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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
402/402

魅入られたのも、もはや遅い

そういえば、いつの間にか400話でございます。といっても、全体の構想で見たらあんまり進んでいません。果たして終わるのはいつになるのやら。


今後もよろしくお願いします。

 空間が少しずつ温まっていく。冷気が失せていく。



 冷える原因が居なくなったからだろう。霜は溶け、温石は暑いとも感じるほどになっていく。



 懐のそれを<インベントリ>にしまい、その他耐寒装備も外す。おそらくはもう要らないだろうから、<糸逃しの形代>を取り出すついでに奥に纏めておこう。



 減った体力を回復することも必要だ。<ヒールポーション>を...いや。



 ちょうどいい、ここで臨床試験といこう。



 薬包紙、というらしいが。小包として機能しているそれから伸びる紐を引っ張れば、包まれていた<粉薬:体力>が見えてくる。



「確かこれを...うぉぇっ」



 苦っ!な、なんだこれ。



 今まで50は優に超えるほどポーションを飲んだが、こんなに苦いのは初めてだ。



 となると製法は...



 "おそらく<ガントマ>を抜いているのでしょう"

「そう、だろうな。あれは苦味や辛味を中和...そういえば」

 "どうしました?"

「聞いたことがある。<ガントマ>は入れすぎると生来の優しい甘さから一転して異常な苦味を持つと」



 もしかすると、逆にたくさん入れた結果出来たものなのかもしれない。



 "身体の方はどうですか?"



 HPを確認しつつ軽い身体チェック。どこの関節も、どこの筋肉も通常通り。



 元々そこまで怪我をしていた訳では無いから再生能力の方は測れないか。だがHPはそうはいかない。



 8割ほどだったそれはミリも残さず全快した。回復能力は申し分ないな。



「問題ないが、さすがに苦すぎる」



 戦闘中に摂取するのはもってのほかだな。



 粉末状なのも移動しながらの摂取がしにくい点で良くない。



 総じて、まだまだ発展途上と言ったところだな。今後の粉薬の進化に期待するとしよう。



「...さて」



 扉の前で最後のチェック。装備は常に念入りにチェックしなければ、最悪の事態が起きてしまった時に何も出来なくなってしまう。



 腰のベルトや鎧の内側の隠しポケット、鎧自体も欠けやヒビ割れがないか確認。アルカマの刀身は...



 "私はまだまだ行けます"

「みたいだ、良かった」



 鞘に入れ直しこれで一通り見終わった。



「よし...行くか」



 重い扉を開けば、広がる景色は地下深くまで続く階段。



 安全ではあるはずだが、神話生物が関わってきた以上どうなるか分からない。慎重になりながら1段ずつ降りていく。



「違和感はあるか?」

 "私の感知範囲内には、何も"



 見ている限りでは2層に降りる階段と変わらないようだ。



 気温が下がっていくこともなく、上がっていくこともない。変な音も、匂いもしない。



 ごくごく普通の階段...そのはずだ。



 ""気を張りつめすぎでは?



 かもしれない。だが...



 ...そう思っているうち、壁にぶつかった。



 いや、壁じゃない。扉だった。



 触ってみても...特に何も無い。普通の扉だ。



 扉の奥から何か音は...



 コツッ......コツッ......コツッ......コツッ......



