
「だってえ...ああ、直接会った方がいいかなあ」
「??」
まるで意味がわからん。直接会った方がいいってことは...
「母親にってことですか?」
「そおそお、エリカにも言われたでしょお?本当に変だからねえ、私のお母さん」
自らの子に言われてますよ、お母さん。どんだけ変なんだよ...
って、いつの間にか家の目の前についてたね。
自然に開いた門をくぐる。と、そこには玄関を開けているエイルさんがいた。
「ただいまあ」
「た、ただいま帰りました」
「お嬢様方、おかえりなさいませ」
うう、めっちゃ硬くなってしまった。一回この扉をくぐった時に言ったはずなんだけど、これは何度かやらないとなれないかなあ。
「話は聞いております。着衣室の鍵を開けてありますので、ご自由にどうぞ」
「いつもありがとうねえ、エイル」
「いえいえ」
そして下がるエイルさん。ニコニコしながら見ているマナお姉様。何もわからん僕。
「えっと、着衣室って...?」
「ああ、マリアちゃんは知らないよねえ。とりあえず向かいながら説明するねえ」
歩き出すマナお姉様、ついていく僕。
マナお姉様は階段を登り、そのまま奥へ向かう。2階にあって、しかもエイルさんは開けてあると言っていたから、多分特別な部屋なんだろう。
「着衣室はすごいんだよお!なんたってえ、入ったらもう服を着替えているんだもん」
「入っただけですか...すごいなあ」
「すごいよねえ。これを作った人たちは、本当に天才だよねえ」
多分魔法だろうなあ。魔法ってすごいなあ。
「ただ、<魔力>の消費量がねえ...あ、そういえば<魔力>については知ってる?」
「知りませんね」
知っているわけないじゃん。あ、でも何回か魔力って文字は見たことがあるような、ないような...
うーん、どうだったっけか。
「<魔力>っていうのは、簡単にいえばMPのことなのお。空間にあるものが魔力で、生き物の中にあるものがMPなんだよねえ。まあ厳密にいうともうちょっと違いがあるんだけどねえ」
「な、なるほど」
なんか複雑だあ。
「でねえ、例えば今僕たちが歩いている廊下ってえ、<魔道具>の<魔灯>っていう物で明るくなっているんだけどお」
あ、この光ってそんな道具でできていたのね。
あんまし探索とか詳しくしてなかったからわからんかったけど、確かによく見ると天井に何かあるな。
形状としては、僕の前世の世界で昔使われていたらしい蛍光灯によく似ている。あれ<魔道具>なんだね。
「これねえ、<魔力炉>っていう<魔力>を生み出す装置から送られてきた<魔力>を使っているんだけどねえ、使うたびにお金が取られるんだよねえ」
「あー、なるほど。確か着衣室が使う<魔力>の消費量が多いから、お金も多くかかるってことですね」
「そーゆーことー」
つまりは電力か。電力代ならぬ、魔力代がかかっているわけだ。
「だからあ、お金の節約のために基本は使わないようになっているのお。楽だからお金持ちは当たり前のように使っているんだけどねえ」
え、確かヒルド家の父親ってマナお姉様の入学式にボディーガードをつけようとしていたほど裕福ってことじゃないの?
なんか違う理由があるってことなのかなあ。
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感覚で言い表すなら、"一瞬"だろう。
ドアを開け入った瞬間のこと。外出用に着ていた服が消えて、素肌が見えるようになる。
と同時に、肌にかかる服の感触。
そしていつの間にか外にいて、いやおそらくだが部屋の入り口と出口がつながっている。つまりは、入った瞬間出たのだと考えられる。
で、廊下にいる頃にはすっかり夜会服に身を包まれていたのだった。
「この服を使うときとかあ、他にも特別な時に着る服を着る時だけ使うんだよねえ。いやー、やっぱりこの服はいいよねえ」
「こっ、これはこれですごいですね...!」
黒。引き込まれるような暗い色をした、そのドレスは飾り立てられておらずだが質素ではない、言うなれば妖美さが際立つものになっている。
スカートが、床につくほど長く同時に足のラインが見えるほど細い。肩はほぼ見えていて、脇だって見えてしまうほどだろう。
一応僕の知る限りこれだけだと正式なものじゃなかったような気がするが、この世界ではこれで大丈夫なのかもしれない。
ただ...少なくとも5歳児が着る服ではないよね、これ。
知ってるよ、夜会服。あれでしょ、貴族の夜の正式な礼装ってやつ。あれって子供も着なきゃいけないの?
すると、マナお姉様が少しびっくりしている僕を見て一言。
「あはは、大丈夫だよお。私は3歳の時に初めて着てえ、それから何度も着たら慣れたからねえ」
それは今現在の解決方法ではないんですよおおおお。
というか3歳から着てたのか、マナお姉様すごい。
って、よく見るとマナお姉様の姿えぐいな。結構大きいその胸が強調されるような感じで、うーんいいっすねえ。
これはあれだな、世の男性がつられるほどやばいやつだ。まあ僕もつられるんですがね、ははは。
「ようし、あとはレストラン<アビス>だけだねえ。あ、歩きにくいとかない?」
「だ、大丈夫です。ちょっとだけ慣れが必要ですけど...」
と言うのも、結構足の可動域がない。いつもの1/4といったところだが、それでも慣れていないときつい...あ、やべ。
「きゃああああ!?」
転ぶ。しかも階段で。思わず目を瞑り、肩が動くんでとりあえず頭を守...る必要がなかった。
ギュッ
とされる感触。見ると、目の前に大きい胸。そして。
スタッ
という音とともに、足が床につく。前に倒れ込んだはずなんだけど、いつの間にか床と垂直になっているのはどういうことなんだ?
「おおー、大丈夫だったあ?」
「あ、はい...ありがとう、ございます......」
「お礼はいらないよお。家族なんだから、助け合わなくちゃねえ」
うーん、あったかい世界だ。なんなら今ぎゅっとされていることで物理的にあったかい。
目元が熱くなる。それに気づき、急いで顔を振って雫を落とす。
なぜだろうか、特に今の部分で泣ける要素はなかったはずなんだが。
確かに女性と扱われなかったような気はするけど...まあ調べれば世間がそれを望まないことはわかったし...
なんでなのかな?よくわからない。
なぜかずっと目頭が熱いまま、なんなら頬を伝う液体の感触は止まることを知らないらしい。
.........止まらない理由、いつかわかるだろうか。
まあ、いいや。今は関係ない。
「ところで、いつになったら話してくれんですか?その腕」
「え?あはは...だめえ?」
「あんまりしつこいと嫌われるって、エリカさんから言われたりしませんでした?」
「うわあ、マリアちゃんは心が読めるんだねえ」
「読めません」
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