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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第一章 未狂理解不能
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囚われの魔王(の種)

7分遅れ、すみません

 い、いや、待て待て。流石にそれはないだろう。


 まだ詳しく探索してないというのはあるけど、出入り口が存在しない部屋はないよ。


 別に壁に隠されたドアがあるわけでもなく、ベット下にもない。窓もないわけだけど...


 それでも、やっぱりあり得ない。どうやって僕はここに来させられたんだ?


 意識がはっきりしてきた今なら思い出せる。僕は意識がなくなる前、確かに馬車にいたんだ。


 そこでマナさんに、<色別階級>について教えてもらっていたところで、意識がなくなったんだ。


 ということは、僕が今いるこの場所は...?


 うーん、わからない。思考がぐるぐると同じ場所を行き来しそうだ。


 ...ああ、もう!


 パァン!という音が部屋中に鳴り響く。思いっきり手を叩きつけた頬は、真っ赤に染まっている。


 意識が変わる。もやもやとその他の思考を全て吹っ飛ばしたからか、少しだけスッキリした。


 まあちょっとまだ痛むけど、それでも。


 あの思考回路のままじゃ、脱出することもままならない。


 ...ふう。




 考えろ、今やるべきことはなんだ。


 単純、脱出すること。別にここにいて何かがあるわけじゃないけど、何か事を起こさない限りは何も起こらない。


 ならば、どう脱出する。


 ......うーん、どうするべきか。


 鍵がかかったドアも、鉄板が打ち付けられた窓も、一ミリの段差もない穴も、全てないんだよなあ。


 ...持っているスキルは...[言語][召喚(クトゥルフ神話)][魔術][応急処置][対意識]。こんだけ...ん?


 いやいや、こんだけじゃない。馬鹿か、いや馬鹿だった。


[召喚(クトゥルフ神話)]。そもそもロクに使ったスキルじゃないじゃん、なんで使おうと思わなかったんだろうか。


 まあ、前世にはスキルという概念そのものがないからね、しょうがないのかもしれない。


 よしじゃあ...あ?


 そういえば、スキルってどうやって使うんだ?


 よく思い出してみる。牢屋から逃げた時も、脱出劇の時も特にスキルは使ってないっぽい?


 ...ショゴス、知ってるかなあ。


『ショゴス、スキルの使い方って知ってる?』

『???』


 いや、わざわざ日本語ではてな言わなくてもいいじゃん。


 ...説明欄に書いてあったりとかは...


 ーーーーーーーーーーーー


 召喚(クトゥルフ神話) 白金


 ■■■■■■■■■■


 ーーーーーーーーーーーー


 デスヨネー


 こんな文字化けした文字列、誰が読めるんだって...あ。


『ショゴス、この板って見える?』


 と言いながらステータス画面をショゴスに見せる。


コノイタデスカ?(テケリ・リ)ミエマスヨ(テケリ・リ)


 ビンゴ、<召喚獣>はステータスを見れるみたい。


 ということは...


『じゃあこれも読める?』


 見せたのは、[召喚(クトゥルフ神話)]のスキル説明。


 文字化けしているように見えるけど、それは僕だけみたいなことが起こりうるかもしれない。




ア、コレハ(テケリ・リ)チョットヨミニクイ(テケリ・リ)デスガ...ハイ。(テケリ・リ)イスゴノヨウニ(テケリ・リ)ミエマス(テケリ・リ)


 イスゴ......イス語!?


 まじですか、本当なのですか!?


 おお、なんだかこう、冷め止まぬ興奮が...!


『この全く読めない言語が!イス語なんですか!?』

エエ。(テケリ・リ)カイドクシマショウカ(テケリ・リ)?』

『ぜひお願いします!!』


 そして解読までしてくれるショゴス、まじ有能。


 しっかし、イスの偉大なる種族(略してイス人)がここで関わってきますか...イス人がこの世界の何かに関わっている、とか?


 いやいや、あの胡散臭いおっさんが肉体を持たない生き物を見て発狂しないわけがない。あり得ない、と断じて大丈夫だろう。


 じゃあなんで...?


オワリマシタ(テケリ・リ)

『おお、ありがとう!』


 よし、イスに関しては一回頭の片隅において、今は目の前のことを考えよう。


 というわけで、僕はショゴスからスキル説明に書かれていたことを教えてもらった。


 どうやら、


 ーーーーーーーーーーーー


 召喚(試験中) 識別不能


 使用方法......地球での使用法と同じ

 現在試験中のため、介入がある可能性あり

 高い精神力を得てから使用することをお勧めする


 ーーーーーーーーーーーー


 ということらしい。


 めっちゃきな臭いですねえ、特に(試験中)という一文。


 やっぱりこの世界自体に関わってる?流石にあり得ないよねえ。


 だってあのおっさんだし、話を聞いていただけであの体たらくだからね。視認することすらままならないと思うんだけど、どうなんだろうか。


 うーん、謎は深まるばかりだ。


 あとは、色の部分もおかしい。識別不能て、何があったらこうなるんだよ。


 まあ、とりあえずイス人の何かってことがわかっただけでいい。というか、このスキルの説明(イス語)を見ているだけで飯が食える。3杯くらいいける。


 ん〜うふふふ、考えただけでも笑みが止まらないぜ。


 と、違う違う。今は脱出が最優先なんだから。


 えっと、一応「高い精神力を得てから」らしいけど、間違えてやばいやつ呼んじゃっても大丈夫なようにってことだよね。


 SAN値が飛ぶからね。一気にゼロになる可能性だってあるんだから、その保険にってことでしょ。


 マナさんやエリカさん、あの盗賊団とそれに囚われていた人たちの精神がどれほどの値かは知らないけれども、発狂寸前だったり泡吹いて倒れていた人たちもいたからな。ショゴスでそういうことが起こるってことは、それこそ旧支配者クラスの化け物を呼び出した暁には...


