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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第六章 殺人狂気神話
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つまるところ、終わりの時

さっきのは昨日分



これが今日です

 遅かったのだろうか。




 いや、遅くはなかった。間違いなく俺達は先手を打った。




 そう、打ったはずなのだ。なのにできなかった。




 戦争は、終わった。勝ったのは、誰でもなかった。




 全員死んだ。何もかも無くなった。




 もう...俺以外、誰もいなくなった。



 ============================================



「くぅ〜〜、久しぶりの外の空気は美味しいわね!」



 俺もメーノに倣って体を伸ばす。実際凝り固まった身体中の筋肉が心地よい痛みを発する。



「これで通ることができる回数は1回か」

「最も1回しか使わないけどね」



 出てきた場所は部屋を借りている宿屋の1室。男部屋に繋げたみたいだ。



「それで、どこで集合だっけ?」

「<セイント・キャッスル>正門前。あんたが言ったんでしょ、そこがいいって」

「ああ、そうだったか...」



 ここ最近夢見が悪い気がする。休息が取れないわけじゃないが、やけに心にとっかかりが残る。



 なぜだろうか。






「それにしても、<銃>ね。そんな強い武器があったなんて、なんで早く発表しないのかしら」

「...ここだからいいが、絶対にこれ以上それについてしゃべるなよ」

「っと、ごめんごめん」



 俺がメーノに隠しきれず<銃>についてついに喋ったから?



 いや違うだろう。メーノは特に俺のことを探っていた、バレるのは時間の問題だったはずだ。



「...これからどうするの?もう明日なんでしょ?発表」

「止めることは恐らくできない。俺達は<勇者>だが、それ以上に<聖神信仰教会>の力は強い。量産化は免れないだろう」



 あとは何があるか。可能性があるとしたら<魔王>関連だが...



「だができることはある。少なくとも発表によって犯人の目処がつく」

「どういうこと?」

「発表会ということは見る人がいる。<聖神信仰教会>が目指すのが量産化である以上、それを見るのは<魔道具>職人になるはず」

「確かにそうでしょうけど、それで何がわかるのよ」

「見ればわかるはずだ、あれはそう簡単に作れるものじゃない。作れる奴がいるのなら、それは名前として上がるはず」



 そして名前があがったやつは自ずと犯人の可能性が高くなるというわけだ。



 もちろんヌトさんは情報漏洩だけはしないと言っているし、詰まるところ完全にアリバイが証明されたわけではない。



 しかし一番の問題は、監禁とも言える状況の中、どうやって<銃>を誰かに渡したのかわからないことだ。どう足掻こうと<セイント・キャッスル>から出ることは難しい、例えそれが<神話生物>であったとしてもだ。



「じゃあ発表はさせるのね。止めたいってずっと言ってたのに、いいの?」

「いいわけがないだろう。だが俺達はまだまだ力不足であり、<聖神信仰教会>は届かない壁の向こう側にいる、それだけだ」



 俺は...わからない。



 死ぬのはわかる。この世界で生きている生物のうち、人間が占めるのはおよそ2割だと言われているからだ。



 魔獣は敵。なら出会って即戦いになり命を削ることになるのは至極当然。



 でも...



「...人間は、味方だ。なんで殺す必要がある?」

「なんでって....」

「戦争なんてするべきではないし、俺達は人間を殺す理由がない。人間同士でいがみ合ってたらそのうち残った人間が魔獣に淘汰される」

「...」

「俺たちは手を取り合って、魔獣という一つの脅威と戦うべきじゃないのか?」



 <銃>は悪ではあるが、その根本的な理由は生み出されるのに関わった思想だ。<聖神信仰教会>の、<魔王>及び<反聖教>を潰すため。



 ...心の中で、俺は確かに思っている。それでいいのだ、と。<魔王>は敵である、今まで殺してきた<魔王>は全て魔獣と似たような存在になっていたのだから、殺して当然。



 <魔王>は敵だ。だから殺すべきだ。そんな思考がどう頑張っても脳裏から離れない。



「...あの<魔王>は、あくまで人間だった。俺たちを助けた。確実に敵であろう俺たちを」

「ソルス...」



 認めるなと心が叫んでくる。だが少し考えればわかること。



 マリアは、<魔王>は、全て人間から生まれている。ネコマタと同じで、最終的に魔獣に近づいてしまっただけで人間であ



「ぐっ!?」

「な、ちょっと!?」



 苦しい。それ以上の思考を俺の肉体が拒んでくる。



 敵...そうだ、<魔王>は敵なんだ。俺達は...俺たちが....



「...理由なく、あいつらは殺していいのだと」



 何もおかしい話ではない。敵なんだから。殺すのは至極当然だ。



 邪魔をするのならそれは全て...全て...



「そんなわけ...ないだろう!!」



 倒れ込んだ床を思い切り叩き、その勢いで起き上がる。



「はあ...はあ...」

「だ、大丈夫?なんかすごく苦しそうだけど...」

「...行くぞ」

「ど、どこへ?」

「決まっている。ヌトさんのところへだ」

「誰?」



 確定ではない、しかし状況が物語っている。



 小癪だが、<魔王>マリアは言った。



「<神話生物>は自分の手にも負えない」

「それって、確かあの<魔王>が...」



 クタさんのことから推察するに、すでにこの世界のどこかには幾つもの<神話生物>が散らばっている。



 それが一体どんな存在であるのかはわからないが、絶対にこれだけは言える。



「どこにいても、<魔王>は奴らを制御できない。勝手に色々なことをやるんだ」

「...<神話生物>。<魔王>マリアですら完全に操ることのできない、魔獣以上の何か...」

「あいつは理解していない、制御できない大きな力の脅威を。俺は少なくともあれを実際に見て、それがいかにこの世界に放ってはいけないものなのかを理解したつもりだ」

「ねえ、本当にそのヌトさん?っていう人は<神話生物>なの?」



 そう尋ねてくるメーノ。当たり前だ、彼女は有名人なのだから。



「前も言ったと思うけど、ヌトっていう人は100年は前からこの地にいるし、その人は<魔道具>制作においては類を見ないほど天才なのよ?危険性はわかってるはず、なら作らないんじゃないの?そもそも脅されているのなら...」

「いや、脅されているわけではないのだろう。違うな、正確には脅しにすらなっていない、の方が正しいか」

「あ、誓約も破棄したところで痛くも痒くもなければ...ってこと?」



 頷く。どうやってと思ったが、どうせ死んでも大丈夫なら破ったところでなんの問題もない。



 意外と答えは簡単なところにあったな。



「まずは集合場所に集まる。そして全員でヌトを叩く」

「...できると思う?」

「できないだろう、だがそれはやってみないとわからない。だろう?」

だいぶ進んできましたね

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