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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第一章 未狂理解不能
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冒涜的召喚師の最初

前回よりはちょっと長めです

 真っ白。そうとしか表せない部屋だった。


 起き上がってみると、自分の位置がわかりやすい。僕は部屋の中央の床に寝っ転がっていたみたいだ。


 見渡す限り、白。だがまわりは結構広い、そんな部屋。


 雑に言ってしまえば病院の個室がかなり近い。だけど、ここが病室なのであればベットなどがないのはおかしい。


 じゃあここは一体どこなのだろうか。


「………ふふっ」


 そんなこと、わかりきっている。


 ()()()()()()だ。


 それ以外にあるだろうか、いいやない。断言できる。


 こういう場所には行ったことがある。厳密には自分ではなく、自分がrp(ロールプレイ)しているキャラクターたちだが、まあ些細なことだと思う。


 たいてい、ニャルラトホテプが「楽しそうだから」みたいなくだらない理由で連れてこられる世界の、最初の部屋。


 それとこれは酷似している。酷似どころかそっくりそのまんま。パクリと言うやつだ。


 まだ立てはしないが、できる範囲で探索をおこなう。目星と言うやつだ。

 だが、何も見つからなかった。窓や照明器具さえないのは流石におかしい………いや、ナイアルラトホテップ(ニャルラトホテプ)ならできるな。うん。


 ドアもないので進むことも出来ないし、さて何をするべきか…


「……あ」


 そういえば、なぜ僕はここにいるのだろうか。


 まあ、どう考えてもわからないのだが。


 ……あれ?


「ここに来る前って……僕は……何をしていたんだろうか」


 どうやら僕は記憶喪失らしい。なぜ記憶を失っているかはわからないが、なにか意味があるのは間違いないだろう。


 そういえばニャルラトホテプは覚えていたな。その別名である、ナイアルラトホテップも覚えている。


 だが、僕自身の名前は覚えていない。少なくとも僕がニャルラトホテプとかナイアルラトホテップという名前ではないことは分かるが、自身の名前よりも覚えなきゃいけないことなのだろうか。


 ………いや、違う。だんだんと思い出してきた。


 ニャルラトホテプとかナイアルラトホテップというのは、クトゥルフ神話におけるやばい生き物のことだ。って、なぜ自分の名前よりも先にそんなことを僕は思い出しているんだ?


 まあ、その答えは流石に分かる。というか思い出した。


 僕はクトゥルフ神話がものすごく好きなんだ。少なくとも、自分の名前よりも。


 クトゥルフ神話………とある小説作家が創った、神話。なぜそれが好きなのかは、今は考えなくてもいいだろう。少なくとも、今思い出してもあまり意味はないだろうし。


 なら、あれだ。起きたときのことを思い出してみよう。


 たしか、まぶたを開けるのも辛かった。喉も痛くて………で、なんとか声を出すことができてそれが男の声で………


「……がっかりした」


 何故?というこの疑問は、結構核心に迫るような気がする。


 ただ、答えは分かる。自分は、いわゆる性同一性障害(トランスジェンダー)になっているのだ。


 その自覚がある。だから、がっかりした。


 たったそれだけなのだが、こうやって考えないとわからないものなのだから、なんというか………


 ………〆る言葉が見つからない。とにかくそーゆーことなのだ。うん。


 だがあまり考えたくはないな。なぜならば、ここについての予測ができてしまう。


 性同一性障害は、ほとんどの人が手術をする。性転換の手術だ。


 でも、それは莫大なお金がいる。そのため、手術できない人もいる。


 手術する理由とは単純で、もう一方の性別……僕の場合は女性になりたいからだ。


 だけど、もう一方の性別になりたい理由は人それぞれだ。僕の場合は………うーん、思い出せない。なぜもう一方の性別になりたいのだろうか。


 それともう一つ、性同一性障害をもつ人は、大抵いじめを経験している。それもいじめられる側の。


 そしてストレスがものすごいかかる。違和感やら、いじめやらで。


 その重圧に耐えきれず………いや、これ以上考えないでおこう。


 とにかく、その可能性も否定できない。もしそうなのだとしたら、ここは。


 ………ないな、うん。心臓の音は物静かなこの部屋ではよく聞こえるのだから。


 少し目線を変えて、持ち物を見るか。そうしよう。


 服は着ていて、違和感がない。だから、この服は多分いつもの服というやつだ。


 ポケットの中には………なにもない。


「………わっかんないなー、はあ。」


 思わず寝っ転がってため息が出てしまう。結局何もわからなかった。


「何がですか?」


 唐突に、声がした。すぐに飛び起きる。


「………誰?」

「さあ?誰でしょうか?」


 まわりを見渡す。どこからか、ものすごく胡散臭い、男性の声。


「おばけ」

「いやいや、流石にそれはないでしょう」

「……あなたが聞いたから答えたのだけど」

「そういえば、そうでしたね」


 そういう声が聞こえてきて、突然。


「じゃあ大ヒント」


 目の前に誰か現れた。予兆も何もなく、まるで声がしたときと同じように唐突に。


 そいつは……男だ。結構筋肉がついている。マッチョとは言えないが。


 いわゆる半裸のその姿は、どこかのいらすとで見たことがあるような姿をしていた。


「……神?」

「様くらいつけましょうよ」


 そういって、その神は手を差し伸べてきた。


「一人で立てないのでしょう?」


 まあたしかにそうなのだが。仕方なく、その手を借りて立ち上がる。


 ………意外と、そいつは普通の身長だった。大人の男性の平均身長くらい。


 だが、自分はその半分よりも大きいくらい。まだ子供なのだ。


 というかこいつ誰だよ。

一体誰なんだ………?

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