法的措置なんてなかった...多分
そろそろ学校に行ってくれ、マリアよ。(自分のせい)
「さて、欲しいものを買い揃えることはできたでしょうか」
「まあ、そうですね。あとはペンとかの...ふむ」
そういえば、この世界の筆記方法って何なのだろうか。さっき店主が取り出した〇〇キーの油性ペンは絶対にありえないだろうし、ここは王道の羽ペン...もしかすると鉛筆の可能性も?
いや、そういえば確か一個前の部屋にはどっちもあったような...そうじゃなかったら筆記用具と認識するわけないしね。
「おや、知りませんでしたか。ちょうどいい、我が社の新製品をお見せしましょうか」
そして今度は胸ポケットから何かを取り出す店主。どう見てもあったのその服には胸ポケットの構造があるわけないはずなんだが、まあそこら辺はさっき見たしいいか。
あと我が社ってお前、この世界にも会社という概念があるんかよ。
「これです。<MP変換ペン>というもので、この国では最近開発された<魔道具>ですね」
店主が手に乗ったペンを見せてくれる。形は地球にもよくあるような普通のボールペンに酷似しているが、中にインクが入っていない。
お、よくみるとペン先がボール型になっている。絶対転生者のアイデアだろこれ。
「この紙に試し書きをしてみてください、どんな使い方かがわかるはずです」
そしてぽんと渡される白紙の紙。大体A4くらいだろうか、それなりの大きさがある。
いつの間にか直っているガラスの上に紙を置き、とりあえず波線から...うおお!
微量だが体から何かが抜けていく感触、そして紙には黒い波線。
確か<MP変換ペン>と言っていたか...ステータスは今どうなっているかね。
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 5
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
HP 10/10 MP 19/21
ーステータスーーーーーー
筋力 10
体力 12
敏捷 15
知性 42
精神 245
魔力 54
ースキルーーーーー
言語 Lv10
召喚魔術 LV50 (2)
応急処置 Lv50
耐性 Lv50
(魔王の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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おー、MPが少し減ってる。しかも最大値も少し増えてるし、こういう系の訓練にもなるのかも。
「とまあこのように、MPを消費して書くことができます。消費量はなかなか多いですが、MPならば回復もしやすい。特に<ダンジョン>に潜るほどの者になればMPも残りやすくなるので、従来の羽根ペンとは違いインクを持っていく必要もなし。鉛筆と比べてMPを消費する=MP最大値増加訓練にもなる。言うなれば、万能の...」
なんか店主が宣伝しているけど、まあいいや。
えっとボールペンの形状に酷似ってことで、上の部分にボタンが...ほう、書ける線の色が変わったぞ。
それでそれで...おお、ボタンを2回押しすることで書いた線を消せるのか。
「...さらに、って聞いてます?」
「あ、聞いていませんでした」
「ええ......」
「いやそんな怪訝そうな顔で見られても」
で、あと買うものは...
「特にないか」
「無視しないでくださいよ」
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空を見上げる。天高く上がっていたはずの太陽は、いつの間にか下がって...ん?
でも夕焼け空じゃないな。夕方じゃない...本当に?
ここは地球とは違う、夕焼けがオレンジ色とは限らんな。
とりあえず外に出てこれたわけだけど、なんで出た時に謎がまた増えるかなあ。
ま、さっさと広場に出ましょうかね。
確か、僕がこの広場に来たときはたっくさん人がいて、たっくさん出店が出ていたような気がするんだが...
なんてこったい、準備中の出店が大半じゃあないか。
もう一度空を見る。天に太陽は昇る途中、つまるところ午前中。
...未来に来たのか、はたまた過去に来たのか。どちらにせよ、僕は少しだけタイムスリップしたらしい。
えっと、ステータスは...
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 6
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
HP 20/20 MP 40/40
ーステータスーーーーーー
筋力 19
体力 21
敏捷 15
知性 50
精神 271
魔力 93
ースキルーーーーー
言語 Lv31
召喚魔術 LV90 (2)
応急処置 Lv75
耐性 Lv100 (MAX)
(魔王の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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6、6ですか。そうですか、未来に来たんですか。
わけわからん、何に僕が振り回されているかわからん。
しかもステータスも増えているし、スキルもLvが上がっている。
一体どういう...
ドゴォーン!
