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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第一章 未狂理解不能
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×学園生活のすゝめ ○鈍器

学校生活まであと少しです。

「学校?意外と楽しいところだと思うけど、まあそれは人によるかな」



 次の日。なんでも学校が休みらしいお姉様方に連れられ、僕は外に出ていた。



 王都自体はきたことはある。母さんに連れられ、図書館に来た時。昨日の変なお店の時にも王都の商店街にきたし、これで3回目となる王都探検。



「マリアちゃんならだいじょおぶでしょお、だってねえ。()()、なんだしい」

「...隠し通せるとはおもえはしないけどね。あの化け物、転生者ならピンとくるかもしれないんでしょ?」

「うん。知っている人は知っているかも」



 神話生物の中でも一二を争うレベルの有名さを誇るタコ(主神)や混沌(愉快犯)と比べるとさすがに知名度は低いが、全体的に見れば高い方だろう。



 そのため、低い確率ではあるが転生者であることがバレる可能性がある。まあ地球人で且つクトゥルフ神話をある程度知らなければいけないという、天文学的な確率だが。



 とは言っても、だ。



「でも僕はショゴスたちのこと見せないし、よっぽどのことがないとバレないと思う」

「...ショゴス()()、ねえ...」



 そういい、エリカ先輩はマナお姉様が抱きかかえているメェーちゃんを見る。



「メェ〜」



 撫でられてとても気持ちよさそうな顔をしているメェーちゃんは、可愛いという言語以外じゃ表せないだろう。



「この子、本当に化け物なの?こんなに可愛い子が?」

「可愛いいなあ、メェーちゃんはあ!」 ナデナデ

「メェーちゃんマジ天使」 ナデナデ

「メェ〜」

「あのねえ、化け物が天使なわけないでしょ!......まあ可愛いのは認めるけどさ」



 天使どころか信仰者の多い地母神様ですがね、先輩。伝えたって理解できないだろうから、メェーちゃんという化け物だって言ったけどね。



 でもね、それを踏まえたって可愛いのだ。かわいいは正義、はっきりわかんだね。



「それでも、あまり学校内では出さないようにね。マナもちゃんと教えてあげるように」

「「はぁーい」」

「メェー!」



 手を上げて返事をするメーちゃんも、やっぱりかわいい。



「えへへぇ、かわいいねぇ」

「...あなたたち、出かけている理由を忘れているでしょ。マリアの制服を買いに来たんだからね?」



 ============================================






 制服。学校といえばで思いつくものといえば、これとランドセルが最強だろう。



 だからこそ、今僕は泣いているのだろう。鏡の前で制服姿を確認している今だからこそ、昔のことを思い出せるのかもしれない。



「お、お客さま!?如何なされましたか!?」

「いえ...大丈夫なんです...ただ、嬉しくなっちゃって...」



 まだなんとなくしか思い出せてないが、僕の前世の体は男性だった。



 でも、心は女性。だからスカートに興味を持っていた幼稚園時代...



 懐かしいけども心が痛くなる、そんな感じの記憶。



 世間体のことを気にした叔母は、僕のことを男として育てた...はずだよな。



 うーん、ぼんやりすぎて思い出せない、または思い出したくないのかも。



 過去は過去、今は今って言ってもね。できるわけがないのは、一番僕が知っているはずなんだが。



 ...ああ、母さんのこと思いだしちゃったよ、全く。



「嬉し泣き......途中から悲しくなっちゃったよ、母さん」

「まあまあ、マリアちゃん。目元赤くなってるよお?」



 あ...マナさん。



「お姉様...ちょっと嬉しくなっちゃって。どうでしょうか、この姿」



 マナお姉様を悲しませまいとする、わけではない。ただ悲しんでいる姿を見られたくないっていうだけだが、結構あからさまなウソをつく僕。



 嬉しいと辛いだと、大体4:6位だろう。それくらい過去のことは引きずれるのが人間なのだろう。



 最も、引きずるからこそ強くなれるのだが。



 ......もう一度鏡を見る。そこには、いわゆる中学生が着るようなブレザーを着ている5歳児が。



 まあブレザーと違うところといえば、ブレザーの硬い感触が着ている側からだとあまり感じられないところだろう。



 初めて来た時のブレザーの感触、それがない。いやあるにはあるんだが、とても薄くなっている。



「うんうん、よく似合っているよお」

「よかったー、似合っていなかったらどうしようかと」



 流石に似合ってないはありえない...よね?



 自分の姿に確証が持てない女の子なのはしょうがない、おめかしなんてしたことなかったからね。



 あ、そういえば宝物庫で着ていた服ってどうなったんだろう。人生初のおめかしみたいなものだったけど、<インベントリ>にもなかったよね。



 いつか巡り合えるのか、それとももう会えないのか。



 多分前者だよなあ...



「メェー」



 おっと、メェーちゃんをマナお姉様に預けっぱだったね。



「メェーちゃんは頭の上が好きなんだよねえ」

「メェー!」

「あはは...確かに出てきている時は頭の上が多いね」



 あとは抱かれているか。人形サイズだから、抱っこするとちょうどいいんだよね。



 程よい暖かさだし、何よりかわいい。



 なおメェーちゃんは長い髪の毛をもつマナお姉様の頭の上でゆっくりしているので、そのままにしておく。マナお姉様、気に入られたみたいで何より。



「サイズとかもだいじょおぶそうだからあ、あとは購入かなあ」

「お小遣いという名の購入資金は...わあ、まだ残ってる」

「それはもお、お父さんが絶対に足りるように渡してくれたみたいだしい」



 今残っているのは、金貨3枚。ブレザー以外にも、バックなんかもいいものを買っているはずなのにな。全然残ってらっしゃる。



 確かどん......教科書も銀貨60枚だったし、本当にたっくさんお金を渡してくれたんだなあ。



「ほんと、マナのお父さんって過保護だよね。入学式の時だって、ボディーガードつけようとしてたし」

「...それ、僕はないと祈りたいなあ」

「どうだろお。あの時よりも裕福になっていることだし、学校自体に対して魔法を使いそうだねえ」



 ええ...



