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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第一章 未狂理解不能
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テンプレートは大事

投稿していたと思ったらしていなかった!?



ここ最近忙しかったのは理由にしません。遅れて申し訳ありませんでした。

「だ、大丈夫?」



 そう問いかけてくるのは隣で壁に寄りかかっているメェーちゃん。息を切らしている5歳児にかける言葉としては妥当だろう。



 ん?そういえば、僕はもう6歳か。



「はあ...はあ...うん、大丈夫だよ」



 息はまだ切れ気味だが、さっきまでとは比べ物にならないほど回復している。



 ...念の為、ステータスも確認しておこう。



 ーーーーーーーーーーーー

[名前] マリア

[性別] 女性 [年齢] 6

[職業] 召喚師(サモナー)(クトゥルフ神話)


 HP 10/10 MP 20/20


 ーステータスーーーーーー


 筋力 10

 体力 10

 敏捷 15

 知性 42

 精神 212

 魔力 54


 ースキルーーーーー


 言語 Lv8

 召喚魔術 LV50 (1)

 応急処置 Lv10

 対意識 Lv15


(<魔王>の種[発芽前] Lv100 (MAX))


 ーーーーーーーーーーーー



 はい、またもやスキルが増えております。なんなら[召喚(クトゥルフ神話)]と[魔術]が消えておりますが、なぜ故でしょうかね。



 まあいいや、さっさと確認して...






『...ナルホド。(テケリ・リ)アイツガイルカラ(テケリ・リ)ナノデスネ(テケリ・リ)

「あー、やっぱりボスいるかー」



 このタイミングでくるのは、まあちょうどいいけども。できれば居てほしくなかったからねえ。



『え、えっと...何がいたの?ショゴス』

ソウデスネ、(テケリ・リ)スコシスキマヲ(テケリ・リ)アケテモヨロシイ(テケリ・リ)ヨロシイデショウカ?(テケリ・リ)



 なるほど、メェーちゃんはわかっていないのか。



 確かに僕がこの部屋に入った時点で無意識に気付いたのも、僕がまあテンプレ的なものを知っていたからだしね。



 ...しかしいるのか。確認しなきゃいけないよなあ、流石に。



 わからない敵と戦うのが一番ダメなんだよね、こういうの。



『うん、僕も見たいからお願いしたい。ただ見つかったらどうなるかわからないんで、本当にちょっとだけにしといてくれ』

ワカリマシタ(テケリ・リ)



 メキメキメキと僕たちを囲んでいるショゴスに小さなヒビがはいる。サイズは僕の顔くらいの大きさだが、これくらいが一番いい。



 覗き込む。メェーちゃんは僕の顎の下から見てみる。





 そいつは、やはりこの部屋に見合うほどの巨躯を持っていた。もちろん、ショゴスなんて米粒と同程度。



 姿はおよそ爬虫類といえるだろう。透き通った鱗、爬虫類だとわかりやすい眼がそれを証明している。



 最も、その巨躯と同じく大きい尻尾とそれらを全て持った状態で飛べるであろう翼、真っ白な鋭い牙は明らかに爬虫類ではないことを物語っている。



「グルルルル...」



 そしてこの唸り声。迫力どころか、畏怖を覚えてしまう。



 そんな生き物が、僕たちが入ってきた入り口の反対側に鎮座している。



 おそらくだが、そいつは僕が走る理由になった岩にぶつかられたのだろう。根拠はないが、あり得ない話でもない。



 避けた後の岩がどうなったかなんて僕は知らないし、できれば予想が外れてることを願う。



 あ、目があった。



『ショゴス!!』

ハ、ハイ(テケリ・リ)!』



 即座に閉じさせる。しかし、


 ドスン、ドスン


 という音が生死の危機を伝えてくる。



 まじか、本当に()()()()がいるなんて。



 マナさんがドラゴンよりもショゴスの方が怖いとか言ってたけど、ありゃ嘘だ。



『...ショゴス、勝てそう?』

ゼッタイニムリデスネ(テケリ・リ)



 ほら、即答じゃん!



 ...メェーちゃんは...



 チラッと見ると、首を横に振っているメェーちゃんがいた。



 はははっ、だよねー。



 ちなみにどこまで抗えそうですかね。



「...」



 よし、傷ひとつつかなそうなのはわかった。



 神話生物の中でも超上位の存在といえど、今この場にいるのはメェーちゃんだ。倒せないものは倒せないのだろう。



 化身によって能力が変わる神話生物だっている。メェーちゃんができないのも無理はない。



 あ、メェーちゃんがすごい勢いで且つ涙を浮かべながら首を縦に振ってる。かわいい。



 ...うん、少しだけ冷静になれたかもしれん。ありがとうね、メェーちゃん。



 さて、あとは逃げるくらいが精一杯か。



『ショゴス、あのバケモンの奥にドアとかない?』



 ショゴスに聞いておくが、結果は一つしかないだろう。



ア...ナニカ(テケリ・リ)カベイガイノ(テケリ・リ)...ドアデショウカ(テケリ・リ)?』

『ビンゴ。そこに出口があるはず』



 さて、ということはどうにかしてそこに向かう必要があるわけだ。



 入口に行っても、閉じているか蒸し焼きにされてされてジ・エンドだろう。



 高速移動する方法なんてあるわけないんで...走るしかないよねえ。



 おそらくドラゴンの攻撃に掠ったら死亡するので、転んだらダメ。判断を誤ってもダメだし、何ならこの状況を詰みと捉えても罰は当たらなだろう。



 しかし、こういうのは最後まで足掻きたくなるもの。時間一杯まで作戦を考えなくては。



 あ、そうそう。



『ショゴス、少しずつでいいから出口の方へ壁伝いに進んで』

ワカリマシタ(テケリ・リ)



 ズリズリと進んでいくショゴス。中にいる僕たちも、それに合わせて移動する。



 うーん、とりあえずまずはメェーちゃんを<インベントリ>に入れて...