轟音が街中に響き渡る。しかも
「おい、こっちに生存者がいたぞ!」
「くそっ、誰か回復職はいねえか!」
「きゃああああ!あなた、起きてえええ!」
出店じゃない。僕が今まで見てきたものが出店しかなかっただけで、これは出店ではないものだ。
そんなことを考えているうちにも、爆発音が響く。
頭の性能が思考に追いつかない。くそ、どう表現すればいいかの説明もつか...
「こちらに回復薬あります!生存者はすぐに私の結界内へ!」
走る人々。その中になぜか見慣れないやつが1人。
女の子だ。優しそうで、それ以上にかっこいい。つい惚れちゃう、そんな姿。
だが、見慣れている。見慣れないはずなのに見慣れている。
だんだんと頭痛がひどくなり、視界にノイズが走る。思わず抱いている人形を抱きしめる。
ヒューーー...
音、この場のありとあらゆるそれを遮って聞こえてくるもの。
その音が指し示すは...空。
見上げるそいつ、僕も見上げる。
そこには、巨大な隕石。
ノイズは酷くなる。
耳鳴りも起きる。
もう、何もなく。
不意に、声。
「なぜ...皆は争うのか。私は、平和な世界でゆっくりと生きたいだけなのに」
知らない、僕は喋ってない。なのに、僕の声。
瞬間、体が消える。
痛みはない、一瞬だから意識も一瞬で消える。
また、声。
「ああ、マリア。やはり運命は変えられないかもしれません」
声は、響き、僕の魂へ。
「しかし、人生は変わる。マリアはこの未来に到達させない。あなたは魔王なのだから、この人生の終幕を変えられる」
理解できない。この未来って、一体......
"""""それはそう。だってそれが、■■■■■■■■■■の望みなのだから..."""""
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「なに...いまの...」
頭痛がする。今、一瞬意識を失っていたような...
くそっ、何も思い出せん。メェーちゃんは何か知ってる?
「え!?えっと...ご、ごめんね。何も思い出せないかな」
おう、メェーちゃんですら思い出せないならもうお手上げか。
「お客さま、大丈夫ですか?外に出た瞬間、一瞬ですが失神したように見えましたが...」
「ああ...大丈夫ですよ、いつものことなので」
思い返すと、本当に意識を失うと何かが起こっている。記憶がないものもあるが、意識がなくなるとほぼ毎回何かが起こっているのだろうか。
まあ覚えていないから断言はできないけど...ん?
そういえば意識を失ったことに関連している場所で、僕はショゴスとメェーちゃんを召喚しているのか。
ショゴスやメェーちゃんに聞く...いや、やっぱやめよう。
なんだか知らんが悪寒がするし、まだ僕がそのことを知るには早すぎる気がする。
...帰路に着く前に、ステータスでも見ておくか。
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[名前] マリア
[性別] 女性 [年齢] 5
[職業] 召喚師(クトゥルフ神話)
HP 20/20 MP 40/40
ーステータスーーーーーー
筋力 19
体力 21
敏捷 15
知性 50
精神 271
魔力 93
ースキルーーーーー
言語 Lv31
召喚魔術 LV50 (2)
応急処置 Lv50
耐性 Lv50
(魔王の種[発芽前] Lv100 (MAX))
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...ステータスが増えてる。しかも、見覚えがある。
おそらく、見覚えがあるのは意識を失った時に見たのだろう。ペンをいじってた時にはこんなに増えてなかったし、MPとHPが瞬間的に倍化することはありえなさそう。
"さあ、旅立って。生き延びるために、あなたは生きるのです"
.........幻聴、にしてははっきりと声が聞こえたな。
「店主、声聞こえた?」
「......聞こえませんでしたよ?」
なんじゃその沈黙の時間は。めっちゃ怪しいが、聞こえていないのならしょうがない。
生き延びるために生きる、というのはなんか怪しいが。
まあ、誰かに言われなくても生きるのは当たり前だろ。なんせせっかくクトゥルフ神話生物を召喚できるんだ、全ての生物を召喚するまで死ねん。
「...あなた、よく召喚に応じましたね」 ヒソヒソ
「でも、とってもいい人だし」 ヒソヒソ
「ん、どうかした?」
「「なんでもない(よー)(です)」」
「そ、そう」
まあいいや。僕の人生は、神話生物にだって変えさせない。
魔王というのは変わらんが...それでもいいや。
生き延びる、絶対に。
こんなに意識を失っている主人公もめずらし...いといいなあ。