 よし、考えるのをやめよう。


 あとは...「地球での使用方法と同じ」か。地球と同じように、ってことならば。つまるところ召喚や招来の呪文......魔術をつかえってことか。


 記憶の棚を開きまくる。確かにそういう系のことも覚えているには覚えているんだけども、作品によって全く違うからなあ。まあそういうところも面白いんだけども。


 あと有名なやつほど強いんだよね。まあ難しくなるのもあって呼び出せないんだけど。


 そうそう、この部屋で呼び出せないといけないんだ。めっちゃ大掛かりなことをしないといけないようなことはできないし、何より1人で呼び出せないといけない。


 ......うーん、ない。今のところ思い出せる範囲にはないなあ。


 いや、思い出せばいけそうな気もするんだけど。ただ、時間が経つにつれて...


 グゥゥゥ、とお腹からの悲鳴。思えば、攫われてから何も食べていないんだよね。厳密には図書館に行った時からだけども。


 生理的なタイムリミットもある、ということも頭に入れるなら...思い出すのに時間を割くわけにはいかない。


 ならば、やるべきことは一つ。




『ショゴス、とりあえずベットを破壊して』

ワカリマシタ(テケリ・リ)


 ショゴス(本の姿)の姿が変わる。


 それはまるでアメーバか、スライムか。


 いや、それの原型の姿に。


 その巨体は部屋の半分ほどを埋め尽くした。そして、その巨体から出てきた触手が繰り出す、あまりにも力強い一撃は。


 ガッシャァーン!


 無事、ベットを粉砕した。


『よし、一回本の状態に戻って』

リョウカイシマシタ(テケリ・リ)


 命令すれば、すぐに本の状態に戻るショゴス。他の神話生物たちが使い続けるのも納得です。


 砕けたベットを一旦端に寄せる。もちろん、地下通路への入り口はない。


 別にそんなことを確認するためにベットを壊したわけじゃないからね、っと!


 壊れたベットの残骸。そこから、できる限り大きいシーツを掘り起こす。


 取り出すときに破片などで破れる時もあるけど、気にせずとりだ、す!


 っととと。なんとか取り出せたか。サイズは...大体僕と同じくらい。結構良さげだね。


 あと、残骸からある程度尖ったベットの脚を頂戴して...準備完了。


「すぅぅー、ふぅぅー」


 息を整える。間違えたところで何も変わらないけど、落ち着いてからの方がいいような気がする。


 ...よし!




 ビャリ!という嫌な音。この音は、僕の指から出てきたものだ。


 最も、その指からは現在進行形で出血しているわけだけど。


「ぐっ...!」


 思わず声が出る、それくらいの痛み。


 だけど、そんなこと関係ない。


 血の流れる指を布に置き、


 シィィイィ!


 その指を流れるように動かす。その血でお絵描きをするかのように。


 摩擦熱でめちゃ痛いが、関係ない。指をすすめる。


 まずは、円。でかい円を描いて、そのあとに適当な図形を描く。


 計画性なんてない。なんらかの図形になればいいのだから、そんなものを考えるだけ無駄なのだ。


 思いついたものを形にしていく。四角、三角、正十二角形に文字。


 とにかく適当に、速さだけを求めて。


 描いていくと、だんだん指から血が出なくなった。結構深く抉ったはずだが、よく見ると傷が塞がっていた。


 ならば、もう一度抉るまで。


 ビャリ!...声は出ない。慣れたのだろう。


 描いて、書いて、掻く。時間も忘れて。


 掻く、欠く、缺く。


 いつの間にか、目がチカチカするのに気がついて。


 そこで、指を止めた。


 できたのは、もはやわからないもの。


 血で描いているが、赤くはない。黒に近いだろう。


 右手が痛い。何度も抉ったためか、人差し指が青く変色している。


 が、()()()()


 左手に魔力を込める。左手は抉るのに使ったくらいだから、特に傷はついていない。


 呪文は...適当でいっか!


『なんか......こい!』


 思いっきり、左手を叩きつける。


 魔力が勝手に出ていく感触。本の時と同じだ。


 手に込めた魔力、その全てがなくなって。吸引は終わり、血が光り始める。


 コポ、コポという音。血から発される音が、成功したことを知らしてくれる。


「お、おお...!」


 初めてなりにうまくいった気がするが、果たして。


 出てきたのは......



 人形、と形容した方がいい何かだった。


 ...いや、普通に可愛いんだけど、何これ?

イス人...イスの大いなる種族は、簡潔に言うなら「時間を解明するほどすごい奴ら」と思ってもらえれば。


そのうち、ちゃんと解説できればなと思います。(どうせwi(((殴

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