「お義父さんって、そんな人だったんだ...」

「そういえば合っていないんだっけか、マリアは」

「仕事で忙しいからねえ、しょうがないねえ」



 仕事。大人になると付きまとう、怨霊。



 どんな世界でも、仕事で家を開ける人はいるもんなんだろうなあ。



 まあお義母さんにも会っていない身からすれば......やっぱ何もなかった。



「ん...お母さんが家に帰ってきたみたい。会えるか聞いてみるから、ちょっと待っててね」

「え...?」

「ああ、マリアは知らないよね。私が説明しておくから、マナは<通話>してきな」

「うん、ありがとうねえ」



 はい出ました急なやつ。<通話>って言ってたけど、デ○○◯ードみたいなやつだろうか。



「エリカ先輩、<通話>って?」

「そうだね、簡単に言ってしまうのなら、<メヌー・リング>に追加した機能みたいな感じで、<通話>を入れたもの同士が会話できるようになるものなの。声だけ聞こえるから最初はびっくりするかもしれないけど、なれるとものすごく便利な機能よ」



 はえー、正しく例え通りか。電話、っていうのはちょっと違うけど、遠くのもの同士で会話できるのはそりゃ便利だろうよ。



 あと、最初はびっくりするかもしれないっていうのは結構大事なことだな。それはつまり、元々はなかったことを意味する。



 追加する機能って言っていることを考えると、この世界に生きる人々が作り上げたものなのかもしれない。それこそ、通話機能がどれだけ便利か知っている転生者なら尚更...



 いや、そういえば地球以外の場所から転生者がいる可能性の方が高いんだった。このことすぐ忘れるんだから、気をつけないとな。



「なるほど」

「これだけの情報で理解できるとは、やっぱりマリアは頭がいいんじゃん」

「あはは、理解できるだけですけどね」



 実行力はなし、それが僕。



「あ、ちょうどいい、今のうちに<3単元>について説明しちゃおうか。マナも...うん、まだかかりそうだしね」

「さ、<3単元>?」



 なんじゃ、そのいかにも勉強に関係ありそうな単語は。



 嫌な予感はしないが、なかなかに情報量多いな、今日。



「まあ学校のことなんだけどね......<3単元>は学校で選ばなきゃいけない3つの授業を指すの。ほら、人によって得意なことや好きなことは違うでしょ?だからたくさんの授業のうち、区分分けされた3つの種類の授業を自由に選べるようにしてあるってわけ。とは言っても、さすがに少しはルールがあるけどね」



 ほお、なるほど。個人の好きなように授業を選べ、と。



 ...ミスった時のリスク、高そうだなあ。



「区分はそれぞれ、<魔法><戦闘><その他>という名称なの。<魔法>は文字通り、魔法に関連したものを学ぶ授業。<魔道具><詠唱><魔法陣><魔眼>の基本的なものに加えて、<召喚魔法>などの特化した授業や<魔法学>という魔法があまり上手くない人向けのものもあるよ」



<魔術>っていうのもあるのかなあ。魔法とは違うだろうし、さすがになさそうだけど。



「<戦闘>は文字通り、切って刺して殴り合う戦いのための授業。<格闘><ナイフ><剣>、<弓><槍><徒手空拳>なんてものもあるし、<魔法>と同じであまり得意じゃない人向けの<戦闘知識>もあるんだよ」



 はえー、遠〜中距離に該当する武器もあるのか。というか、魔法がある世界で弓使うやつおるのか。



 まあでも、僕は<戦闘知識>かなあ。そもそも僕自身が魔法特化なところあるだろうし。



 極振り的な意味で言うのであれば、精神値特化だけども。



「そして、<その他>。ネタ的なものから実用性のあるものまで、幅広くあるよ。しかも、この授業だけは自分たちで作ろうと思えば作れちゃう、超自由な授業なんだ。まあマリアは<ギルドズパーティ>固定だけども」

「超不自由じゃん」

「まあね」



 そういう条件のもと、マナお姉様の妹になったんだしね。



 でもまあ、僕はそれで問題ないし。何ならマナさんがいるって理由で授業を受けていただろうし。



「で、ここからが重要なんだけど。この<3単元>で選んだ3つすべての授業で合格すれば、晴れて卒業。最短1年で学校を卒業できる。んだけど......」



 ん、なんだ?雲行きが怪しくなってきたぞ。






「...その合格のためには、<国立学園>で年4回のイベント、すなわち<国際競技大会><単元対抗大運動会><新魔法発表会><ザ・コロシアム>でその単元のチームで優勝しなきゃいけないの......一応毎年優勝チームは変わっているんだけどね、やっぱり強い単元と弱い単元があるっていうか......」



 あー、なるほど。そりゃあ即戦力(転生者)の取り合いにもなるわな、だって卒業がかかってるんだもんよ。



「一応、合計でいいからね。長い目で見れば絶対に合格できるんだけど......これまで合格できずに老衰で亡くなられた先輩方は、軽く10000を超える。しかもいまだに増え続けてる」

「えっ、それはもう学校として欠陥だらけのシステムなのでは?」

「そう、なんだけどね...」



 ...うーん、エリカ先輩の俯いた顔から察するに、やめたくてもやめられない理由がありそうだな。

メェーチャンカワイイヤッター(洗脳済み)

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