 あ、もう人形になってる。岩から逃げてる時はそのままインベントリに入れたけど、メェーちゃんも人形形態になれるのね。



 まあ一旦この気付きは頭の片隅においやって、今は逃げるための作戦を考えなければ。



 ============================================



 ドシン!ドシン!



「ギャオオオオ!!」



 咆哮。鼓膜が破れそうになるくらいの音の塊は、それから1分も経たずに放たれた。



 ...隠れるのも、もう限界か。



『ショゴス、もう戻ってくれ。お疲れ様』

...ゴブウンヲ(テケリ・リ)



 そう言い残して囲いが消える。すぐさま足元の本を拾い、インベントリに入れつつ全力疾走を開始する。



 向かうは...ドラゴンの真下。



 ドラゴンはでかい。故に足だってでかい。



 つまり体の下をくぐり抜けることが可能なのだ。もちろん、プレスされたらアウトだが。



 しかし、今の僕は服を脱いで頭にかぶっている状態。髪の色は鏡を見たことがないので、さっき髪の毛を抜いて黒だと確認したので、少なくとも髪よりも服の色の方が見つけにくいだろうという算段だ。



 ちなみに音で発見されにくくなるように、靴もインベントリにしまってある。



 まあこれだけやってもお祈りするしかないが、果たして...



 とりあえず、体の下には難なく到達した。



 真後ろを見ている余裕はないが、一応なんとかなったか。



 しかしここで甘えてはいけない。全力疾走をキープし、さっさと体の下から出る。



 大体1分くらい走って、ようやく抜け出すことができた。次に気をつけなければいけないのは尻尾だ。



 振り下ろされた尻尾に触れられたら、その瞬間僕の体は粉々になるだろうからね。



 走る。ドラゴンの体にしがみつく案もあったけど、筋力が低いと思われる僕には無謀とも言える行為だろう。



 上を向く。動きはするが、特に振り下ろされるような仕草は見せない。



 まあどちらにせよ走り抜けていることに変わりはない。さらに1分くらいかけて超危険地帯を抜け出した。



 だが終わりではない。かぶってたボロ布を捨てながら走り続ける。



 今、僕がいるのはドラゴンの後側だ。空間が広くて死角がないから、バレない可能性自体がない。



 だから、少しでも空気抵抗をなくすために捨てたのだ。



 体がスースーするとか、命の危機に比べたら我慢できるものだ。



 そして走り続けて3分が経過し、ついに。



「ギャオオオオン!!!」



 見つかった。あと出口まで200mくらいなのにかよ。



 恐怖が僕を包み込む。が、足だけは止めない。諦めることはない、たとえ足が折れようとも逃げ延びてやる!



 残り100m。空を飛んでくるドラゴンは僕の後ろの方に着地する。



 残り90m。しかし僕を攻撃してくる様子はなさそうだが...



 残り80m。シュイイィィィーンという音。何かのチャージ音だとわかりやすい音だ。



 残り70m。走る。逃げ場はないんで、チャージ音だろうが無視だ。



 残り60m。もうほとんど見えるそのドアは、あまりにも豪華な作りになっていた。



 残り50m。足の悲鳴が直に聞こえてくる。無理もない、ろくに休憩もせずに再度全力疾走しているのだから。



 残り40m。でも無視する。そんなことにかまけている余裕は今の所ない。



 残り30m。<インベントリ>を開き、人形を取り出す。



 残り20m。そしてぶん投げる。告げる命令はただひとつ。



「ドアをぶっ壊せ!!」



 残り10m。投げられたメェーちゃんは既に拳を構えていて、ドアはメェーちゃんにぶつかった瞬間、



 ドガーン!



 という轟音が鳴り響く。



 そしてドアのあった場所にたどり着いた時、後ろから熱気を感じる。



 しかしそれは想定のうち。すでに開いていた<インベントリ>から本を取り出す。



 そのままドアを走り抜け、部屋の中に入る。



 中には金銀財宝とも言えるものがたっくさんある。



 ので、その中の端っこにある山に向かって猛ダッシュ。それとメェーちゃんも回収しておく。



 あとちょっとのところで飛び込み、本を手放して命令。



『守れ!!』



 金貨の山の中に入る。すると、軽く締め付けられる感触。



 シュゴオオオ



 そして轟音。それと熱気。



 素直に熱い。これでも距離が離れていて尚且つショゴスと金貨の山に守られているんだから、直撃したら塵すら残っていないだろう。



 アニメとか映画で火炎放射を盾一つで受け流している描写とかありがちだけど、実際はあり得ないことなのだ。



 目を瞑り、ぎゅっとメェーちゃんを抱きしめながら終わるのを待つ。



 呼吸はしない。既に肌が火傷を負っている状態なので、呼吸すると肺まで焼ける危険性があるためだ。



 体内の酸素が尽きてくる。何せさっきまで全力疾走していたのだ、そもそも血中酸素が足りないのに深呼吸もしないで息を止めているのだから、仕方のないことと言えるだろう。



 だけども、うん。運命の女神は僕に味方してくれた。



 ついに、熱気が止まってくれたのだった。

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