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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第六章 殺人狂気神話
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物は試し

実験は成功...?

 テントから少し離れ、動いても問題ない場所にいる俺とマイゲス。



「んじゃ、まずはデモンストレーションからだな」

「ああ」



 <魔技>を試す、というのは日常的にあることだ。というのも、これにはそもそもの魔法の取得方法が関係している。



 魔法を使う方法は、決められた<魔法母体>を決められた手順で行使する。これだけ。



 そのため筆記されたものや口伝でも行使することができる。もちろん正しい手順を踏んでいることは重要だが。



 そして<魔技>は魔法だ。基本的には人間が編み出すことになるが、たまに新しい<ダンジョン>の宝箱の中に魔法について書かれた<魔法書記(スクロール)>が出てくる時がある。



 それの内容は通常の<詠唱>や<魔法陣>に限らず、今から試す<魔技>や<魔道具>の製作方法が載っている時もある。



 もちろんそれらは見たことのあるものが大半だが、ごく稀に、大体未踏破<ダンジョン>20個踏破につき1つくらいの頻度で真新しいものが出てくる時がある。



 俺たちは本来<魔王>を倒し人々を守るための存在だが、そのためには強くなることが必要。そしてそれを行うために必要なのは、難易度の高い<ダンジョン>を踏破していくこと。



 これまでに行った<ダンジョン>は154、そのうち踏破したのは26で、<魔法書記>は6つだ。本来一生のうちに目にかかれないことがほとんどであることを考えると、これは普通の人よりも持っていることになる。



 そして、これらを手に入れた時まずやることは単純で、試してみることだ。ほとんどの真新しい<魔法書記>、俺たちは手に入れたうちの2つが真新しいものでかなり幸運だったが、それには説明がついていることが普通。しかしたまに、というか俺たちの体に入れた真新しいもののうち1つには、その説明がなかったことがある。



「さっきは遅い縦斬りって言ってたな。なら...これくらいの速度でいいか?」

「それで問題ないと思う。タイミングは俺の合図で頼みたい」

「いいぜ。それとソルスからの攻撃に対する防御手段はどうする?」

「そうだな...メーノに<結界>を使用してもらうか」

「よっしゃ、頼みに行ってくるわ」



 魔法の試用は非常に危険なことが多い。そしてその理由の多くは反動にある。



 反動はとても支払えないものが複数ある。そのうちの一つが命なわけだが、そういった反動というのは、説明があることがほとんどだが説明されない場合は使用するまでわからない。反動は<詠唱>の内容や<魔法陣>の姿形ではわからないからだ。



 だからこそ、試す時は十二分に警戒してから行う必要がある。反動だけでなく、思ったよりも効果が強い時もあるから、特に防御は念入りにすることが重要だ。



「渋々やってくれたぜ」

「よし、なら始めるか」

「おう!」



 マイゲスが構える。防御系の<魔技>の場合殺意が乗っていないと効果を発揮しないものがあるため試しで攻撃する際でも本気で切り掛かる必要がある。



「カウントするぞ。4、3、2、1、今」

「そおい!!」



 遅い、と言ってもマイゲスの短剣での縦振りには普通に速度がある。殺意を込めると尚更早くなる。



 だからあくまでもデモンストレーションの時の速さは目安だ。



「ふっ!」



 それを理解した上で、まずはかなりギリギリで避けなければならない。とりあえず<直前回避>を発動し、普通に避けてみる。



 スッ



 ...回避行動時点では加速されないのか。攻撃を見てから発動している以上、これはかなり扱いの難しい<魔技>だな。



 だが確かに跳ぶように回避できた。発動時点ですでに脚への<瞬間強化>は付与されているらしい。



 さて、ここまでわかったら次は攻撃面だな。<直前回避>によって脚と腕に<瞬間強化>が付与されさらに<限定加速>による速度が上昇しているこの攻撃の威力はいかに。



 と、どうやら回避後の体勢は自動的に一定の形になるみたいで、そこから攻撃しなければいけないらしい。



 ブン!ブン!ブン!ガツッ



 慣れない体勢であるが故に攻撃がほとんど当たらない。だがなんとか1回当たった。



「うおっ!?」

「っあ!?」






 い、痛い。心臓が...まるで潰れるような...!



「ってて、おいソルス手加減くらいは...って大丈夫か!?」



 大丈夫ではない!だがこの状態だと声すら出ない...



 思考が止まっていないのが本当に奇跡だ....反動が来た瞬間、意識が確実に飛んでいた...



「ちょ、ちょっと耐えてろ!すぐメーノ達を呼んでくる!」



 頼む...



 ...くそ、ここまで強い反動だとは、思っていなかった...



 確かにここまで強いのなら、余裕を持って避けていた場合に死ぬことだって、あるだろう...



 これには慣れが、そして幾千もの練習が必要だな...



 ============================================



「バッカじゃないの!!私説明した時に超ギリギリで避けないと強い反動が襲ってくるって言ってたよね!!」

「ああ...本当にすまな」

「もしこれが試しじゃなくて魔獣との戦闘だったら、いくら頑丈なソルスだったとしても、し、死んでいましたよ!」

「まったくです。そんな危険なものを実践で使おうとしていたんですね」



 何も言い返せない。正直反動を舐めていたのは俺だしあんな状態ではタコ殴りにされて死ぬのは必然だろう。



「というかあの状態が長引いていたらあんた死んでいたんだからね!!自覚しなさい!!」

「そうだな...強く実感し」

「しなきゃいけないのよあんたは!!本当に、本当に心臓止まってたんだからね!!」

「は...はい...」



 涙を流しながら怒っているメーノを俺はなだめることはできない。全面的に俺が悪いからだ。



 <勇者>が<魔王>との戦いではなくただの<魔技>の反動で死んだとなれば、大騒ぎどころの話ではない。まず間違いなく、過去未来全てにおいて最弱であり語り継いではいけない<勇者>になるだろう。



「...そういえば、威力のほどはどうだったんですか?回避後に攻撃する<魔技>であることはメーノから聞きましたが」

「確かにそれは気になるな。マイゲス、どうだった?」

「あ、相変わらず切り替えが早いですね...」



 マイゲスもまた俺と一緒にメーノの<治癒>をもらっていたはず。



 テントの中、隣で横たわっているのはそれが理由だろう。



「お、そいつを聞きたいか」

「そのための試用だからな」

「うーし、なら聞いて驚け...4回の剣の攻撃はうち1回しか当たらなかったわけだが...」

「どうなんだ?」

「その1回で俺の体に纏うような<結界>が割れて、しかも俺の骨は粉々になったぜ」

「...俺と同じ、かなりの重症だな」

「ハハっ、ちげえねえ」

「笑い事かこの馬鹿どもが!!」



 ゴン!ゴン!



「ぐあっ!」

「痛った!?」



 杖は非常時のために先端を重くすることがほとんど。そしてそんなもので殴られたら、普通に痛い。



「朝までそこで反省してなさいよ!!」



 テントの入り口が閉まる。真っ暗な中、隣のマイゲスは言った。



「...でもどうせソルスのだし、使えるように練習すんだろ?」

「それはもt」



 パパス!!



 頭の真隣に矢が飛んでくる。それも俺とマイゲスで2本分。



「...寝るか」

「だな」

ぬわーーっっ!!

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