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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
389/403

オタクって誰でも早口に聞こえる傾向がある(当社比)

好きなことに対しては、ですけどね。

「マリア。ヴルトゥーム様が呼んでいます」

「わかった、もうちょっとしたら行くよ」



 何はともあれ、アンジェリアさんを助けることができて本当によかった。



 ...彼女も言っていた通り、戦いが避けられないこの世界では貴重な戦力だ。



「しかし、村一つ滅んだ結果<生存不可区域>が生まれてしまったな」

「でも仕方ないって割り切るしかない」

「...なあマリア、ひとつ聞かせてくれないか?」

「?」



 アンジェリアさんの目つきが変わる。



 安堵、安心の眼差しは、一瞬で緊張、集中の眼光へ。



「私は戦争を経験している。人口の9割を消し飛ばした、<勇者>と<魔王>の戦いだ」

「確か、前の<勇者>と<魔王>の...」

「そうだ、だから理解している。戦争は命が軽くなる。今以上に、悲しみにあふれ、その価値が薄くなる」

「...」

「マリアは今後どう行動する?戦争を防ごうと行動するのか、それとも戦争を起こそうと行動するのか。それによって、私の今後も決まるだろう」



 なるほど、それを聞こうとしてたから。



 ...僕は<魔王>だ。ゲームとか物語とかなら、世界を混沌に陥れる存在。



 そしてそれはこの世界でも適用されている。だから、<勇者>がいる...この認識に間違いはないはずだ。



 でもね。



「...大前提として、僕の行動指針における最重要目標は生きることです。僕が生きていると思える状態であればそれでいい」

「みたいだな。お前は生きるためにはどんな犠牲を払ってでも行動を起こしている。たとえ天秤に乗せているものが自分の命であってもな」

「はい。ですから、個人的には戦争は起きてほしくない。自ら起こそうなどもっての外です」

「なら」

「でもそれはそれとして戦争は防げません。防ごうとは考えません」



 なぜならば、人は争いの歴史と共にあるから。何より僕の周りが、神話生物が引き金になる可能性が非常に高いから。



 戦争が引き起こす後遺症は知っている。でもその後遺症で悲惨な世界となった前世でも、結局人間は争っていた。平和な世界とは到底言えなかった。



 僕が思うに、結局人間は争うのだ。同時に、争うからこそ人間なんだ。



 僕はすでに人間でなくなった。でも人の心は理解している。



「あなたが、いや<伝説の20人>が、内部分裂を引き起こしたのは僕が、<魔王>が、世界から排斥されるべきではないと思ったから。でもそれを感じたのはあなた方だけで、僕ら<魔王>は<勇者>にすでに2人殺されている」

「らしいな」

「...<魔王>はこの世界では嫌われている。排斥の対象になっている」



 主にこの世界で最も大きい宗教が僕らを殺そうとしている。<勇者>を祀りあげているのだから当然だけど。



「だけどそれは宗教のせいではなく、結局<魔王>の行動その結果として出ている」

「...つまり、行動さえ改善すれば戦争は回避できると?」

「回避はできない。でも幾分かマシになると思う」



 大多数の人間が僕を嫌っても、一部が僕についてこればそれで戦力は十分。



「というか、まず戦争は勝てる」

「断言するのか」

「今の僕、いや神話生物の皆様と人間で実力に差がありすぎるから」



 それこそ<勇者>が対神話生物を極めて来ない限り無問題。



「以上のことを踏まえて、今は今を生きることが最優先で、今の脅威は<勇者>と<伝説の20人>。生きたいのならそれの排除を優先して行動し、戦争についてはあまり考えなくてもいいと思ってます」

「なら次のアテはあるのか?食料問題が解決していないだろう」

「あー...それはもう解決したんですよね」

「何?」



 ============================================



 車椅子を押して様の元へ。



 今は拠点の中にいるはずだけど...ああ、いたいた。



「お呼びでしょうか、ヴルトゥーム様」

「来たな、これを見ろ」



 リビングのテーブルの上で紙が広がっている。



 これは...?



「この世界の土壌についてと植物についてをまとめたものだ」

「...なんでこんなものを?」

「計画は細かく練るタイプだ」



 納得です。



「さて、俺がこの世界の土壌や植物について知っていることは2つ。明らかに見た目からは想像のできない効能を所有していることがあるのと、土にはミネラルの代わりに<魔力>が含まれていることだ」

「それってまさか...」

「ああ。それら2つの結果、まともな植物は存在していない。結局魔獣を狩ってその戦利品で植物からの栄養素をカバーしている」

「ま、待て。話がついていけない」



 ああ、確かにそうだね。



 アンジェリアさんにとっては敵だったもの。



「...自己紹介しておいた方がいいな」



 そう、目の前の植木鉢に入った花は喋る。



「やあ!僕の名前はヴルトゥーム!植物のヴルトゥームさ!」



 ...ギリセーフ?



「こ、こんな奴が?」

「失礼な。確かに弱体化を余儀なくされたが、この状態でもお前よりは強いぞ」



 遠くから見ればただの黄色い花でしかないんですけどね。



「な、何があったんだ。私は結局詳しくは状況を理解していない」

「んー、ヴルトゥーム様の面目丸潰れだから簡潔にするけど、他勢に無勢だった」

「オブラートにすら包んでいないが」



 っと、さっきが僕に向けられてる。



 だいぶ包みましたけどね。もっと詳しく言ってもいいんですけど...



「...まあ栄養を絞っていた村が消えたからな。普通に考えればこいつに寄生していれば生きるくらいは簡単だ」

「食事は必要ですけどね」

「そう!」



 声を荒げるヴルトゥーム様。



「ここの奴らはまるで食生活がなっていない。特にお前だヤギ!」

「!!!」



 冷凍庫に入ろうとしていたメェーちゃんに飛び火。



 こっちに来ると思わなかったメェーちゃんは面食らっている。



「あいつは食生活が異常だ。1日のほとんどを肉だけで構成している」

「い、言いがかりは」

「大根おろしを野菜だと言わせはしない。ジャガイモもだ」

「むう...」



 ジャガイモは一応野菜では?



「人間の中でもそうだろうが、野菜と言われ一般的に想像するのは...」

「...葉物だな。緑色の」

「そうだ。それを摂取していなければ体調を崩す。当然の結果だ」



 ...ん?でも確かさっき



「そう言われると確かにあまり食べてはいないな、野菜。パンなどは食べているが...それも野菜とは言わないのだろう?」

「無論。この世界の生物は総じて野菜を全く食べない、よく生きられたものだ特に人間」



 そういえば僕も肉ばっかりだった。



 前に見かけた食料庫も果物もあったけど、野菜と言われるものはなかった。



 野菜をあまり食べない世界なのか、なるほどね。



「これは重大なことだ。植物、特に野菜の尊厳に関わる」

「野菜の尊厳とは一体」

「故に俺はこれから食事に関して徹底的に管理する。不足している野菜は自家栽培で補う」

「えー、ヴルトゥームが育てた野菜とか食べたくないんですけどー」

「黙れデブ」



 あっ、メェーちゃんが明確に落ち込んだ。



 ダメなんですよ、女性にデブとか言うの。



「奴は男性神でもある...何、幻覚などは含まれん。そこの人外生命体の傘下に名目上いるのだから、不利な行動は勝手にせん」

「本当ですかね...」



 前に味方だったのに急に敵対化してきた神話生物知ってるんですけど。

もうナカーマ(仲間とは言っていない)

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― 新着の感想 ―
きっと会心したのだろうけど某クソ花式挨拶のせいで信用できねぇw
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