 足音。



 魔獣だろうか。神話生物の可能性だってある。人型か異形か、音だけだと判断できない。



 ...ゆっくりと、静かに、音を立てず、扉を隙間程度だけ開ける。



 扉の向こう側は少しの明かりのみで暗め。壁掛けのランタンが少しとなっている。足音の主は、離れたか。



 この第3層、マップを見る限りは牢獄のようになっている。隙間からは鉄格子がちらほら見えるから、やはりその通りなのだろう。



 牢獄は何度か見たことがある。罪を犯した人が入る場所であることもわかる。



 しかし、そうなるとこの場所は不自然だ。牢獄とは人工的な建造物。例外はあるにせよ、その<ダンジョン>が人工的でない限り人工的な建造物は現れないはず。



 ...神話生物が現れている時点で不自然ではあるか。ならあまり考えるのも良くないかもしれない。



 ともかく先に進まないとな。周囲の敵影が見えないことを確認し、扉を開ける。



 この階層は迷路のようにはなっていない。1本道ではないが、最短経路はマップを見ればわかる。



 問題は、おそらくいるだろうと思われる敵が何なのか分からないということ。警戒しつつ進むが、暗さも相まって見えない部分も多い。



 すり足で音を消しながら進む。十字路はしっかりと左右を見て、足音があるかどうか聞いてから進む。



 道中の牢屋には何かあると思っていたがそういうこともなく。閉じ込められた者や罠の跡もなければ死骸もない...



 "これもまた不自然ですね。牢獄のようになっているはずですが牢の中には何も無い。となれば、一体この場所は何のための牢なのですか?"



 わかることは救助する対象のいるであろう場所...マップを見るとほぼ正方形の形から飛び出している部分がある。



 細い廊下が伸びた先の個室、おそらくはそこにいるはず。



 "いなければしらみ潰しですか"

「そうなるな」



 ざっと数えて64。これを全て見るのは難しくないが、敵が分からないのがかなり辛い。



 足音も先程から聞こえない...どうする?先に敵を確認するか、すぐに助けに行くか。



 救助対象のいる場所が安全か分からない。今も尚危険な状態になっている可能性もある、がそこに安直に近づけば俺も危険に晒される。



 助けると言っているのに自分が助からないのは違うからな、ここだけはかなり慎重にならなければ。



 "そろそろ要救助者のいるであろう場所が見えてきますよ"



 ...近づいてきたか。仕方ない、まずは合流して安全を確認するとしよう。



 マップの端。のっぺりとした石の壁がずっと伸びているが、1ヶ所だけ壁になっていない、通路の入口がある。



 通路の奥は牢屋になっているようだが、そこは今いるこの場所と違い光がなく、中を伺うことがここからだと難しい。



 ...ここから照らすことは出来るが、背後の広大な監獄のどこかにいるであろう何かがどんな反応を示すか分からない。自分の目で確かめるしかないだろう。



 背後を確認しつつ、通路を進んでいく。暗闇は続いているが、それに慣れた頃には鉄格子の前に着いていた。



 通路自体に罠などはなく、と、そういえばこの層全体に罠がなかったな。それもまた特徴か。



 ここに逃げ場はない。常に警戒を解かず、そっと牢屋の奥を覗く。



 マップによればこの牢屋の大きさは他の牢屋と大差ないらしい。だが、実際に見るとさっきまで見ていたそれとは違う。



 かなり奥まで広がっている。通路からの光は届いて居ない、見えない部分が奥の方にあるくらいには...



 ...ふむ。



「あたりか。吐息が聞こえる」

 "光量からすると、おそらく意図的に奥が見えないようになっているはずです"

「慎重に、だな」



 牢屋の入口は、これか。牢屋と同じ鉄格子を使ったシンプルなタイプ。



 いつもなら蹴破るが...あまり音は立てたくない。



「せいっ」



 バキン!



 鍵だけを壊す。こうすれば何も問題は無いだろう。



 ゆっくりと扉を開け、中に入る。



「それでも、奥は見えないか」



 仕方ない。松明をつけよう。そうしなければ見えなそうだ。






 光の先、闇の中に隠れていたのは。



 ボロボロの女性だった。年齢は20歳程か。



 装備も壊れ、肌が露出している。すぐに目を逸らす、が顔だけは視界から外さない。



 黒髪。明らかに伸びて手入れもされていないそれで隠れているが、それで見逃すことはなかった。



 隻腕。左腕が欠損している姿。



 ...思い返せば、少しは可能性を考慮すべきだった。何故この<ダンジョン>に神話生物が居る?



「.........人の、気配?」

「っ!?」



 関わっているからだ。目の前の存在が。



「...しかも、聞き覚えのある声ときた」



 <魔王>が。



「何しに...ここに来た?今僕は、見ての通り...満身創痍で牢屋にいるんだけどね?」


なーんかあんまり納得いってない


けどこれで行きます。いい加減話を進めましょう。

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