よかった、全く別らしい
進みながらマップを見る。
...カミラが渡してくれたこれが正しいのなら、確かに2つあることになるな。
そこまで遠い位置にあるわけではないのもまた変だし、一体この<ダンジョン>はどんな意図で作られているのかもわからなくなってくる。
「休憩ポイント...というわけでもなさそうですね。近すぎます」
「ねえカミラ、なんでこの<ダンジョン>に安全区域が2つもあるかわかる?」
「わ、私にはさっぱり...あ、でもわかることはありました」
安全区域はその名の通り、魔獣に察知されている状況でない限りは魔獣が入ってこない、まさに安全な区域だ。
基本的に<ダンジョン>の階層ごとに存在するが、たまにない時もある。難易度の高い<ダンジョン>であるほど、ない可能性のほうが高くなる。もちろんあるとしても1つがほとんどだ。
が、実は複数個ある場合がある。それが、<ダンジョン>内部の構造が迷路型になっている場合。
そういう時は<ダンジョン>の攻略時間が伸びるからなのか、安全地帯が複数個設置されることが多い。その個数は<ダンジョン>によって異なるが大体2〜4個であることが多い...
「この<ダンジョン>は普通じゃないです。さっきようやく確認できましたが、どうやら下の3階層には3つの安全区域が、もう一つ下の4階層目には4つの安全区域があるみたいです」
「は、はあ!?てことは探さなきゃなんねえ本棚も」
「ふ、増えますね」
...流石にそれは予想外だな。まさかさらにおかしいことになってるとは。
本来<ダンジョン>に生成される安全区域は1個のはずなのだが...
「今の私たちだと物資が、と、特に薬が足りないです。3階層では間違いなく詰みます。ですからこうして...」
先頭を歩いていたカミラが立ち止まる。
目の前には、大きな階段があった。
「ここに向かっていたんですね」
「まあ流石にね。その判断は賢明、というかそれ以外ないわよね」
「周囲に敵影なしです」
念の為俺も周りを見渡す。
...いないな。あらかた殲滅した結果が出ている。
「よし、今のうちだ」
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まあ、わかっていたことだが。
「ここも全く変わってねえな」
本棚に囲まれた縦長の部屋、その中央にある螺旋階段。
時折ある踊り場から階段を出て壁の本棚にアクセスできるのも変わらない。
「それじゃあ本の確認作業、の前に...」
踊り場の一つに<魔法陣>を描き始めるメーノ。
<一時帰還>という魔法がある。セットした場所に一度だけ戻って来れる魔法で、本来は難しいはずの<空属性>を扱えなければできないのだが...
「ほんと魔法の進歩って早いわよね。<空属性>が苦手な私でもできちゃうようになったんだから」
「明らかに早すぎるけどな」
「まあまあ。進歩すればするほど、私たちの生き残る確率も上がるのですから、いいではないですか」
最近は<魔法陣>であることとそれなりの<魔力>を用意すれば簡単に扱えるようになった。
<時属性>はまだまだ扱いにくいが、対になる<空属性>と<重属性>はかなり扱いやすくなってきた。
俺のような魔法に疎い人間が時間を操れるようになるのも時間の問題だろう。
「...ん、できた!」
ほのかに魔法陣が光を放ち始める。成功したみたいだ。
「どうする?もう帰っちゃう?」
「いや...ここの本だけは調べて行ったほうがいいだろう」
まだ発表の日時までは時間がある。
今のうちに調査を進めたほうがいいだろう。
「うへえ。マータあの退屈な時間を過ごさなきゃなのか」
「慣れればそうでもないですよ。面白い本もたくさんありますし」
「俺は読書が苦手なんだよ」
また本を読みます。流石に<勇者>に強化は...え?なんだって?嘘だろ?
...次回は明日です




